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京都の「ブラック・ジャック展」、来場者は平均2時間滞在!?

  • 2024.9.24

第一線で活躍する医療従事者らに影響を与え、多くの人に感銘を与え続ける医療マンガの金字塔『ブラック・ジャック』。連載50周年記念を迎え、『手塚治虫 ブラック・ジャック展』が「美術館えきKYOTO」(京都府京都市)で開催中だ。

入館前にあるブラック・ジャックとピノコのパネル©Tezuka Productions

■ 平均2時間滞在!? 若年層の来場も多く

来場者が立ち止まって、じっくり読み込み熟読する館内の様子 ©Tezuka Productions

なんでも、同展公式Xが呟いた原稿内の「京都タワー・・・のような!?」が京都会場限定で見られるので、注目を集めているという。さらに、作品を観るのではなく、多くの来場者が「平均2時間熟読」するのだそう。一体どういうことなのか? 同展担当の三宅礼夏学芸員に伺った。

同作は「マンガの神様」手塚治虫氏の代表作のひとつ。顔に傷がある無免許の天才外科医ブラック・ジャック(間黒男)と彼が生み出した助手の18歳で0歳の女の子ピノコといった個性あふれるキャラクターが織りなす「人としての生き様」や「医者は何のためにあるのだ」といった医療に対する根本的な問いなど、骨太な内容が1話完結の形で描かれている。読んだことが無くてもブラック・ジャックの存在はご存じの方も多いだろう。

何度も実写化されてはいるが、実際に連載されていた時期が70~80年代の作品であるため、「当初、若い年代の方がどれくらい来てくださるか分からなかった」と三宅学芸員。しかし、いざ蓋を開けてみると、意外と20~30代の若い人、それも女性の来場者が結構多いので驚いたという。

各話のテーマごとに並んだ生原稿の中には、主人公の間黒男がなぜブラック・ジャックになったのかわかるエピソードやなぜ高額な金を要求するのか理由がわかるエピソードも ©Tezuka Productions

全4章構成の展示のなかでも、生原稿を作品の主要テーマごとに展示した第3章は圧巻で、各話のあらすじとともに名台詞や名シーンが描かれた生原稿を真剣に読み込む人が続出している。そのため、どの人も平均2時間くらい会場内にいるのだ。

■ 「手塚は終わった」からの超復活劇

担当編集者が「手塚は終わった。死に水を取ってやろうじゃないか」と連載がスタートしたブラック・ジャック ©Tezuka Productions

また、第2章のブラック・ジャック誕生秘話も興味深い。手塚氏が円熟期の頃の作品なので、人気絶頂で世に出た作品なのかと思いきや、真逆なのだ。当時は、『巨人の星』など劇画調マンガが台頭してきた時代。人気に陰りが出て、手塚氏の『虫プロダクション』は巨額の負債を抱えて倒産してしまう。

当時の担当編集者・岡本三司氏は、展示動画内で「手塚は終わった。死に水を取ってやろうじゃないか、との気持ちで連載をオファーした」と語っている。いつ打ち切られるかわからなかったので、1話完結の形になったのだ。

館内映像が名古屋会場まではブラック・ジャック(間黒男)のエピソードのみだったが、京都会場から、ピノコエピソードも追加され、第4章のなかの「ピノコがいっぱい」で展示されている ©Tezuka Productions

手塚氏は大阪生まれで兵庫県宝塚市育ち、大阪大学附属医学専門部を卒業した医学博士でもある。三宅学芸員は、「自身の一番の強みである“医療”で最後の勝負に出たのだと思います。監修者も不要で週刊で連載できたのは、手塚先生ご本人が医学博士だったからこそ」と説明。これがヒットし、多くのファンによって50年も読み続けられる不朽の名作となったのだから胸が熱くなる。

■ 担当者が偶然発見「京都タワー…のような!?」とは?

『ふたりの黒い医者』のなかの「京都タワー…のような!?」が描かれているシーン ©Tezuka Productions

そして、絶対見逃せないのが第4章のなかで「カミカイ(神回)」の最後に展示された『ふたりの黒い医者』のエピソードの生原稿だ。金しだいで人の命を助けるブラック・ジャックと金しだいで安楽死を遂げさせるドクターキリコ。互いに相反する立場ながらも真摯に命に向き合う2人が対峙するシーンの背景に、公式Xが呟いて注目を集めた「京都タワー・・・のような!?」が描かれているので、これから来場する人はぜひ探してみて欲しい。さらにこのエピソードだけは、なんと京都会場のみ「生原稿」で全話読めるのもうれしい驚きだ。

同展は、巡回先の各会場でそれぞれキャチコピーを決めており、京都会場では「それでも私は 人をなおすんだっ」。これは、『ふたりの黒い医者』の最後に描かれたシーンの名台詞。三宅学芸員は「ブラック・ジャック自身のアイデンティティを象徴している言葉」として、この言葉に決め、生原稿を眺めていた時に偶然「京都タワー・・・のような!?」を発見したそう。

京都のシンボル「京都タワー」は、昭和39年(1964)に建てられたので、『ブラック・ジャック』開始時には既に建っていたのだが、手塚氏自身が京都タワーだと言及していないため、このような表現になった。

9月22日からは、京都駅ビルで「手塚プロ × 京都芸大 DESIGN LAB」による『ブラック・ジャック DESIGN & ARTWORKS 展』も開催されている。『ブラック・ジャック』の世界観からインスパイアされた若い芸大生の作品群が京都駅構内に展示されるので、京都駅はますますブラック・ジャック一色に。

ブラック・ジャックとドクターキリコが対峙する「カミカイ(神回)」で、京都会場のキャッチコピーや公式Xが呟いた「京都タワー…のような!?」が描かれている『ふたりの黒い医者』。京都会場のみ生原稿で全話読むことできる ©Tezuka Productions

三宅学芸員は、「昔のマンガ、マンガの古典と思い込んでいる方もいるかもしれませんが、現代にも通じる普遍的なテーマが描かれており、内容を知らなくてもブラック・ジャックの全容が楽しめる展示です。昔からのファンも読んだ年齢や状況によって好きな場面が変わるので、新鮮な気持ちで楽しめると思います」と呼びかけた。

連載50周年記念『手塚治虫 ブラック・ジャック展』は、「美術館えきKYOTO」にて10月6日までの開催。料金は一般1100円ほか(宝塚市立手塚治虫記念館、京都国際マンガミュージアム各館の入館券をチケット窓口で提示すると、当日入館料を100円引き)、詳しくは公式サイトにて。

取材・文・写真/いずみゆか

連載50周年記念『手塚治虫 ブラック・ジャック展』

会場:美術館えきKYOTO(京都駅ビル内ジェイアール京都伊勢丹7階隣接)
会期:2024年9月1日(日)~10月6日(日)会期中無休
時間:10:00~19:30(入場は閉館の30分前まで)

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