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にしおかすみこさん「ダウン症の姉が大好き」。でも、母はいつも「すみこの人生を生きなさい」と言ってくれた

  • 2024.9.23

芸人のにしおかすみこさんが、認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父と同居し、超・個性的な3人に翻弄される日々を描いた『ポンコツ一家 2年目』。「自分ファースト」の介護の根っこにある母からの愛情、障害のある姉への想い、この先の人生計画など語っていただきました。

介護2年目は図々しさがパワーアップ

――45歳からご家族との再同居を始めたにしおかさん。今作はタイトル通り、同居生活2年目の日々が綴られています。1年目と比べてどんな変化がありましたか。

にしおかすみこさん(以下、にしおか): 母の認知症の症状が少し進み、家族3人それぞれ年を取ってきてはいますが、それぞれ個性がさらにパワーアップしています。それに対して、私の図太さやふてぶてしさもパワーアップ。症状が進行していく様子に落ち込むこともありますが、経験値もあがっているので、いろんなトラブルに多少は落ち着いて対応できるようになりました。

朝日新聞telling,(テリング)

――この本では、お姉さんの個性もさらに爆発。にしおかさんが葉に除草剤を塗る様子を「せかいじゅうの葉っぱがみどりいろなのは、すみちゃんがやっていること?」と尋ねるなど、愛らしいエピソードがいっぱいですが、お姉さんはどんな存在ですか。

にしおか: 家族の中で一番優しいです。私がへこんでいるなって気づいたら、ササッと来て歌ってくれます。「蛍の光」とか「せんろはつづくよどこまでも」とか、選曲が微妙なうえに、必ず2番、3番まで歌うので、途中から「ちょっと、もういいよ」ってなりますけど(笑)。

――障害のあるきょうだいがいることで葛藤や寂しさを感じたことはありますか。

にしおか: それがないんですよね。(障害児のきょうだいを指す)「きょうだい児」という言葉も、『ポンコツ一家』を書いてから知りました。それは、ひとえに母が小さい頃から私と姉両方に愛を注いでくれたからだと思います。私が姉の世話をしたという記憶もとくにないし、「すみこはすみこの人生を生きられるように」って母はいつも気を配ってくれました。

ただ、ここからですよね。姉を本当に理解しているのは母だけなんです。だから母が先に逝ってしまったときに、私は母の代わりができないし、姉のことは大切だけど、私の人生も大事なのでどこかで折り合いをつけないといけない。まだその答えは出ていません。

朝日新聞telling,(テリング)

母は今も、娘を守る強い母

――お母さんはどんな存在ですか。

にしおか: 認知症っていうのはありますけれど、今のところずっと「母」でいてくれていると感じます。私はもうすぐ50歳になりますが、それでもやっぱりまだ私の人生を思ってくれているんだなということは伝わります。

同居した当時は、母自身が認知症であることをどこまで把握していたかはわかりませんが、きっと立ち行かなくなっている不安とか、恐怖があったと思います。「頭かち割って死んでやる!」って言ってたんですよ。でも最近は言わなくなって。私が帰ってきたことで迷惑をかけないようにと思うんですかねえ? 懸命に生きようとしてくれている気がします。その背中に母の強さを感じています。

自分自身、どんな病気になるか、どんなふうに老いていくのかはわかりませんが、その時にこの背中を思い出せたらいいな。

――一方、お父さんとは深刻なケンカも経験しましたね。思い余ってひとり旅に出たものの、最後には家に帰ることに決めて……。にしおかさんにとって、家族とはなんですか。

にしおか: それがいまだに答えが出ないんです。この人たちの面倒を最後まで見るとも決めていませんし。家族だから絶対しなきゃいけないことなんて一つもないんだ、と思いながらやっています。

朝日新聞telling,(テリング)

障害児とその親の老後問題

――これまで介護サービスに頼らず、一人でお世話してきたにしおかさん。周りから、介護ヘルパーや施設の利用を勧められていると思うのですが、どう考えていますか。

にしおか: 介護が始まったとき、地域包括支援センターの方がうちの様子を見に来てくださったんです。でもそこで母が荒れてしまって。もし今後、要介護認定を受けるとすると、調査員の方が母に色々質問すると思うんですよね。それに答えられないで傷つく母を想像すると、今のところ差し迫って利用したいサービスもないので、私も押し通せなくて決断を先送りしてしまったんです。

もうひとつ大きいのが姉の問題。母をデイサービスへというアドバイスもよくいただきますが、その間姉が一人になってしまうんです。一心同体で、最期まで一緒にいたい二人だから、そこをバラバラにして、とくに家にいたいわけでもない私が家にいるというのは、それはいったい誰のための幸せなのかと思ってしまいます。

調べたところによると、障害者とお年寄りが一緒に暮らせる施設もあるにはあるらしいのですが、部屋は分かれてしまうそうなんです。とはいえ、今後は使える介護サービスは使わせていただこうと思っています。介護ヘルパーの方にうちに来ていただくなど、二人の様子を見ながら利用していきたいです。

家族の前にまず自分の幸せを

――ご自身の今後はどう考えていらっしゃいますか。孫をほしがるお母さんに「孤独死の何がダメ?」と言い返すエピソードが痛快でした。

にしおか: ムラはありますが、もともと恋愛にあまり興味がなく、結婚願望もそんなにないんです。ただ、一緒に遊びに行けるような男友達がいたらいいな、とは思います。女友達とは違った楽しさがありそうですよね。「絶対一人でいたい」とか「絶対結婚しない」と思っているわけでもないので、流れに身を任せています。

『ポンコツ一家』を出してから、より一層、書く仕事が好きなんだなと実感しています。この分野をどんどん広げていきたいですし、自分の働いたお金で自分の好きな友達といっぱい遊びにいけたら最高。好きなことをどんどんできる人生にしたいと思っています。

朝日新聞telling,(テリング)

――家族を介護されているみなさんへメッセージを。

にしおか: 私は今、同居という形をとっていますが、特に正解とも不正解とも思ってないです。介護の状況も家族の性格もさまざまです。その中でできる限りの幸せを模索するわけですから、それがどういう選択でもいいと思います。もちろん施設にお願いするのも、遠くから見守るのも。ただ、言えることは家族がどんなに大切な存在でも、やっぱり自分の人生を大事にしてこそだと思います。なので全部捨てて逃げるも、私はありだと思います。どうかご自分の幸せを第一に。

■清繭子のプロフィール
エッセイスト/ライター/エディター。エッセイ集『夢みるかかとにご飯つぶ』(幻冬舎)2024年7月発売。出版社で雑誌・まんが・絵本の編集に携わったのち、39歳で一念発起。小説家を目指してフリーランスに。Web媒体「好書好日」にて「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」を連載。特技は「これ、あなただけに言うね」という話を聞くこと。note「小説家になりたい人(自笑)日記」更新中。

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