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50歳女性の離婚式、70代女性のドラム入門――人生はひとりになってから輝く。気鋭の女性作家6名によるヒットアンソロジー『おひとりさま日和』第2弾

  • 2024.9.18
ダ・ヴィンチWeb
『おひとりさま日和 ささやかな転機』(大崎梢、岸本葉子、坂井希久子、咲沢くれは、新津きよみ、松村比呂美/双葉社)

気鋭の女性作家たちによる「ひとりの生活」がテーマの6編を収録した『おひとりさま日和』。さまざまな理由からひとりで暮らす「おひとりさま」たちが、ちょっとこじらせたり、誰かと出会って変わったりしながら自分らしく生きる姿が、共感や心地よい感動を呼びヒットした。そんな同作の第2弾『おひとりさま日和 ささやかな転機』(双葉社)が登場。今回のテーマは、人生の酸いも甘いも経験した「おひとりさま」たちの転機やリスタートだ。

本作には、第1弾の続編的な物語と新しいお話を含む6編を収録。1作目の「アンジェがくれたもの」(大崎梢)の主人公は、本シリーズ初の男性。入院することになった叔父のレンタル番犬の世話を任された失職中の38歳・里志の物語だ。岸本葉子氏が手がける「友だち追加」は、68歳のナツが同じマンションに住む同世代女性と一緒に、あることにチャレンジ。「リフォーム」(坂井希久子)では、娘を育て上げた50歳の保子の離婚式と、再スタートが描かれる。

咲沢くれは氏の「この扉のむこう」の主人公・頼子は、定年退職を1年後に控えた中学校教師。教え子の卒業と転勤のタイミングで、ある出会いが訪れる。「リセット」(新津きよみ)では、48年連れ添った夫に先立たれた女性・依子が、死別をきっかけに夫の大きな秘密を知る。そして最後の「セッション」(松村比呂美)では、家族への深い後悔を抱えて生きる燈子が70歳を過ぎてロックに魅了され、ドラムにチャレンジ。毎日が華やぐ中、孫に関するある出来事が思い出されて――。

「おひとりさま」という言葉に寂しい響きを感じる人もいるかもしれないが、この6編に登場する人々は、独居のきっかけが不本意だった人はいるものの、今の暮らしぶりに満足して生きている。お金や住居に関する不安も、自分なりに解決してきた彼らには、たくましさも感じる。

しかし、若い人や家族と暮らす人と同じように、皆、後悔や懺悔、今と違う人生への思いを抱えて、モヤモヤしている。そんな主人公たちが、人生の転機や意外な出会いで知らなかった自分の一面に気付き、新しい扉を開いたり、過去に決着をつけたりしていく姿に、心が晴れる。「おひとりさま」だからこそできる大きな決断やチャレンジもあり、今、ひとり暮らしではない読者も、ひとりになってから見える新しい景色が楽しみになるのではないだろうか。

歳を重ねても、ひとりで生活する力があっても、人生を楽しむためには人とのつながりが欠かせない。そしていくつになっても、つまらない毎日を楽しくするための再スタートはできる。今、ひとり暮らしの人や、そんな未来が視野に入り始めている人だけでなく、「おひとりさま」は他人事だと感じている人にこそ読んでほしい、人生賛歌の物語だ。

文=川辺美希

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