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働く世代に寄り添う産業僧が、現代社会の不安にアンサー!

  • 2024.9.20

Question1:「時代の変化についていけない」と疲れることがあります。どうすればいい?

時代がどんどん変わる中で、ただ追いかけるだけでは疲れてしまいます。それに、「自分の感覚を押し殺して社会の価値観や仕組みに従う」という時代は終わりました。変化を無理に追いかけるのではなく、自分が本当に大切にしたいことを立ち止まって考える方が良いと思います。自分の人生の舵取りは自分がするという心意気で臨むことが大切です。

ただ一方で、矛盾しているようですが、ある程度変化についていくのも「人生とはそういうもの」という側面があります。変化に追いつこうとすること自体が、人生の一部なのです。

私自身、毎日境内の掃除をしていますが、掃除には終わりがありません。落ち葉を掃いた瞬間に、新たな落ち葉が降りてきます。葉が落ちるのも、落ち葉を掃くのも、どちらもずっと続く営みです。人生もまさにこのように終わりがなく、常に続いています。ですから、どこまでやれば終わるのかと苦しくなったときは、生きること自体が終わりのない営みであることを思い出すことが大切です。もっと言えば、死という区切りはありますが、それでも生きることには本質的に終わりがないのです。

Question2:今の会社の仕事内容や待遇、将来性などに不満はあるものの、なかなか行動に移せません。転職や独立する勇気が出ません。このモヤモヤをどう解消すればいい?

「今日、この会社に出社している」というのは、自分で選択していることに気づくことから始めると良いと考えます。実際には、今日会社に行くことを辞める選択もできたのですが、あえて行くことを決めたのですよね? 多くの人はほかの選択肢がないと思い込んで追い詰められがちですが、日本社会では職業の選択は自由。今の会社に行くと決めたのは、ほかの誰でもないあなた自身です。そして、行くと決めたからには仕事をする、と言い聞かせる。やっぱり自分はこの会社に今日も行くんだと引き受け直すことが大切だと感じます。

その先に、もしかしたら今の会社以外の選択肢を取るタイミングが来るかもしれません。それは、「今日この会社に行くという決断をした」という感覚があったからこそ、選べるようになるのだと思います。

Question 3: 戦争や紛争のニュースが毎日のように流れてきて、無力感や不安に駆られます。ニュースにどう向き合えばいい?

『ヒューマンカインド 希望の歴史』を執筆したオランダの歴史家・ジャーナリストのルトガー・ブレグマンが、「人間は案外そんなに悪いものではない」「ほとんどの人は本質的にかなり善良だ」と述べています。私もその考えに賛同します。

ニュースはどうしても殺人事件や戦争などの悪い出来事を報じがちで、メディアは人々の不安を強調します。しかし、実際には、近所を散歩してみると、殺人事件も起きていなければミサイルも飛んでこないことがほとんどです。もちろん、そのような危険な地域も存在しますが、それがすべてではありませんよね?

もっと身近な、ほっこりするようなニュースに目を向けることも大切です。例えば、電車で席を譲る人を見かけるなど、日常の小さな善行や嬉しい出来事に注目することで、心のバランスを保つことができるのではないでしょうか。

Question4: 気候変動による自然災害や超高齢化社会など、未来にほぼ確実に起こることに対する不安をどうすれば?

ほぼ確実に起こることに対しては、事前に備えることが重要です。旅行の計画を立てるのと同じように、「この時はこうしよう」と準備をしておくことです。不安だからといって何もせずに放置するのではなく、実際に行動に移す。それが、今できる最善の方法です。

Question 5: お金や健康など将来のことを考えると、“不安なことを繰り返すマイナスのテープ”が頭の中で流れます。止めるにはどうすればいい?

まず、その不安を紙に書き出してみると良いと思います。書くことで、その輪郭がはっきりし、具体的な行動に移しやすくなります。なぜ同じ不安が何度も脳内で再生されるのかを立ち止まって考えることも重要です。

それでも不安が続く場合、無理に止めようとしなくても良いかもしれません。現代では効率化が求められがちですが、不安が生じるまでにはある程度の時間がかかったのですから、改善にも時間が必要なのは自然なこと。気長に待つことも大切です。

身体を痛めて落ち葉を掃けない時は、誰かが代わりに、もしくは一緒に、落ち葉を掃いてくれるかもしれません。そうした体験からもたらされる発見や新たな意味が、あなたの唯一無二の物語になっていくと思います。欲しいものを獲得し続けることが、豊かな人生とは限りませんよね。

話を聞いたのは……

松本紹圭

浄土真宗本願寺派僧侶。東京大学卒業後、僧侶に。インド商科大学院で経営学修士(MBA)を取得。企業に出向いてビジネスの悩みに仏教の視点から応える「産業僧」の取り組みも進める。「未来の住職塾」塾長。ダボス会議を主催する世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーズにも選出。ポッドキャスト「テンプルモーニングラジオ」を平日午前6時に配信中。武蔵野大学客員教授。

Text: Kyoko Takahashi Editor: Rieko Kosai

GIRL, INTERRUPTED, Winona Ryder, 1999
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