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やっと見つけた…! “好き”を分かち合う喜び、ふたりの女子高生の音楽で彩られた青春を描く『気になってる人が男じゃなかった』

  • 2024.9.21

“好き”なことに没頭できる最高な時間。独りでも、“好き”に浸れる時間は楽しい。けれどやっぱり、“好き”を誰かと分かち合うと、想像よりずっと楽しくて、嬉しくて、幸せな時間が待っている。

X(旧Twitter)上での投稿を機にじわじわと人気を拡大し、さまざまなマンガ賞受賞に至るなど、話題も冷めやらぬ『気になってる人が男じゃなかった』(新井すみこ/KADOKAWA)。

本作は実在する音楽をきっかけに性格もまるで異なり、クラスにおける立ち位置もまったく違うふたりの女子高生がその仲を深めていくストーリーとなる。

事の発端は、主人公のひとり・あやがたまたま立ち寄った小さなCDショップの店員さんに一目惚れをしたことから始まる。実はその“おにーさん”は中性的な出で立ちをした、隣の席のクラスメイト・みつきだった。当初こそ彼女を男性と認識していたあやだったが、誤解を解いて以降ふたりは音楽をきっかけに繋がった良き親友に。

少しずつ音楽の“表現者側”への道を歩もうとするみつきを、あやは嬉しくもどこか複雑な気持ちで応援していく、そんな物語だ。

本作への熱い支持の理由のひとつが、物語のキーともなる実在のバンドや音楽だ。作中に登場する楽曲は、音楽好きの間では世界的な人気を誇る往年の名ロックバンドが多数。ふたりが音楽で繋がったように、このマンガとそれらの音楽をきっかけに繋がった読者も多いに違いない。

重ねて該当の音楽を好きかどうかを問わず、彼女らへの共感と応援もまた、本作が話題を呼ぶ理由のひとつだろう。「推し活」という言葉の大衆化で、胸を張って自分の“好き”を公言できる人は確かに昔より増えた。だがそれも実態としては、比較的同世代に馴染みのあるジャンル・コンテンツに限る部分もある。

数こそ減ったが、それでも自分の“好き”を公言した時、「なにそれ、全然知らない」「ごめん、ちょっと私はわかんないや」という柔らかな断絶や拒絶に晒され、心に傷や諦めを抱える人は確かにいつの時代も存在する。

今まさに、なかなか“好き”を分かち合えない人。

過去に“好き”を分かち合えなかった人。

それでも数少ない、“好き”を分かち合える人に出会った喜び。そんな誰かと過ごせる嬉しさ、楽しさ。

一方で、“好き”に全力だからこその苦しみ。そして悩み。

何かを“好き”になったことのある人に共通する、たくさんの感情が本作には詰まっている。

だからこそ大勢の読者が、“好き”にまっすぐな気持ちで日々を過ごすふたりに共感を寄せ、そして彼女たちの関係性をこれからもずっと応援したくなるのだろう。

学生の時期特有の刹那さ、そして将来への葛藤。その中で、これからふたりの環境はどう変わっていくのか。物語は今まさに、まだまだ見逃せない展開が続いている。

文=ネゴト / 曽我美なつめ

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