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ラストの余韻がスゴい洋画、最高傑作は? 映画史に残る結末(5)真昼の惨殺劇…タイトルの伏線回収がお見事

  • 2024.9.26
ポン・ジュノ【Getty Images】

映画作品は大抵、ハッピーエンドとバッドエンドに大別できる。上映後に爽快な気分になるものもあれば、暗い気持ちになるものもある。しかし、中にはどちらとも言えない作品も存在する。今回は、絶望と希望が合わさった不思議な結末を迎える映画を5本をセレクト。観終わった人の心に、大きな余韻をもたらす作品を5本紹介する。第5回。(文・編集部)
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●『パラサイト 半地下の家族』(2019)

製作国:韓国
上映時間:132分
監督:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ、ハン・ジンウォン
出演者:ソン・ガンホ、チェ・ウシク、パク・ソダム、チャン・ヘジン、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、イ・ジョンウン、パク・ミョンフン

●【作品内容】

過去に何度も事業に失敗している夫のキム・ギテク(ソン・ガンホ)、妻のチュンスク(チャン・ヘジン)、才能を持て余す息子のギウ(チェ・ウシク)、美大を目指す娘ギジョン(パク・ソダム)は、今にも崩れてしまいそうな韓国の半地下で、肩を寄せ合いながら暮らしていた。

内職で食いつないでいる貧しい彼らに、ある日、思ってもみない話が舞い込む。有名IT企業の社長パク・ドンイク(イ・ソンギュン)の娘ダへ(チョン・ジソ)の家庭教師をギウが務めるというのだ。パク家との交流を機に、物語は意外な進展を見せていく。

●【注目ポイント】

非英語作品として初の米アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』は、社会性と娯楽性を高いレベルで両立させた、アジアが世界に誇る傑作だ。ポン・ジュノ作品としては、『グエムル -漢江の怪物-』(2006)のスッキリしたラストとも、『殺人の追憶』(2003)の煮え切らない結末とも違う、ほろ苦い後味が特徴の逸品でもある。

IT社長のパク・ドンイクの家庭に、家庭教師、家政婦、お抱えの運転手として寄生することに成功したキム一家。順調に事が運ぶように思われたが、そこにはある秘密が隠されていた。

過去にパク・ドンイクの家政婦として働いていたムングァン(イ・ジョンウン)と地下の核シェルターに住み続けている彼女の夫の存在が秘密の核心である。その夫婦に秘密を知られてしまった家族は、彼らを閉じ込めるが、気が触れた夫はダソン家族のパーティーの日、地上に飛び出して惨殺劇を引き起こす。

その結果、娘のキジョンは亡くなり、どさくさに紛れてパク社長を殺した父のキム・ギテクはどこかに消えてしまう。残されたのは、妻のチュンスクと、事件で脳障害を起こしてしまった息子ギウのみ…。と、思われたが、父はムングァンの夫と同様、核シェルターに身を潜め生きていた。

ギウは大金を稼いで、悲劇の舞台となった大豪邸を買い取り、残された家族を再び呼び集めることを決心する。いつか家族3人で、暮らすことを夢見て…。

タイトルとなった「パラサイト」という言葉の意味が二転三転する展開が素晴らしい。はじめは、大富豪のパク家に「寄生」をはじめる主人公一家を的確に表していると思われるその言葉は、長らく豪邸の地下に身を隠していたムングァンの夫の存在が明るみになるにつれて意味を変え、終盤、無人の豪邸の地下で警察から身を隠す父・ギテクを表す言葉となる。

笑っていいのか、泣いていいのか、判別不可能な感情を呼び起こすクライマックスの惨劇シーン。その熱を冷ますようなラストシーンの雪景色は、生き残ったギウの未来が前途多難であることを予感させつつ、彼の夢を優しく包む、不思議な希望をも同時に感じさせる。

良い映画には味わい深いエンディングが付きものだが、本作のラストも例に漏れず、素晴らしい余韻を残してくれる。未見の方はぜひ鑑賞してみてほしい。

(文・シモ)

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