1. トップ
  2. 恋愛
  3. 【人と犬はマブダチ】見つめ合うと「脳波がシンクロ」すると判明!

【人と犬はマブダチ】見つめ合うと「脳波がシンクロ」すると判明!

  • 2024.9.21
Credit: canva

犬と触れ合っていると時々、「私たちの絆は一方的なものなのではないか?」と感じることがあるかもしれません。

しかし最新研究は、人と犬の絆が双方向的なものであることを教えてくれています。

中国科学院(CAS)はこのほど、人と犬が見つめ合ったり、撫でたりする交流をしているときに、お互いの脳波がシンクロしていることを発見しました。

脳波のシンクロは人と人の間ではよく知られていますが、異種生物とのシンクロが確認できたのは初めてとのことです。

研究の詳細は2024年9月11日付で科学雑誌『Advanced Science』に掲載されています。

目次

  • 人と犬の「脳波」はシンクロしているのか?
  • 絆が深まるごとに「脳波のシンクロ率」が高まっていた!
  • 自閉症の犬には「LSD」を投与するとシンクロ率がUP!

人と犬の「脳波」はシンクロしているのか?

犬は人類にとって最良のパートナーです。

人と犬の歴史はとても古く、最も古い推定では約4万年前に家畜化が始まりました。

もう少し詳しく言うと、オオカミが人間の食べ残しに集まるようになった中で、次第に両者の関係性が深まり、その中でも特に人間になついた一群が犬になったとされています。

研究主任のヨン・チャン(Yong Zhang)氏は「家畜化の長い歴史の中で、犬は人間との親密なコミュニケーション能力を発達させてきました」と説明。

「人の表情や行動、声のトーンなどのシグナルを読み取り、飼い主の意図を理解するように進化してきました。

こうして人と犬との相互作用は、他の家畜や動物にはあまり見られないレベルにまで達したのです」と話します。

Credit: canva

その一方で、人と犬との絆の深さが脳活動にどのように反映されているかはわかっていませんでした。

例えば、お互いの絆が本当に深まっている状態であれば、それぞれの脳波がシンクロする傾向が見られます。

脳波のシンクロは他者との共感性や協調性、社会的つながりが高まっていることを指し示すものです。

人と犬は外目にはとても仲良く見えていますが、もし両者の脳波がバラバラであれば、実際には絆が深まっていないことを意味します。

そこで研究チームは新たに、人と犬が交流しているときの脳波を調べてみました。

絆が深まるごとに「脳波のシンクロ率」が高まっていた!

実験では10匹のビーグル犬(1〜2歳、すべてオス)を対象に、ランダムに人とペアを組ませて、双方に脳波を測定できるキャップを着用してもらいました。

このキャップは、人と犬の交流中に脳の神経細胞から発される電気シグナルを記録することができます。

そして次の3つの条件下で人と犬の脳波を測定しました。

(※ 以下の「社会的相互作用」とは、撫でたり、抱きしめたり、お互いの目をじっと見つめ合ったりするコミュニケーションのことを指しています)

①別々の部屋にいて社会的相互作用もない条件
②同じ部屋にいるが社会的相互作用のない条件
③同じ部屋にいて社会的相互作用もある条件
左から①〜③に該当 / Credit: Yong Q. Zhang et al., Advanced Science(2024)

人と犬のペアは飼い主とペットの関係ではなく、お互いに見ず知らずの初対面です。

これは人と犬が親しくなるにつれて、脳波活動がどうのように変化するかを知るためでした。

実験は各1回の時間を5分間に設定し、これを5日間つづけて行いました。

その結果、事前の予想通り、条件①では人と犬の脳波活動が最もバラバラで、条件③で脳波のシンクロ率が最も高くなることが判明しています。

さらに日を追うごとに脳波のシンクロ率が高まっており、条件③の「同じ部屋にいて社会的相互作用もある条件」では、実験開始から5日目に人と犬の脳波が高いレベルでシンクロしていたのです。

これは人と犬との絆が時間の経過ごとに深まっていることを示しています。

右の脳波は青が人で、赤が犬 / Credit: Yong Q. Zhang et al., Advanced Science(2024)

チャン氏によると、絆が深まるにつれて脳波のシンクロ率が高まる傾向は人と人に見られる現象と同じだといいます。

また別の発見として、相互作用の「撫で」と「見つめ合い」が同時に行われた場合、「撫で」と「見つめ合い」がそれぞれ別個に行われた場合と比べて、脳のシンクロ率が高まっていました。

人と犬との脳活動のシンクロが確認できたのは今回が初めてであり、人と犬が脳波レベルで深い絆を結んでいることを示す結果です。

加えて、この研究は自閉症の新たな治療法を見つける上でも役に立つことがわかりました。

自閉症の犬には「LSD」を投与するとシンクロ率がUP!

自閉症(自閉スペクトラム症:Autism Spectrum Disorder, ASD)は、対人コミュニケーションに強い抵抗感を示す発達障害の一つです。

子供の約20〜50人に1人が自閉症を持つとされ、名前を呼んでも振り向かない、特定の物事に強いこだわりがある、触られるのを嫌がる、視線が合わない、表情が乏しいなどの特徴を示します。

自閉症は人に特有のものと思われがちですが、実は犬の世界にも自閉症はあるのです。

特にこれまでの研究では、脳のニューロン間の結合を維持するタンパク質を作り出す「SHANK3遺伝子」に異常があると、犬が自閉症を示すことがわかっています。

犬にも自閉症はある / Credit: canva

チームは今回、遺伝子編集ツールを用いてSHANK3遺伝子に変異を起こし、自閉症を持った犬を作成しました。

この犬は人との相互作用を経験しても、脳波がまったくシンクロしないことが確かめられています。

先の実験と同様、撫でて見つめ合う交流を5日間つづけても、脳波のシンクロ率は低いままでした。

そこでチームは、自閉症の犬に合成薬物として有名な「LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)」を投与してみることにしました。

LSDは以前、マウスに投与することで社会性を高められることがわかっています。

これを受けて、自閉症の犬にLSDを適量投与した結果、24時間後から人との脳波活動のシンクロ率が徐々に高まり始めたことが確認されたのです。

この改善は1回の投与で、実験5日目まで持続していました。

LSDが脳波のシンクロ率を高めたメカニズムはまだ不明ですが、この結果はLSDが自閉症の治療薬として有効であることを示唆するものです。

ただLSDはその中毒性や幻覚作用の高さから違法ドラッグとして認定されており、医療目的で使用することは認められていません。

しかし現在、LSDから毒性や幻覚作用を引き起こす化合物を除去し、向精神作用だけを残した試験薬の開発が世界的に進められています。

安全に服用できるLSDが開発されれば、自閉症を治療する新たな方法となるかもしれません。

チームも次のステップとして、自閉症に有効で安全なLSDの開発が可能かどうかを研究する予定です。

参考文献

New study reveals aligned brain waves strengthen the bond between humans and dogs
https://www.advancedsciencenews.com/new-study-reveals-aligned-brain-waves-strengthen-the-bond-between-humans-and-dogs/

Human-Dog Brain Activity Syncs During Bonding
https://neurosciencenews.com/human-dog-brain-sync-bonding-27645/

元論文

Disrupted Human–Dog Interbrain Neural Coupling in Autism-Associated Shank3 Mutant Dogs
https://doi.org/10.1002/advs.202402493

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる