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【上野】東京国立博物館「没後100年・黒田清輝と近代絵画の冒険者たち」

  • 2024.9.25

黒田清輝と近代絵画の冒険者たちの息吹を感じる

東京国立博物館 本館 特別1室・特別2室で開催中の「没後100年・黒田清輝と近代絵画の冒険者たち」[2024年8月20日(火)~2024年10月20日(日)]を見て来ました。

本展は、日本の近代洋画の先駆者・黒田清輝の没後100年を記念し、黒田と師のラファエル・コランの作品とともに近代絵画の冒険者たちの息吹を感じさせる作品の特集展示です。

初めて「美術」という言葉が登場したのは、明治6年(1873)の政府によるウィーン万国博覧会の出品を呼びかけた布告の翻訳語でした。

本館 特別1室・特別2室では、近代日本において、西洋絵画を受入れ「美術」という思想を拠所に洋画の造形表現に挑んだ画家たちの名品に出会うひと時を過ごせました。

※館内は一部撮影禁止の作品があります。撮影は個人利用に限り可能です。撮影時は館内の注意事項をご確認ください。

近代洋画の父・黒田清輝(くろだせいき)

黒田清輝は、薩摩藩士・黒田清兼の子として生まれ、伯父の子爵・黒田清綱の養子となります。 明治17年(1884)に法律の勉強でフランスへ留学した黒田は、パリで画家のラファエル・コランに師事し、「外光派」と呼ばれる作風を学びます。

明治26年(1893)にフランス留学から帰国した黒田は、明治29年(1896)、画友の久米桂一郎らと「白馬会」を結成、同年、東京美術学校西洋画科の教員となり、後に教授に就任。 晩年は、貴族院議員や帝国美術院長を歴任し、美術行政家として活躍。 日本洋画壇を代表する多くの洋画家を育てた黒田清輝は、近代洋画の父ともされています。

本館 特別室1 黒田清輝、吉田博(よしだひろし)、中沢弘光(なかざわひろみつ)

19世紀末から20世紀初め西洋絵画では、人間の裸体画は美術の基礎であり、何かの考え、寓意、抽象的な観念を表す、というのが重要なテーマだったようです。 黒田清輝が師のラファエル・コランの下で学び持ち帰った西洋絵画の中で、裸体画は日本では展示と規制のせめぎ合いとなります。

現代では、展示空間でこれらの作品を見ることが出来ますが、最近では、当時は男性中心の美術界で、男性の画家と女性モデルの役割が固定されていたと批判的に捉え直されることも。社会の多様性が言われ「美術」全体の考え方も時代とともに変化していくようです。

重要文化財《智・感・情》の表すもの

黒田記念館の特別室で展示されて来た重要文化財《智・感・情》が、本館 特別1室で10月20日まで展示されています。 本作が、明治30年(1897)に第2回白馬会展に出品された当時は、大きな反響を呼んだそうです。

額に添えた指先。静かな眼差し。左足に重心を置く西洋の彫刻のような均整の取れたポーズの重文《智・感・情のうち智》。 両手を顔の両側に開き、左右対称のポーズで真直ぐに前を見つめる開放的な重文《智・感・情のうち感》。 長い髪に手をやりうつむく重文《智・感・情のうち情》は揺れ動く心のまま立ち尽くす姿。

当時の日本の観衆に対して、日本人の身体のリアルさと理想的な姿をあわせた中に、目に見えない観念を表そうとした重要な作品とされています。

同作は、明治33年(1900)パリ万博に「Etude de Femme(女性習作)」という題で出品。日本人の日本人による裸体画表現としての意味もあったようです。

 

出典:リビング東京Web

奥、重要文化財《智・感・情》 黒田清輝筆 明治32年(1899)、手前、黒田清輝写生帖他、展示風景 すべて東京国立博物館蔵

中沢弘光筆《霧(裸婦)》、吉田博筆《精華》

山奥の渓流の岩の上に薄衣をまとい両腕を広げて立つ女性を描いた《霧(裸婦)》。渓谷に漂う霧をイメージしたのでしょうか。 人間の素の状態の身体で、観念的な表現を試みるというのは、能の演目により様々な表情を見せる能面のようでもあります。 霧の化身のような幽玄な雰囲気の絵画です。

左手に白い百合の花を持ち、右手の白い人差し指を2頭の雄ライオンと1頭の雌ライオンに向ける女性。 威厳を感じさせる眼差しは、猛獣の本能を押さえコントロールする意志と、知性と理性を含んだ美の象徴のようにも見えます。

或いは、巨大な暴れ像の心に呼びかけ指先1つで大人しく回心させたお釈迦様の姿がイメージされる絵です。

吉田博は、黒田清輝の白馬会とは別に「太平洋画会」を立ち上げています。吉田も中山も黒田と同じく同時代の規制に挑んだ冒険者でした。

 

出典:リビング東京Web

左、《霧(裸婦)》 中沢弘光筆 明治40年(1907) 日本倶楽部寄贈、右、《精華》 吉田博筆 明治42年(1909) 吉田ふじを氏寄贈 どちらも東京国立博物館蔵

本館 特別2室 海外へ、その先へ画家たちの冒険は続く

特別2室では、西洋絵画の技術を海外へ渡り学んだ画家たちの作品も見ることが出来ました。

ラグーザ玉筆《エロスとサイケ》

ラグーザ玉筆のギリシャ神話を題材にした《エロスとサイケ》(左)。 ラグーザ玉は、工部美術学校の教師として来日したヴィンチェンツォ・ラグーザと結婚し洗礼を受けて、彼の没後日本に帰国するまでイタリアで画家として、美術教育者として活動しました。

右は、右下に白いチマチョゴリの女性が2人描かれた高木背水(たかぎはいすい)筆の《風景》。高木背水は、大正4年(1915)、日本統治下の朝鮮半島に渡り、朝鮮美術展覧会の設立に尽力したそうです。 中央はおとぎの国のような《コロポックルの村》(織田東禹(おだとうう)筆)。 「コロボックル」を日本の石器時代の先住民として考古学的知識を深めて描いた絵画だそうです。

 

出典:リビング東京Web

左、《エロスとサイケ》 ラグーザ玉筆 明治~大正時代・20世紀、右、《風景》 高木背水筆 大正時代・20世紀 日本倶楽部寄贈、中央、《コロポックルの村》 織田東禹筆 明治40年(1907) すべて東京国立博物館蔵

イタリア古典の名画を模写《二女図(模本)》と《群神(模本)》

イタリアの古典的名画を模写した《二女図(模本)》(和田英作筆)と《群神(模本)》(岡田三郎助筆)。

和田英作の《二女図(模本)》の原本は、サンドロ・ボッティチェリ筆の《ヴィーナスと三美神より贈り物を受ける若い女性(レンミ荘壁画)》です。 岡田三郎助の《群神(模本)》は、フラ・アンジェリコ筆の《聖母戴冠》部分が原本です。

和田と岡田が、官費留学生としてフランスへ渡り描いた作品です。どちらも色彩が美しく原本の作風をよく感じさせます。

両作は、完成後、黒田清輝を通じて東京帝国博物館に買い上げられています。

 

出典:リビング東京Web

左、《二女図(模本)》 和田英作筆 明治34年(1901)、原本:1475-1500年、右、《群神(模本)》 岡田三郎助筆 明治34年(1901)、原本:1425-1450年 どちらも東京国立博物館蔵

黒田清輝から繋がる近代絵画の冒険者たちの美への情熱

大正の初めころ黒田は、農業に従事する人々や風景をよく描いています。 そこにはフランス留学中のバルビゾン派の作品に親しんだ経験など、田園を理想化する眼差しが込められている可能性が言われているそうです。

 

出典:リビング東京Web

黒田清輝筆 右から《栗拾い》 大正6年(1917)、《其日のはて》下絵一 大正3年(1914)、《其日のはて》下絵二 大正3年(1914) すべて東京国立博物館蔵

近代絵画の冒険者たちの作品を味わう

明治期の近代日本で、西洋絵画に挑み、規制を乗り越え、美への情熱を確かな画力にまで高めた近代絵画の冒険者たちの作品をじっくり味わえる特集展示です。

黒田亡き後、その遺志を継いだ美術史学者・矢代幸雄により、昭和5年、美術の研究拠点として美術研究所が作られます。 現在は、東京文化財研究所として、文化財全般の調査・保存・修復と、文化遺産に関する国際協力を進めています。

東京国立博物館 本館 特別1室・特別2室の「没後100年・黒田清輝と近代絵画の冒険者たち」は10月20日(日)まで。 是非お出かけください。

 

出典:リビング東京Web

東京国立博物館 本館 特別2室「没後100年・黒田清輝と近代絵画の冒険者たち」展示風景

東京国立博物館 本館ミュージアムショップ

東京国立博物館 本館ミュージアムショップでは、観覧の記念になるお土産が並びます。 今回は、山本海苔 海苔チップス2缶セット 風神雷神図(うめ味)・夏秋草図(かつお味)(1‚728円)を購入。 海苔チップスはパリッとして香ばしい風味でおつまみにもおやつにも丁度いい味です。

 

出典:リビング東京Web

東京国立博物館 本館ミュージアムショップ

出典:リビング東京Web

東京国立博物館 本館ミュージアムショップ

〇東京国立博物館
URL:https://www.tnm.jp/
住 所:〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
アクセス:JR 上野駅公園口・鶯谷駅南口から徒歩10分、東京メトロ上野駅・根津駅、京成電鉄京成上野駅から徒歩15分
お問合せ:050-5541-8600 (ハローダイヤル)
開館時間:9時30分~17時 ※毎週金・土曜日は夜20時まで ※入館は閉館の30分前まで
※2024年9月27日(金)、9月28日(土)の夜間開館は19時00分まで(入館は18時30分まで)。
※黒田記念館は、通年で9時30分~17時00分(入館は16時30分まで)
休 館 日:月曜日(祝・休日の場合は翌平日休館)
観 覧 料(総合文化展):一般 1,000 円/大学生 500 円 ※特別展は別料金になります。黒田記念館は無料です。
※総合文化展は、事前予約不要です。入館方法の詳細は東京国立博物館ウェブサイトをご確認ください。
※高校生以下、および満18歳未満と満70 歳以上の方は総合文化展は無料。入館の際に年齢のわかるものをご提示ください。
※障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。
※開館日・開館時間・展示作品・展示期間等、今後の諸事情により変更する場合があります。最新情報は、東京国立博物館ウェブサイト等でご確認ください。

〇没後100年・黒田清輝と近代絵画の冒険者たち
会期:2024年8月20日(火)~2024年10月20日(日)
会場:東京国立博物館 本館 特別1室・特別2室
※開館日、休館日は総合文化展に準ずる
観覧料:総合文化展の観覧料でご覧いただけます。

〇ミュージアムショップ
営業時間:博物館の開館時間に準ずる
TEL:03-3822-0088

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