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「月50万円マストだから」夫が突然貯金の猛者に…ルックスで男を選んだバブル女子大生の結婚残酷物語

  • 2024.9.18

絵にかいたようなバブル女子大生が50代になった令和日本。かつてのバブル娘たちはどのように「失われた30年」を送っていたのか。「恋愛の神様」の異名を持つ漫画家・柴門ふみさんの取材ルポをお届けしよう――。

ワンレン・ボディコンの行く末

「バブル期」真っただ中の1980年代後半、その象徴と思われたのがワンレン・ボディコンの女子大生たちでした。彼女達ははたして、その後どのような人生を送ったのでしょう?

「バブル期」を知るオトナなら、彼女らの行く末がかなり気になるのではないでしょうか。

①目が覚めて地道な人生を歩み、過去のバブル生活を恥じている。
②いまだバブルを引きずっていて、パーティーを求め街をさまよう。
③悪い男に騙されて、闇落ち。

泡のような好景気に踊らされ、若いというだけで男からチヤホヤされ、世の中ナメ切ってる風に見えた小娘たち……。過去を反省しているか? はたまた過去のバチが当たって不幸になっているのか……?

平成バブ子さん(仮名・54歳)は、まさに絵にかいたようなバブル女子大生でした。

しかし、彼女のその後の人生を誰が予測できたでしょう?

結論から述べると、彼女の後悔は一点のみ、「ルックスで男を選んだこと」。

セレブ婚が破綻し婚活パーティーへ

バブル崩壊、リーマンショック、コロナ禍、がん闘病を乗り越え、令和の幸福を手に入れたバブ子さんは、華やかな女子大生活を満喫後、資産家息子とセレブ婚しました。

ところが婚家の破産をきっかけに、夫がモラハラ・ストーカーに豹変し、警官まで出動する騒ぎに。

夫が拘留されている間に荷物をまとめて家出し、離婚。それを機に専業主婦だった彼女は一念発起し、事業で大成功をおさめます。

その後、婚活パーティーでDIYが趣味の地道なサラリーマンと出会い、同棲。バブル期には見向きもしなったタイプの男性でしたが、10年同居を続け、事実婚の現在にいたる。

バブル期の女性とその後

バブル期には毎日がパーティーの恋愛女王だった彼女が、40代半ばでどちらかと言えば地味で、洗練からは程遠い町の婚活パーティーに参加し、新たなパートナーを見つけた、その人生の変遷とは――。

BMWカブリオレで大学に迎えに来たボーイフレンド

東京世田谷生まれ。都内の私立お嬢様女子校で小・中・高を過ごしたバブ子さんは、1988年東京の名門女子大に進学します。

入学後は、東大、慶應の男子学生との合同サークルに所属します。女子は白百合、聖心、東女あたりのお嬢様女子大。どちらも夏はテニス、冬はスキーのシーズンスポーツを楽しむというのは名目で、彼氏・彼女探しが目的の軟派集団でした。その中でもひときわ光っていたというバブ子さん。

見た目の華やかさに加え、お嬢さん育ちながらも頭の回転が速く、何事も率先して行動するタイプで、当然男子学生からモテました。

合コン、パーティーに明け暮れる毎日。お嬢さまは就活などせず良家に嫁ぐものとされ、それが憧れの人生という時代でした。

ブランド品で身を飾り、頭の中は勉強よりもお洒落と恋愛。それがバブル期の女子大生でした。バブ子さんとて例外ではなく、大学の門までBMW850カブリオレで迎えに来たボーイフレンドの助手席に颯爽と飛び乗る彼女の姿は、ユーミンの歌詞のヒロインそのものでした。

王子様の専業主婦になるのが〈勝ち組女性〉

当時、女子大学生にもヒエラルキーが存在しました。東京の山の手育ちで小学校から私立の名門に通い、お嬢様女子大に進み、慶應か東大の彼氏がいる――というのが頂上グループ。

一方下位グループの地方出身の貧乏下宿生は、同じ女子大生でも上位に比べ恩恵はあまり受けていません。

まごうかたなき上位グループだったバブ子さんは、大学卒業後は就職せず、家事見習いとお稽古事で過ごします。そういうスタイルが就職する女子よりも位が上とされる時代でした。そして24歳で、バブ子さんは当時付き合っていたボーイフレンドと結婚します。

夫の平成ジュンイチ氏(仮名)はバブ子さんと同い年で、彼女の誕生日には車トランクいっぱいの薔薇の花をプレゼントしたという逸話の持ち主。

実家は都内に何軒もレストランを所有する資産家で、幼稚舎からの慶應ボーイ。若い頃の石田純一に似たハンサムで、石田純一と同じくらいおシャレだった彼にバブ子さんもぞっこんでした。彼に嫁ぎ、専業主婦になることに何のためらいもありませんでした。というか、当時それこそが〈勝ち組女性〉だったのです。イケメン・金持ちの王子様に見初められ、専業主婦になることが。

アジアの若い新郎新婦
※写真はイメージです
「お教室を開こうかしら?」

パーティー好きで楽しいことに貪欲ではありますが、バブ子さんの根っこは邪気の無い、まっすぐな女性です。

「結婚したら、彼の完璧な妻になろう」

心に決め、実行します。家はチリひとつなく整え、料理学校に通った自慢の腕で食事を作り、夫より先に眠るなんてあり得ない。彼が在宅中は、フルメーク&おでかけ着(そのままおでかけできる服装)で過ごします。

さらに余力で、自宅でフラワーアレンジメントやテーブルコーディネイトをお友達に教えたりも。

花飾りを作る女性
※写真はイメージです

この時点ですでに、バブ子さんには人並み以上のパワーと才覚が備わっていることがわかります。完璧な主婦をこなして、さらにお友達相手とはいえ「お教室」を開くのです。エネルギーが「並み」の主婦には、とうてい無理です。

結婚の2年後長女を出産したバブ子さんは、娘を自分の母校である名門私立女子小学校にお受験で合格させます。しかも、一緒に受験勉強をした娘の友人も全員合格したため、

「バブ子さんにお勉強を見てもらうと必ずS小学校に受かる」

そんな評判が口コミで広がり、彼女に子供の教育アドバイスを求める人が増えてゆきました。

「幼児教育のお教室を開こうかしら?」

バブ子さんに事業欲が湧いた瞬間です。

夫の特異な性格が目立ち始め…

最初は学生時代の友人やママ友数名に声をかけてメンバーになってもらい、やがて求人募集で人を雇い、生徒を募集し、授業料から利益を捻出し……。事業が拡大するにつれ仕事がどんどん楽しくなってきたバブ子さん。しかしそんな彼女とは対照的に、夫ジュンイチの特異な性格が、目立つようになってきたのです。

「それまでも、一度趣味にハマると執着が凄い人だとは知っていたのですが。G-SHOCKのコレクションにハマると、オークションで高価なものを買い集めたり、とか……」

G-SHOCKからロレックスに興味が移ると、高価なロレックスが何本も増えてゆき、やがてそれらのコレクションがバブ子さんお気に入りの食器を押しのけてキャビネットに並べられるようになってゆきました。

時計に飽きると、怪獣のフィギュア。よくわからないボロボロの怪獣もプレミアム付きの高価な品らしく、棚はそれらで埋め尽くされていったのです。

キャビネットのコレクションを満足げに眺め、悦に入る夫。

「私のお気に入りのマイセンのお皿が、ぼろ怪獣に追い出された」

内心忸怩じくじたる思いでしたが、専業主婦は夫に逆らうような声を上げてはいけないとバブ子さんは唇を噛みしめ、

「自分で金を稼がなきゃ。自分の好きなコレクションを自分だけの棚に飾るには、まずはお金を貯めなきゃダメなのよ」

彼女の人生の方向性が定まりつつありました。

お金のコレクターに変貌したジュンイチ

そんなとき、夫婦に亀裂が入る決定的な出来事が起こります。

夫の趣味が「貯金」になったのです。

「時計」や「フィギュア」を集めるように、「お金」を貯めよう!

「お金のコレクター」に変貌したジュンイチ氏。悪いことにちょうど実家の事業が傾きかけていた時期でもありました。

黒い背景に伸ばした男性の手
※写真はイメージです

「老後のために、貯金をしよう!」

夫の旗振りによって、夫婦はひたすら貯金をするという活動に入りました。

「なんかおかしい」と思いつつも、まだ夫を愛していたバブ子さんは従います。

月に50万円貯金するという目標を掲げた夫婦。バブ子さんが立ち上げた事業も、まだ大きな利益を生むほどではありません。私立に通う娘の授業料もあります。

そして元々裕福な家庭で育ち、バブル期の贅沢も身に染みている夫婦に、いきなり倹約生活に入ることなどできません。焼肉は叙々苑で食べたいし、たまにはフレンチのフルコースも食べたい。

夫婦にとって月50万の貯金など、そうそう簡単ではありませんでした。

そんな中、夫の言動がどんどんエスカレートしていったのです。資産家イケメン夫に名門私立に通う娘。そんな羨望の暮らしから、まさかの奈落の底に。

しかしバブル娘が持ち前の胆力を発揮するのは、ここからなのです。

(イケメン夫の奇怪な行動、そしてついには警察出動の次回へ続く)

柴門 ふみ(さいもん・ふみ)
漫画家
1957年徳島県生まれ。お茶の水女子大学卒。1979年漫画家デビュー。あらゆる世代の恋愛をテーマにして『東京ラブストーリー』『あすなろ白書』『同窓生 人は、三度、恋をする』など多くの作品を発表している。エッセイ集も多く『恋愛論』『ぶつぞう入門』『柴門ふみの解剖恋愛図鑑』『大人恋愛塾』など。

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