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「王子をビンタして死刑」から始まる幽霊城でのラブコメディ!恋にも幽霊にもドキドキさせられる『幽霊城の旦那様』

  • 2024.9.20
ダ・ヴィンチWeb
『幽霊城の旦那様』(柴宮幸/白泉社)

着たい服を着て、行きたい場所に行き、食べたいものを食べる。そんな純粋で、自分に正直なヒロインは、開始からわずか数ページで求婚に来た王子をビンタし、不敬罪で死刑を命じられることに。

『幽霊城の旦那様』(柴宮幸/白泉社)は、そんなお先真っ暗な出来事をきっかけとして、悪名高い「幽霊城」に嫁ぐことになり、城主から後継ぎを産むよう求められるラブコメディ作品だ。

「幽霊城」の城主・リハルトは、とある事情で妻をめとり、後継ぎを作りたいと思っていた。しかし、住んでいる幽霊城は「入ったら二度と出ることはできない」なんて悪名をとどろかせているほど敬遠されている場所。普通の女性が来てくれることは期待できない。

そんなときに田舎の令嬢・ミラがタイミングよく王子をビンタして死刑を命じられ、世間的には死んだことになる。これ幸いと彼の家来がひそかにかくまい、本人が意識を失っている間に、了承を得ることもなく幽霊城に連れこんでしまうのだ。

世間では死んでいることになっており、城から出ることはできない。城主はイケメンだが、うさ晴らしで笑いながら幽霊を拷問するような陰気な気質の持ち主。最初こそ、とてもやっていけそうにないと身構えるミラ。しかし、群がる幽霊からさりげなく守ってくれたり、これまでの生き方を肯定してくれたり。意外とこの人、いい人なのかも……?と、あわい期待を抱かせてくれるエピソードもあり、無理やり始まった婚姻生活を徐々に受け入れていくのだった。

城主のリハルトは髪も長く、伏し目がちで全体的に陰気とはいえ、顔はいい。性格だってどうやら悪くない。影があるのには事情もあるようだ。無理やりあてがわれた旦那様だが、妻にする女性は誰でもいいわけではないと断言してくれるなど、言って欲しかったセリフを臆面もなく言ってくれる様にはミラでなくともキュンとしてしまう。そんなセリフを受けて、普段は自分に素直で直情型のヒロインが思わず赤面してしまう姿は大変かわいらしい。

全編に言えることだが、きらびやかで美しい絵柄が、ロマンチックな状況をこれでもかと彩っており、舞台が陰気な城であることなどすっかり忘れさせられてしまう。

また「幽霊城」には、その名のとおり幽霊が溢れている。執事も幽霊だし、ふわふわと浮遊しているかわいらしいものや、悪さをして地下に捕らえられたものなどおびただしい数が存在している。中にはヒロインの体をのっとってくる幽霊や、悪霊になりかけている危うい幽霊もいる。そういった幽霊たちをふたりで対処していくアクションマンガのような楽しさも本作の見逃せないところだ。こうして巻きおこったトラブルをふたりで乗りこえていくことが、互いの信頼を築き上げる大切な要素になっている。

ふとしたときに見せる城主の言動のイケメンっぷりにもだえるもよし。直情型ながらウブなところのあるヒロインの恋模様を楽しむもよし。幽霊退治アクションコメディとして楽しむもよし。そのどれもが緻密で美しい絵でつむぎだされている。ちりばめられた数多くの魅力たちが、必ずやあなたを「幽霊城」へといざなってくれるはずだ。

文=ネゴト / たけのこ

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