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乳がんが転移し、脳腫瘍になってしまった母。最期を看取るため、母の死と向き合った家族の数カ月の記録

  • 2024.9.25

この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

人間にはいつか必ず別れの日がやって来る。だからこそ、後悔しないよう伝えたいことを伝えたり、やりたいことをやっておくのが大切なのだろう。『20代、親を看取る。』(キクチ/KADOKAWA)は、実母との別れについてどこまでもリアルに描いた作品だ。

作者のキクチさんは、パートナーと同棲中の20代後半のデザイナー。70歳手前の父と、60代半ばの母の3人家族だった。キクチさんの母は、キクチさんが中学生のころ乳がんを患ってしまった。胸の一部を切り取る温存手術が無事に終わり、数年後には寛解(病気による症状が無くなった)という診断を受ける。だが、そのがんは脳に転移しており、脳腫瘍になってしまう…。

前向きに治療に向き合うも、その症状は一気に悪化し急に身体が動かなくなってしまった。その結果、入院することになるのだが、医師から家族への説明は疑問点がいっぱいでなかなか納得できないものだった。そうしたモヤモヤを抱え、セカンドオピニオンを探すことに。

本作では、こうした病院や介護のリアルな様子がまざまざと描かれている。セカンドオピニオンを探すための情報収集や、医師との会話。さらには、自宅介護でのおむつ替えや尿道カテーテルから流れてきた尿の処理方法など、実際に経験しないとわからない脳腫瘍患者と向き合う現実を教えてもらえる。

身の回りの人に死が訪れることは避けられない。だからこそ、その時に備えて介護の知識を身につけておくことや、死へ向き合う心の準備が大切なのだろう。実際、キクチさんとお母さんに残されていた時間は、想定よりとても短いものだった。だが、母の死という苦しみから逃げず、真っ直ぐ家族で向き合ったことで、たくさんの思い出を残すことができたのだ。

とことん母の最期に寄り添ったキクチさん家族は、きちんとお別れをすることができた。こうした「死」を描いた作品は重たい気持ちにさせられることが多いのだが、引きずられすぎずに最後まで読めるのもありがたい。

育ててくれた感謝やこれからのことなど、誰もが家族に伝えたい言葉があるだろう。いつか来る別れの日に後悔しないよう、本書を読んで考えてみてもらいたい。

文=ネゴト / 押入れの人

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