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<試写室>大泉洋主演×宮藤官九郎脚本「終りに見た街」改めてこの時代に見たい作品

  • 2024.9.21
「終りに見た街」より (C)テレビ朝日
「終りに見た街」より (C)テレビ朝日

【写真】昭和19年の街の様子を伺う大泉洋“太一”

大泉洋が主演を務めるテレビ朝日開局65周年記念 ドラマプレミアム「終りに見た街」(夜9:00-、テレビ朝日系)が9月21日(土)に放送される。同作は、山田太一の同名小説を原作に約20年ぶり3度目のドラマ化となる。テレビ朝日ドラマ初主演を務める大泉が、宮藤官九郎脚本作品に初めて出演する。

WEBザテレビジョンでは、同作を事前に視聴。オリジナルレビューで番組の魅力を紹介する。

「終りに見た街」あらすじ

テレビ脚本家・田宮太一(大泉洋)は、代表作はないながらも細々と続けて20年。家庭では家族に疎まれつつも、しっかり者の妻・ひかり(吉田羊)、思春期真っただ中の娘・信子(當真あみ)、反抗期が始まった息子・稔(今泉雄土哉)、そして認知症が出始めた母・清子(三田佳子)と共に、ごくありふれた平穏な日常を暮らしていた。

そんなある日、太一はプロデューサーの寺本(勝地涼)から「終戦80周年記念スペシャルドラマ」の脚本を無茶ぶりされ、断り切れずに渋々引き受けることに。戦争当時を知らない太一は、寺本から送られてきた膨大な資料を片っ端から読みふける。

いつの間にか寝落ちしてしまった太一は明け方、衝撃音で目を覚ます。すると、自宅の外には森が一面に広がり、見たことのない光景が広がっていた。何が起きているのか理解できず混乱する太一は、外に確かめに行ったところ、そこが太平洋戦争真っただ中の昭和19年6月の世界であることを確信。太一たち家族はタイムスリップしていたのだ。

この受け入れがたい事実に太一一家が騒然としていると、太一の亡き父の戦友の甥・小島敏夫(堤真一)から電話がかかってくる。敏夫もまた、息子の新也(奥智哉)と出かけていたところ、昭和19年にタイムスリップしてしまったという。敏夫父子と合流した太一はやや安堵したのも束の間、すぐに戦時下の厳しい現実に直面していくことに。

兵士に度々怪しまれる太一たちは、誤魔化しながら何とかその場を凌ぐが、戦争に突き進む日本で生き延びるためには昭和19年の生活に順応せざるを得ない。敏夫は持ち前の人当たりの良さですぐに仕事を見つけて前向きに動き、ひかりも針仕事などできることを一生懸命やり始める。そんな中、太一はなかなか現実を受け入れられずに抗う。

戦争の悲惨さと笑いの絶妙なバランス感

昭和16年12月8日、かの戦争が始まった日から間もなく80年が経過しようとしている。

戦争を経験していない世代が大半を占め、私を含め、世界中で起きているもののどこか“他人ごと”と思ってしまっている人が多いだろう。そんな心にこの物語はずっしりと重くのしかかってきた。しかし、さすが宮藤官九郎脚本作品。笑いのスパイスをほどよく入れ込むことで、重たいテーマながら絶妙なバランス感を実現している。

そして、戦時中を描くドラマではあるが、同じ現代を生きる家族がタイムスリップするという構成が、私たちをどこか身近に感じさせる。

太一は令和の現代からタイムスリップした身。資料を読み「いつ、何が起こったか」を知っているのだ。最初はただ起こった“タイムスリップ”という無茶苦茶な事実に反発するだけだったが、徐々に起こる悲劇から人々を守るために奮闘し始める。その姿に、より多くの人を救ってほしい、願わくば大きな悲劇が起こらないようにできないのか…と願わずにはいられない。

戦争を受け入れてしまう怖さ

本作のドラマ化は3度目。1度目は1982年、2度目は2005年とそれぞれの主人公家族が昭和19年にタイムスリップする姿が描かれてきた。

そこからさらに時代の進んだ令和の2024年。タイムスリップした先の、自分たちの暮らしとのあまりの違いに驚く太一家族。そして彼らは戦時下の衝撃の現実を目の当たりにする。

もし自分たちが家ごと戦時下にタイムスリップしてしまったら、果たして受け入れられるのだろうか…。

戦争は良くないもの。頭では分かっているはずなのに、そのスタンスを崩さないのは太一だけ。時代に順応するよう暮らしている中で、「こんな戦争」と言う父・太一に子供達は反発していく。ついには「お国のために戦いたい」と戦争を受け入れ、精神的にも染まっていってしまう。そこにも戦争の“怖さ”が描かれていると感じた。

そして、物語は衝撃のラストを迎える。その展開に、見終えたときには思わず呆然としてしまった。その“終り”をどう受け止めるか。皆さんにも、最後までしっかりと見届けてほしい。

作品を彩る豪華キャストも見どころ

大泉をはじめ、吉田羊、三田佳子、堤真一や神木隆之介、西田敏行、橋爪功などの豪華キャストが作品を彩っている。

作中では、神木がひかりのパート先であるドッグウェア専門店のオーナー・五十嵐を、西田が太一と敏夫が食料のほどこしを乞う農夫を、橋爪が神社で子どもたちに軍歌を歌わせ、戦争の士気を高める老人を演じている。

ちょっとした役で豪華なキャストが出演しているので見逃し厳禁。取りこぼさないよう見てもらいたい。

文=椿小町

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