1. トップ
  2. おでかけ
  3. 【南青山】根津美術館 企画展「夏と秋の美学 -鈴木其一と伊年印の優品とともに-」

【南青山】根津美術館 企画展「夏と秋の美学 -鈴木其一と伊年印の優品とともに-」

  • 2024.9.22

重要文化財《夏秋渓流図屛風》とともに惜しむ夏、迎える秋

根津美術館で開催中の企画展「夏と秋の美学 -鈴木其一と伊年印の優品とともに-」[2024年9月14日(土)~10月20日(日)]を見て来ました。

日本では古来、四季のうち春と秋が好まれて来ました。『古今和歌集』にも春と秋の歌が多く詠われており、夏と冬の歌より多いそうです。 絵画でも伝統的に春の桜と秋の紅葉を取り合わせた図が描かれて来ました。

江戸時代になると、春と秋の他に、旺盛な夏から枯れゆく秋へ、移り変わる季節の風情を感じさせる作品が増えて行きます。

本展は、江戸琳派の異才・鈴木其一の重要文化財《夏秋渓流図屏風》と琳派の祖・俵屋宗達工房の「伊年」印の優品名品を中心に、夏と秋の組合せに見る江戸時代の人々の感性と美意識に出会う企画展です。

※特別な許可を得て撮影しています。館内は撮影禁止です。

夏と秋と、移ろう季節の美

夏の盛り《夏草図屏風(なつくさずびょうぶ)》、くつろぐ夏《納涼図(のうりょうず)》

2曲1双屏風に描かれた尾形光琳(おがたこうりん)筆《夏草図屏風》(左)。金地に、晩春から夏にかけての草花約30種類が、対角線上に描かれています。

画面中央には紅白の立葵(たちあおい)。右上はフキでしょうか、端がトリミングされていて、画面の外まで草花のつながりを感じさせます。 濃厚な色遣いの花色や葉の緑は金地に映え、右へ昇るような対角線の構図が夏の生命力を感じさせます。

右は、冷泉為恭(れいぜいためたか)筆《納涼図》。

寝殿造り(しんでんづくり)の屋敷の一角で庭の池に望む釣殿(つりどの)で釣りをしてくつろぐ公家の親子の姿。

『源氏物語』「常夏(とこなつ)」の巻に、「光源氏(ひかるげんじ)が釣殿で友人たちと夏の食事をするシーン」があるそうです。 本作では、夏の一日、親子で過ごす団欒の様子に描かれています。

出典:リビング東京Web

左、夏草図屏風 尾形光琳筆 2曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 18世紀、納涼図 冷泉為恭筆 1幅 紙本墨画金彩 日本・江戸時代 19世紀 植村和堂氏寄贈 どちらも根津美術館蔵

夏から秋へ、重要文化財《夏秋渓流図屏風(なつあきけいりゅうずびょうぶ)》、《夏秋草図屏風(なつあきくさずびょうぶ)》

伊年印《夏秋草図屏風》(右)。

夏から秋にかけての草花が韻律を踏むようにゆるやかに右隻から左隻へ自然な風情で描かれています。

緑と墨の濃淡で表された滲みのある葉の根本には、淡墨の霞がかかり、所々見える赤や白の花も葉の中に溶け込むよう。 夏から秋へ過ぎて行く静かな季節の流れを感じさせる風景です。

俵屋工房を継いだ宗達派三代目・喜多川相説(きたがわそうせつ)周辺の作とみられているそうです。

重要文化財《夏秋渓流図屏風》(左)。

江戸琳派の祖・酒井抱一(さかいほういつ)の高弟・鈴木其一(すずききいつ)筆による6曲1双の屏風図です。

金地を背景に、青に金泥の筋が流れる渓流と、緑の土破のコントラストが印象的な画面。 上部をトリミングされた檜の林の中で、右隻は、白い山百合と熊笹が存在感を見せ、左隻は、秋の紅葉に葉を落とす桜の枝が伸びています。

本展が始まる前に、夕暮れ時の高層ビル街で、檜を背景に、笹の葉が茂る遊歩道に白百合が咲く風景に出会い既視感を感じました。

其一の作品をイメージした遊歩道ではありませんが、金地のように輝く夕暮れの空と、遊歩道の傍にかつての水運の川があり、偶然現れた其一の作品世界を垣間見たようでした。 本作も其一が作り出した独自の世界観なのかもしれません。

出典:リビング東京Web

右、夏秋草図屏風 伊年印 6曲1双 紙本着色 日本・江戸時代 17世紀、左、重要文化財 夏秋渓流図屏風 鈴木其一筆 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 19世紀 どちらも根津美術館蔵

出典:リビング東京Web

重要文化財 夏秋渓流図屏風 鈴木其一筆 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵

《花鳥図襖(かちょうずふすま)》、《舟遊・紅葉狩図(ふなあそび・もみじがりず)》

京町屋の室内の襖絵だったとされる松村景文(まつむらけいぶん)筆の《花鳥図襖》(中央)。夏から秋の花木が金砂子の霞とともに品の良い趣で描かれています。

左は、住吉広定(すみよしひろさだ)筆の⦅舟遊・紅葉狩図⦆。「夏と秋の王朝風俗に取材した対幅」だそうです。夏は公家の女性たちの舟遊び。水の青が涼しそう。男性貴族たちの紅葉狩りは、青い表装に秋の紅葉の色が映えます。

出典:リビング東京Web

右、重要文化財 夏秋渓流図屏風 鈴木其一筆 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 19世紀、中央、花鳥図襖 松村景文筆 13面のうち4面 紙本着色 日本・江戸時代 文化10年(1813)、左、舟遊・紅葉狩図 住吉広定筆 2幅 絹本着色 日本・明治時代 19世紀 すべて根津美術館蔵

秋来ぬと…

涼しき秋の夕暮れ《初秋の夕(しょしゅうのゆうべ)》、《砧打ち美人図(きぬたうちびじんず)》

上村松園(うえむらしょうえん)筆の《初秋の夕》(右)。

日の入りが早くなる秋の夕暮時、吊行灯を手にする女性を描いています。 女性の着物には桔梗がデザインされていて、さらに表具の裂にも秋草と瓢箪が刺繍されています。

左は、窪俊満(くぼしゅんまん)筆の《砧打ち美人図》。

古来和歌に詠まれた「六玉川(むたまがわ)」のひとつ「摂津(せっつ)の玉川に取材した作品」だそう。 「松風の音だに秋はさびしきに 衣打つなり玉川の里」(源俊頼(みなもとのとしより))の歌がもとにあるそうです。

出典:リビング東京Web

右から、初秋の夕 上村松園筆 1幅 絹本着色 日本・大正~昭和時代 20世紀、砧打ち美人図 窪俊満筆 1幅 絹本着色 日本・江戸時代 18 ~ 19世紀 どちらも根津美術館蔵

登る月影、沈む夕陽 武蔵野の秋の叢(くさむら)

《武蔵野図屏風(むさしのずびょうぶ)》(奥)。

武蔵国は「武蔵野は月の入るべき山もなし 草より出でて草にこそ入れ」の和歌が詠まれた名所、歌枕(うたまくら)でした。 近世に入り、武蔵野を詠んだ和歌を思わせる「武蔵野図屛風」が成立したとされています。

《武蔵野図屏風》(展示作品No.28)は、左隻には銀色の月、右隻には赤い太陽が描かれ、緑の草むらに青い水辺が描かれています。 「おおらかな画風で、中世大和絵屏風の伝統を受け継ぐもの」と思われているそうです。

野々村仁清(ののむらにんせい)作の重要美術品《色絵武蔵野図茶碗》(手前)。

武蔵野のススキの描線と、金継ぎ跡が、秋の風景に自然に溶け込んでいるようです。

出典:リビング東京Web

奥、武蔵野図屏風 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 17世紀、手前、重要美術品 色絵武蔵野図茶碗 野々村仁清作 1口 日本・江戸時代 17世紀 どちらも根津美術館蔵

同時開催 清々しい彩り、やきものの「白(しろ)」

白釉、白磁、粉引、志野、染付…やきものにも材質や技法により様々な風合いの「白」があることが分かります。 展示された作品が制作された国は、中国の北斉から唐~清の時代、朝鮮半島、日本、オランダと時代も地域も幅広い範囲に及んでいました。

会場入口には白磁に龍をかたどった耳が大きい《白磁龍耳瓶》が3点。それぞれ「白」の色合いが異なります。 中国は河南省で、7世紀後半から8世紀の唐時代の遺跡から多く出土する瓶だそうですが、用途はわかっていないそうです。

様々な「白」の彩りを見せてくれるやきものの展示です。

出典:リビング東京Web

手前、白磁龍耳瓶 中国・唐時代 7~ 8世紀、白磁龍耳瓶 中国・唐時代 7~ 8世紀、白磁龍耳瓶 中国・唐時代 7~ 8世紀 藤崎隆三氏寄贈 すべて根津美術館蔵

名残の茶

前年から一年間楽しんだ茶葉や、初夏から使い親しんだ風炉は10月で使い納めになるそうです。

《黒樂茶碗 銘 破衣(くろらくちゃわん めい やぶれごろも)》(京都 伝 樂道入作)や《菊花図扇面(きっかずせんめん)》(伝 俵屋宗達筆)など名残を惜しむ時期にふさわしい詫びた茶道具約20件の取り合わせです。

出典:リビング東京Web

黒樂茶碗 銘 破衣 京都 伝 樂道入作 1口 日本・江戸時代 17世紀、菊花図扇面 伝 俵屋宗達筆 1幅 紙本金銀泥絵 日本・江戸時代 17世紀 小林中氏寄贈他、季節の茶道具取り合わせ すべて根津美術館蔵

夏から秋へ、目には見えぬ風に季節の移ろいを感じる

風の音にも秋の気配が感じられる時期、庭園の散策に気持ちのよい季節はもうすぐです。 企画展「夏と秋の美学 -鈴木其一と伊年印の優品とともに-」は10月20日(日)まで。

夏から秋へと移り変わる季節の情趣を、美意識まで高めて楽しんだ江戸時代の人々の感性を感じさせる企画展です。 是非お出かけください。

☆「三館合同キャンペーン 秋の三館美をめぐる2024」
根津美術館、三井記念美術館、五島美術館では、この秋も三館合同キャンペーンを開催しています。
キャンペーン期間中の展覧会どれか1つの観覧済み観賞券で、他の2館の入館料が割引になります。
※詳しくは、各美術館のホームページをご覧ください。

出典:リビング東京Web

根津美術館

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、オリジナル香 千代見草(1‚400円)、双羊尊ガーゼハンカチ緑(900円)を購入。 中国の青銅器、双羊尊のガーゼハンカチは汗拭きにちょうどよい優しい肌触りです。

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ 根津美術館

〇根津美術館 NEZU MUSEUM
URL:https://www.nezu-muse.or.jp/ 
住所:〒107-0062 東京都港区南青山6-5-1
TEL:03-3400-2536
開館時間:午前10時~午後5時(入館はいずれも閉館30分前まで)
休館日:毎週月曜日※ ただし、9月23 日(月・振替休)、10月14日(月・祝)は開館、翌火曜日休館
展示室 / ミュージアムショップ /庭園 / NEZUCAFÉ

〇交通:地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線〈表参道〉駅下車 A5出口(階段)より徒歩8分、B4出口(階段とエレベータ)より徒歩10分、B3出口(エレベータまたはエスカレータ)より徒歩10分
都バス渋88 渋谷~新橋駅前行〈南青山6丁目〉駅下車 徒歩5分
駐車場:9台(うち身障者優先駐車場1台)

〇企画展「夏と秋の美学 -鈴木其一と伊年印の優品とともに-」
会期:2024年9月14日(土)~10月20日(日)
※日時指定予約制です。
入場料:オンライン日時指定予約 一般1300円(1100 円)、学生1000円(800 円)
( )内は障害者手帳提示者及び同伴者1名の料金。中学生以下は無料。
・当日券(一般 1400円、学生 1100円)も販売しています。
(ご案内は予約の方を優先していますので、当日券の方は少々お待ちいただくことがあります。混雑状況によっては当日券を販売しないことがあります。)
・2024年9月10日(火)より根津美術館ホームページにて予約受付開始。
・1グループ 10名まで予約可能。

元記事で読む
の記事をもっとみる