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『憐れみの3章』で3役を演じたジェシー・プレモンスをインタビュー。

  • 2024.9.26

同じ世界の中に境界線がある3役を演じて。

ジェシー・プレモンス|俳優

JESSE PLEMONS/ジェシー・プレモンス
1988年、米国テキサス州生まれ。子役からキャリアを積み、TVドラマ、映画に出演。ドラマ「FARGO/ファーゴ」で夫婦役を演じたキルスティン・ダンストと2022年に結婚。『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(21年)でアカデミー賞助演男優賞ノミネート。

ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ザ・マスター』をはじめ、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたジェーン・カンピオン監督の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』など、数々の傑作映画で名バイプレイヤーとしていぶし銀の輝きを放ってきたジェシー・プレモンス。その若き名優が、今年のカンヌ国際映画祭では"主役"に躍り出た。ギリシャ出身の鬼才ヨルゴス・ランティモスの最新作『憐れみの3章』の印象的な演技によって男優賞を受賞したのだ。

「カンヌのような場所はほかにないね。エキサイティングで、激しくて、ストレスフルで、圧倒されて、素晴らしい。信じられないほど特別な場所だった。一生の宝物になったよ。信じられないほどシュールなんだ。(プレミアの)あの瞬間は一生忘れないよ」

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©Hangzhou Enlightenment Films

『憐れみの3章』は、『哀れなるものたち』でアカデミー賞11部門にノミネートされ、4部門で受賞した直後ということもあって、今年のカンヌで最も注目された作品のひとつ。凝ったセットによる時代劇だった前作とは180度転換した本作は3章仕立ての現代劇で、ロケ撮影されたインディーズテイストの作品。3章それぞれには、同じ俳優が出演するが、演じているキャラクターは違うという野心的な構成が注目された。プレモンスは、上司(ウィレム・デフォー)に食生活から性生活まですべてを把握されている男、海洋遭難から帰還した妻(エマ・ストーン)に違和感を覚える警官、教祖にふさわしい人物を探すカルト集団のメンバーの3役を演じている。

「厄介だけれど、エキサイティングだったのは、それぞれのキャラクターを区別する境界線を見つけることだった。3つの役柄は違うけれど、同じ世界の一部でもあるから。ヨルゴスは、"(同じ俳優が)こんなに変わるんだ!"みたいなこれみよがしな作品にはしたくないと思っていた。なぜならそれだとこのテーマから遠ざかってしまうから。だから、身体性とか、リズムとか、キャラクターとの微妙な違いを表現することに集中したんだ。同じ俳優が演じることで自然な一貫性が生まれるようにしたかったんだ」

鬼才との仕事におおいに触発されたと語るプレモンスだが、激しい性描写も厭わない本作において、今日では常識となっているインティマシーコーディネーターの重要性にも言及した。

「(性的なシーンは)アクションのスタント、あるいはダンスの振り付けみたいなもの。でも、みんなが快適であり、必要な会話がされていることをインティマシーコーディネーターが確認してくれることによって、そのプロセスがずっと簡単になることは間違いないよ」

『憐れみの3章』
完全にコントロールされた世界から自分自身の人生を取り戻そうとする男が主人公の「R.M.F. の死」、失踪後、別人のようになった妻を恐れる男の物語「R.M.F. は飛ぶ」、教祖になる人物を探す女を描く「R.M.F.サンドイッチを食べる」という独立した3章からなるオムニバス映画。脚本にギリシャ時代の朋友エフティミス・フィリップを迎え、シュールで不条理なヨルゴス・ランティモスの世界が炸裂する。●TOHOシネマズ 日比谷ほか全国で9月27日より公開。
https://www.searchlightpictures.jp/

*「フィガロジャポン」2024年11月号より抜粋

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