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<逃げ上手の若君>仲間に“ド変態”と勘違いされる時行… 頼重が時行に伝えたかったこととは?

  • 2024.9.21
アニメ「逃げ上手の若君」第十回が放送 ©松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会
アニメ「逃げ上手の若君」第十回が放送 ©松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会

【写真】瞼に“キス”することで、時行に神秘的な光景をみせた雫(ほか、第十回場面カット)

TVアニメ「逃げ上手の若君」(毎週土曜深夜11:30-0:00ほか、TOKYO MXほか/ABEMA・ディズニープラス・FOD・Hulu・Leminoほかで配信)の第十回が9月14日に放送された。神力を取り戻したい諏訪頼重のために奔走する北条時行は、つかの間の不可思議に触れる。頼重が時代の変革期を生きる時行に伝えたかったことは…。(以下、ネタバレを含みます)

「逃げ上手の若君」

本作は、「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」で知られる松井優征が週刊少年ジャンプ(集英社)にて連載中の歴史スペクタル漫画を原作としたTVアニメ。鎌倉幕府滅亡の後、北条家の生き残りである主人公の北条時行が動乱の世を駆け抜ける姿を描く冒険譚だ。

アニメーション制作は「SPY×FAMILY」や「ぼっち・ざ・ろっく!」などを手掛けるCloverWorks、監督は「ワンダーエッグ・プライオリティ」で副監督を務めた山崎雄太、シリーズ構成は「その着せ替え人形は恋をする」の冨田頼子、キャラクターデザインは「劇場版ポケットモンスター ココ」で総作画監督を務めた西谷泰史が担当。奇才の製作陣が、美麗かつ迫力のある映像で歴史の一片を紡ぐ。

時行が生きるのは人と神が共存する最後の時代

アニメ「逃げ上手の若君」第十回より ©松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会
アニメ「逃げ上手の若君」第十回より ©松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会

瘴奸(CV:東地宏樹)率いる征蟻党との戦いに勝利した逃若党。新たに仲間となった吹雪(CV:戸谷菊之介)を引き連れ、諏訪大社に戻ってきた北条時行(CV:結川あさき)は諏訪頼重(CV:中村悠一)から一時的に未来が見えない時期があることを打ち明けられる。

神の力を拠りどころとする者もいるため、みなに事情を明かせない頼重は、時行の手を借りて、神力を取り戻すための方法を一つひとつ試してゆくことに。時行は頼重が望むとおりのものを揃えてゆくが、一向に神力が回復する兆しが見えないどころか、郎党たちに「鰻や行者にんにくで精をつけ、巫女装束を着せた藁人形を縛ってSMプレイに及ぶド変態」と勘違いされてしまうのだった。

怒った時行に、頼重は最後のお願いとして諏訪大社のご神体・守屋山に流れる聖なる沢の水を汲んできてほしいと頼む。そこで時行が目の当たりにしたのは、雫(CV:矢野妃菜喜)の神楽舞。その姿は無数の光と戯れているように見えた。目の錯覚かと思った時行だったが、雫が瞼にキスをした瞬間、神秘的な光景が目の前に広がる。光の正体は、諏訪の神域に住まう神獣達だった。

「時行様にも知っておいて頂きたいのです。私の力の源泉を。この世にはまだ武力や地力で測れない不可思議な力が残っていることを」

鎌倉時代末期から南北朝時代を舞台にした「逃げ上手の若君」。アニメ第一回から第九回までを振り返る特別編を挟んで放送された第十回では、頼重が時行にこの時代が「神と人が共存する最後の時代」であることを説明した。御恩と奉公によって土地を持つ権利が保障されると、人は土地への執着が強くなり、人が住む範囲も広がる。そうすれば、人の目が届かないところに存在する神の力は消えるのだという頼重。時行に見せた「御神渡り」もかつては“神様が渡った跡”と人々に信じられていたが、時代が進むにつれて多くの人の目に触れ、やがては自然現象として説明される。なお、地球温暖化の影響で「御神渡り」は2018年を最後に出現していない。

同じように時行もいくら逃げ上手とはいえ、監視の目が行き届いている社会ではすぐに捕まってしまう。神の力も逃げ上手も時代とともに消えゆく力。だからこそ、頼重は今を目一杯生きろと時行に伝えたかったのだ。

アニメ「逃げ上手の若君」第十回より ©松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会
アニメ「逃げ上手の若君」第十回より ©松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会

足利尊氏の実弟が登場!

また第十回では、足利尊氏(CV:小西克幸)の実弟・足利直義(CV:古川慎)が登場。弟の来訪を喜んだのち、尊氏は「北条の残党がそろそろ乱を起こしそうな予感がする」と鎌倉の守りを固めるようにと命じる。子供の頃、直義が三日三晩かけて暗号にした宝の隠し場所を勘ですぐに当ててしまったという尊氏。その異様なほどの勘の鋭さを、直義は信じていた。

“武とカリスマと直感”の尊氏と、“知と冷徹と理論”の直義。正反対のタイプの秀才二人だが、兄弟仲はすこぶる良かった。尊氏も直義のことを相当に可愛がっているようで、鎌倉幕府を滅亡させた怪物とは思えぬ穏やかな表情を見せる。そんな二人の仲睦まじい姿に心が和んだのも束の間、尊氏が描いた御仏の絵を見た瞬間に直義の表情が一瞬にして強張った。

尊氏が描いていたのは、単なる御仏の絵ではなく、御仏を喰らう怪物の絵。それは尊氏が御仏のことを餌としか認識していないことを意味していた。弟であり、兄のことを慕う直義でさえも悍ましさを覚えざるを得ない尊氏の怪物ぶりが強調された第十回。驚くべきは、この兄弟と北条時行が激突する“中先代の乱”まで既に一年半を切っているという事実だ。改めて本作が儚くも濃密な時代を描く物語であることを実感した視聴者から「もう1年半しかないの?!」「神秘が薄まっていくってなんか寂しいな」「移ろい行く時代を感じて少し切ない。でもしんみりせずにギャグで落としてるのがいいなぁ」という声が上がった。

◆文/苫とり子

アニメ「逃げ上手の若君」第十回より ©松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会
アニメ「逃げ上手の若君」第十回より ©松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会
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