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光る存在感…阿部亮平の演技の美点は? 新たなエリート像を見事に体現したワケ。ドラマ『GO HOME』第8話考察レビュー

  • 2024.9.18
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第8話 ©日本テレビ
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第8話 ©日本テレビ

『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(日本テレビ系)第8話は待望と呼べる“手嶋回”となった。

三田桜(小芝風花)と月本真(大島優子)の女性バディが活躍しながら、さまざまな身元不明人を帰りを待つ人の元へ導いてきた『GO HOME』。そんな中で貴重なエッセンスとなっていたのが手嶋淳之介(阿部亮平)の存在だ。

手嶋は捜査一課の刑事で、身元不明人相談室のメンバーとともに捜査を進める仲間の一人。これまでも冷静に事件の概要を説明したり、容疑者を制圧するなどの見せ場があった。ただし、あくまでも物語のスパイスに過ぎなかった印象で、真に健気な恋心を寄せるという要素もありながら、出演シーンは限定的だった。

手嶋は捜査一課の刑事にふさわしく、スーツをパリッと着こなす姿はシンプルにかっこいいし、口調もクールで、一見してすぐエリートという印象を与える。一方で、真の前では柔らかな表情を浮かべ、キャラクターとしての魅力は回を追うごとに増していった。

『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第8話 ©日本テレビ
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第8話 ©日本テレビ

そこで迎えた第8話、手嶋は容疑者に襲われて銃を奪われるという失態を犯してしまう。刑事として確かな仕事ぶりを見せてきた手嶋にとって最大の失敗と言えるだろう。それは落ち込みようからも明らかで、部屋の隅でうなだれたり、ベッドに寝転がってすねたりと、社会人なら誰もが身に覚えのある素振りで失意をあらわにする。

エリートでも失敗するのだと親近感を抱かせるシーンだが、手嶋というキャラクターの美点はもっと別のところにあるのかもしれない。それが仲間に愛されるという特性だ。

通常エリートといえば、他を寄せ付けず、一匹狼で手柄を次々と挙げるイメージがすぐに思い浮かぶ。刑事を題材にしたフィクションでは、往々にしてそんなエリートが周りと手を取り合うことで成長していく過程が描かれるが、手嶋はそれとは異なり、最初から身元不明人相談室のメンバーに優しく手を差し伸べ、縁の下の力持ちに徹することで事件解決に協力する、新たな“エリート像”を打ち出していた。

だからこそ、手嶋が失態を犯して自宅謹慎という苦境に追い込まれた時、身元不明人相談室の仲間はすぐに動き出す。見返りも求めず、仕事で助けてくれる人々の存在は、手嶋の温かい人間性を雄弁に物語っている。

拳銃を奪った犯人で、高校時代キャッチャーだった手嶋とバッテリーを組んでいた梶原真司(落合モトキ)は手嶋に対して「お前は刑事に向かねえよ」と言い放った。それは手嶋が優しすぎるという点で当たっていると思う。だが、相手を思いやり、涙を流すことができる手嶋だからこそ、救える人間がいて、きっと梶原もその一人だったのではないだろうか。

『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第7話 ©日本テレビ
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第7話 ©日本テレビ

エリートであると同時に、どこか守りたくなる弱さもある。そんな二面性を持つ手嶋というキャラクターは、演じ手が阿部亮平でなければ成立しなかっただろう。阿部の声質はクールな印象を与えるが、こと手嶋に関しては声の出し方を巧みに使い分けているように感じる。

第7話では犬に向かって優しい声をかけていた手嶋。第8話で梶原を説得するシーンでは、緊張の中にある優しさを、かすかに上ずった声で繊細に表現していた。阿部は、自身の弱さを自覚しつつ、今ある問題にまっすぐと立ち向かう手嶋というキャラクターに丁寧な芝居で血を通わせることに成功している。

阿部にとって手嶋が当たり役であったことは間違いないが、これまでドラマの世界にいなかったようなキャラクターを生み出したことも大きな意味を持つ。今後、阿部はどんな役を演じていくのだろうか。役者としての活躍も注目していきたい。

(文・まっつ)

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