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「子どもを産みたいのか分からない」「望めば妊娠できると思っていた」子どもを持つかどうかの選択、不妊の悩みを描いたコミックエッセイ

  • 2024.9.19

人生には大きな選択がいくつもある。進学や就職、結婚などにくわえて「子どもを持つかどうか」というのも人生の大きな分岐点となるだろう。『子どもが欲しいかわかりません』(大町テラス/KADOKAWA)で描かれているのは、結婚して数年がたちアラフォーになり、子どもを持つべきかどうかという選択に悩む女性のリアルな姿だ。

主人公のカナコは37歳。5年前に結婚している。出版や編集にたずさわる仕事をしており、現在は独立してフリーランス。いまのところ子どもはいない。走りまわる子どもを見て、表向きは「やんちゃでかわいいですねー」と言いながらも、内心はかわいいと思えていない自分もいる。子どもが欲しいのか欲しくないのか、自分のなかでも定まらない気持ちが丁寧に描かれている。

ひと昔前であれば、女性は結婚して家庭にはいり、子どもを持つのが当たり前の価値観だったかもしれない。しかし今は違う。無理に結婚する必要もなければ、必ずしも子どもを持たなければいけないわけでもない。でも、そこに選択肢があるからこそ悩みは生まれるのだ。そしてどんな選択をしたとしても間違いでも正解でもないことが、選択の糸口を遠ざける。

本作を読んでも、一足飛びに正解が得られるわけではない。しかし、子どもを持つことに対するさまざまな感情や、まわりの反応、そして選びとった行動が描かれ、読み手が漠然と持っていた不安や心情を視認できる形にしてくれることに価値がある。特にすでに同じ立場に立ったことのある人にとっては、何度となく頭をよぎったことのある感情が描かれており共感必至だろう。

物語の後半では、子どもを産むか、産まないかという決断に揺れていたカナコが、次第に子どもを産みたいと思うようになっていく。しかし、次に待ち受けていたのは不妊の悩みだった。「何の根拠もなく私はきっと大丈夫って思ってた。私が決断さえすれば大丈夫って」望めば、自然に妊娠できると思っていたカナコの気持ちを思うと胸が締め付けられる。いざ子どもがほしいと思っても、なかなか授かれず苦悩する姿や丁寧な心理描写に加えて、不妊治療の様子もリアル。産むか産まないかの決断に揺れている人だけでなく、不妊に悩む人、不妊治療を考えている人にもぜひ手にとってもらいたい1冊だ。

文=ネゴト / たけのこ

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