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チャンネル登録者数30万人超のYouTubeホラー番組『フェイクドキュメンタリーQ』が書籍に!リアルすぎるじっとりとした恐怖がたまらない

  • 2024.9.18
ダ・ヴィンチWeb
『フェイクドキュメンタリーQ』(フェイクドキュメンタリーQ/双葉社)

今年7月に刊行された『フェイクドキュメンタリーQ』(双葉社)は、モキュメンタリーホラーのパイオニア的存在とされるYouTube番組「フェイクドキュメンタリーQ」が初めて書籍化されたもの。それが、6万部を突破し凄まじい勢いで売れているという。動画をまだ観ていなかった人も、そろそろ気になっているのではないだろうか。

筆者も動画は未見だったので、書籍版から「フェイクドキュメンタリーQ」の世界を体験することにした。誌面には随所にQRコードがあって、そこから動画へ飛ぶことができる。書籍版のみの特典音声もあるようだ。

●“絶対に怖い”と思って見る写真が本当にこっわい

まずはページをペラペラとめくってみたところ、目に飛び込んでくる写真の気色悪さが半端ない。

動画の静止画だと思われるこれらの写真は、フェイクとはいえリアリティがすごい。朽ち果てたラジカセ、古びた遺影などの小道具は、「心霊マスターテープ」シリーズなどで知られる寺内康太郎監督が、手間と時間を一切惜しまずに制作したものだという。それが、誌面はもちろん、カバー袖にまで印刷されている。巻頭にはカラー写真が8ページにもわたって差し込まれているではないか。ページの端まで大きく印刷されているので、手が写真に触れてしまったことに気づいて“ひぃっ!”となる。

絶対に怖いというバイアスがかかっているせいか、男性がただ正面を向いているだけのスナップ写真さえ、“只事ではないぞ…”感が伝わってくる。動画では一瞬だけ映し出されるような場面が切り取られているため、ひょっとすると動画より静止画のほうが怖いんじゃなかろうか。じっくり眺めても、実際に存在するものとして疑いようがないクオリティの高さを感じる。怖くて凝視できないけど。

●得体の知れない存在がうごめく薄気味悪さ

写真でかなりビビってしまったが、へこたれることなく、物語を読み進めていく。本書で筆者がいちばん怖いと感じたのは、ファンの間でも人気が高いというエピソード「フィルムインフェルノ」だった。

あるカップルが洞窟のなかを彷徨うのだが、“何かがいる”ことを匂わせる、首のない人形やら、メモの破片やら、不気味なものが次々と現れる。気がつくと後ろ側が壁になっている(つまり、歩いてきた道が突然塞がれてしまう)場面なんて、“もうやめて…”と涙が出そうになるほど怖い。これ、誰かに見られているよな…。さらにいえば、2人は何者かに導かれているようだ。

突拍子もない設定に聞こえるかもしれないが、途中で嘘くささを感じることはなく、ズルズルと物語のなかに引き摺り込まれる感覚があった。たぶんそれは、“不可解だから”、なのだろう。フェイクという括りはさておき、そこに存在しているであろう何者かの存在や目的を明かし、その文脈を埋めたくなってしまうのだ。本作ならではの「考察の楽しみ」を、書籍版でも存分に味わえるはずだ。

書き下ろしとして掲載された「いくつかのピース」には、この事件と関連がありそうな案件が複数、贅沢に紹介されている。ここでもやはり、この世のものではないと確信するような女が浜辺に立つ島が、ある漁師が住む街にどんどん近づいてくる…という話が最高に気持ち悪かった。じわじわと確実に近づき、一度目をつけられたら逃れることができない、何かしらの不可抗力。ずっと見られているような薄気味悪さが、いつまでも脳裏から離れてくれない。

●自分にも起こり得るという“隣り合わせ”の恐怖感

じんわりと日常を侵食するような怖さが続くのは「BASEMENT 〜branch〜」だろうか。

東京都に現存する某マンションのエレベーターに設置された防犯カメラの記録。ごく普通のマンションのエレベーターのなかで、わずか4分間のうちに女性が姿を消したのだ。「branch」には「分岐」という意味がある。存在しないはずの「BASEMENT=地下」奥深くまで下降したエレベーターは、現実とは別の世界線につながってしまったのだろうか。カメラに残された不可解な映像や、暗闇のなかに歩み出す女性の最後の姿が、イヤ~な気持ちとともに目に焼き付いている。この女性がいったい何をしたというのだろう。夜、電気を消した後の暗闇が怖くなること必至…!

書き下ろし部分では、この事件に酷似したエレベーター失踪事件の声が記憶されており、エレベーター内部の恐怖がじわじわと伝わってくる。自分の意思に反して、恐ろしい出来事が自分の日常にも起こり得るという臨場感。“日常と隣り合わせ”なおぞましさ。エレベーターに乗る機会が多い怖がりさんは、覚悟を決めてこのエピソードを読んでほしい。

●考察することでますます没入

不可解な出来事に関わってしまった人たちは、巻き込まれるかたちでどんどん行方不明になっていく。「誰が、何のために、こんなことを?」「どこまでが嘘? もしかしたら本当のことも入ってる?」「嘘ということさえも嘘なのでは…?」と考えれば考えるほど謎は深まり、考察することで「フェイクドキュメンタリーQ」の世界へとますます没入していく。

動画で起きていることが文章で描かれる分、その全容を掴みやすいのが本書の大きな特徴と言えるだろう。考察をさらに楽しむための新たなピースもつめこまれた。すでに考察を深めている動画のファンにとって、本書は制作側からの新たな挑戦状と言えるかもしれない。すべてを読み終えたいま、本書を所有することで自分の日常が“何者か”とつながってしまいそうでとっても怖い。いや、考察から逃れられなくなった時点できっと、「フェイクドキュメンタリーQ」の渦に巻き込まれてしまっている…。

文=吉田あき

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