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メイドが宝石を売る不思議なお店。決して押し売りはせず、お客様の気持ちに寄り添った最適な宝石を提案してくれる宝石商

  • 2024.9.25

メイドが宝石を売る不思議な宝石商「ローシュタイン」でのできごとを描いた『宝石商のメイド』(やませちか/KADOKAWA)。大通りの外れに佇むローシュタインでは、店主こだわりの宝石やジュエリーになる前の裸石(ルース)、鉱物まで取り扱っている。

宝石商と聞くと、とにかく高額な宝石を買わせるというイメージを持つ人もいるだろう。しかし、ローシュタインではそんな押し売りは存在しない。本当なら、経営のために利益を重視しそうなものなのに、あくまでお客様の宝石への想いを優先してくれる。「お客様の気持ちを見抜き、最適な宝石を提案する」という柔らかでさりげない気遣いが何とも心地良い。

ローシュタインのメイド・エリヤは、紅茶を愛する「宝石鑑定士」の少女。店主の留守を預かり、宝石商の接客と販売、仕入れたメレー(色石などを囲う小粒のダイヤモンド)の原石の選別などを担当している。一方、店主のアルフレッド・ローシュタインは、自分の足で世界中を飛び回りながらさまざまな宝石を仕入れていた。

アルフレッドは、資産として宝石を購入することはおすすめできないという。財産になることを期待して購入すると、いつか資産価値が下がったとき、買ったことを後悔してしまうかもしれないからだ。だからこそ、1人の宝石商として「石そのものに惚れ込んだ一品」を選んでもらえるよう、自分自身が価値を感じる宝石を仕入れているのだ。

老紳士や身分の高い貴族、超人気女優など、ローシュタインにはさまざまな立場の人が訪れる。相手がどんな立場でも、エリヤは態度を変えることなく、正しい宝石知識とともにそっとその心に寄り添ってくれる。こうした不思議な魅力に惹かれたお客様は、何度も彼女のもとへ足を運ぶようになるのだ。

何より本作を読んで癒やされるポイントは、物語に登場する宝石が美しいことだ。サファイアやスファレライト、水晶など、石の持つ美しさを感じながら、宝石の知識を学べるのも楽しい。

2巻以降では、エリヤが先生になる話や、鑑定士としての腕前を披露する話などが展開されていく。夜会で活躍したことで女性の宝石鑑定士として有名になったエリヤは、一体どんな日々を過ごすことになるのか――。

宝石商のメイドの日常を通してさまざまな宝石に触れながら、心温まる物語を堪能してもらいたい。

文=ネゴト / 押入れの人

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