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4億6千万年前の地球には「リング」があった可能性が浮上!

  • 2024.9.19

遠い昔、地球にも土星のような輪っかがあったのかもしれません。

オーストラリアのモナシュ大学(Monash University)の最新研究で、約4億6600万年前の地球に、無数の隕石断片からなるリングが存在したとする説が新たに提唱されました。

「まさか⁈」と疑いたくなるような大胆な仮説ですが、研究者らによると、あらゆる証拠が”地球のリング”の存在を指し示していたとのことです。

研究者たちは一体何を見つけたのか、その謎に迫ってみましょう。

研究の詳細は2024年9月12日付で科学雑誌『Earth and Planetary Science Letters』に掲載されています。

目次

  • 赤道だけに集中したクレーターの謎
  • どうやって地球に「リング」ができたのか?
  • オルドビス紀の寒冷化はリングが原因だったのかも?

赤道だけに集中したクレーターの謎

ことの発端はクレーターの奇妙なパターンが見つかったことに始まります。

実はこれまでの研究で、約4億6600万年前の古生代・オルドビス紀には、隕石の衝突が数千万年にわたり突如として急増していたことが知られていました。

隕石が惑星に落ちること自体は何も珍しいことではありません。

地球には今でも毎日のように大小さまざまな隕石が飛来しています。

ただ不可思議なのはオルドビス紀に落下した隕石の位置でした。

通常、隕石が落ちる場所はランダムであり、それは月や火星を見て、至るところにクレーターが分布していることからもわかります。

ところがオルドビス紀の隕石痕は不思議なほど赤道付近に集中していたのです。

オルドビス紀に隕石落下が急増 / Credit: canva

オルドビス紀は5億年近く前のことですから、大陸の形や配置も今日とはまったく違います。

そこで研究チームは今回、あらゆる地質学的データを駆使して当時の大陸マップを再構築し、オルドビス紀の隕石群がどこに落ちていたのかを分析しました。

その結果、全部で21個のクレーターが見つかったのですが、実に興味深いことに、それらの隕石痕はすべて赤道から緯度30度以内にあったのです。

また当時の大陸は全体の70%以上がその範囲の外側にあり、赤道の緯度30度以内にあった大陸は30%以下でした。

その非常に狭い範囲に絞って、図ったかのように21個すべてのクレーターが見つかったのです。

まるで神様がダーツのブル目がけて矢を放つように、地球の赤道へ向けて隕石を放っているようでした。

隕石痕は赤道から緯度30度以内に見つかった(大陸のシルエットは約4億6700万〜4億5000万年前にかけて移動した大陸のコース) / Credit: Andrew G. Tomkins et al., Earth and Planetary Science Letters(2024)

この奇妙な現象をどう捉えるべきでしょうか?

まずもって「宇宙のあちこちからランダムに飛来してきた隕石が本当にたまたま赤道付近に落ちただけ」というのは到底考えられません。

しかもオルドビス紀の一時期だけ、隕石が偶然にも地球によく飛んできたというのもおかしな話です。

そこでチームは科学的に妥当性の高い考え方をしました。

それは「オルドビス紀の地球の赤道上空に何かがあった」というものです。

ではその「何か」とはなんでしょうか?

チームが最も可能性の高いものとして導き出した答えが地球のリングでした。

どうやって地球に「リング」ができたのか?

チームの提示した仮説はこうです。

まず、オルドビス紀の地球に向けて、比較的大きめの小惑星が飛来してきました。

小惑星は地球と衝突するコースにはありませんでしたが、地球が放つ重力圏に接触するには十分に近い場所を通りました。

そして小惑星は地球の重力圏につかまり、軌道運動を始めます。

次第に地球の重力に引き寄せられた小惑星は「ロッシュ限界」という境界線に達しました(下図を参照)。

ロッシュ限界とは、ある天体が重力によって破壊されずに他の天体に接近できる限界の距離のことを指します。

つまり、ロッシュ限界に達してしまった小惑星は、地球の重力によって粉々に引き裂かれてしまったのです。

地球(黄色)、小惑星(青紫)、ロッシュ限界(白線) / Credit: ja.wikipedia

その後、散り散りになった小惑星の断片は、地球の重力圏に引き寄せられたまま、安定した軌道運動を再開させます。

その結果、小惑星から生まれた無数の断片が地球の赤道外縁を覆うようなリングを形成したのです。

あとは皆さんも容易に想像がつくでしょう。

リングとなって公転する小さな断片が地球の重力に引っ張られ、燃え尽きずに大気圏を突破できたものが、リング直下の赤道付近に次々と落下したわけです。

おそらく、クレーターとして見つかっていないだけで、オルドビス紀当時に海だった赤道付近の場所にもたくさん隕石が落下したと見られます。

さらにチームはこれと別に、”地球リング仮説”を支持する別角度の証拠も見出しました。

オルドビス紀の寒冷化はリングが原因だったのかも?

オルドビス紀は一般に、約4億8830万〜4億4370万年前までを指しますが、その中でも最後の時代を「ヒルナンシアン(Hirnantian)」と呼びます。

ヒルナンシアンは約4億4520万(±140万年)〜4億4380万年前(±150万年)のあたりです。

これまでの研究で、ヒルナンシアンは地球が急激に寒冷化した時代であり、今日から過去5億年間の中で最も寒かった時期の一つだったことがわかっています。

しかしヒルナンシアンに急な寒冷化が起きた理由はいまだによくわかっていません。

ところが、地球の赤道外縁にリングがあったとすると…?

ずばり、研究者らは「リングの存在が赤道上空の太陽光を遮ったことで気候変動を引き起こし、地球の寒冷化が発生した可能性がある」と指摘しました。

時代を照らし合わせても、ヒルナンシアンの寒冷化が起きたのは地球にリングができたと推測される約4億6600万年前より後のことです。

つまり、オルドビス紀の終わりに地球が急に冷えたのは、リングの存在が原因だったのかもしれません。

リングをまとった地球のイメージ図 / Credit: Monash University, Oliver Hull(2024)

このように地球にリングが存在したとすれば、オルドビス紀に隕石落下が急増したことも、赤道付近にクレーターが集中していたことも、急な寒冷化が起こった理由も説明することができます。

ただ本当にリングがあったとして、その後どのような運命を辿ったかは定かでありません。

研究者らは数百万〜数千万年かけて地球の赤道付近や大気圏に向けて落下した後、徐々に消滅していったのだろうと予想しています。

果たして、リングをまとった地球とはどのような姿だったのでしょうか?

妄想するだけでロマンをかき立てられますね。

参考文献

Earth may have had a ring system 466 million years ago
https://www.monash.edu/science/news-events/news/current/earth-may-have-had-a-ring-system-466-million-years-ago

Earth May Have Once Had a Ring That Slowly Fell From The Sky
https://www.sciencealert.com/earth-may-have-once-had-a-ring-that-slowly-fell-from-the-sky

499 Million Years Ago, Earth Potentially Had A Ring System That Impacted Its Climate
https://www.iflscience.com/499-million-years-ago-earth-potentially-had-a-ring-system-that-impacted-its-climate-75970

元論文

Evidence suggesting that earth had a ring in the Ordovician
https://doi.org/10.1016/j.epsl.2024.118991

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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