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JWアンダーソンが定義する可憐な強さ。「シンプル」に立ち戻る、過剰の時代のファッション【2025年春夏 ロンドンコレクション】

  • 2024.9.17
JW Anderson London Fashion Week RTW Spring 2025 - Backstage

「あなたが『ガーリー』という言葉を使うのを初めて聞きました」とビリングズゲートマーケットの旧所在地で行われたジェイ ダブリュー アンダーソンJW ANDERSON)の2025年春夏ショーの後、ジョナサン・アンダーソンに群がるジャーナリストの1人が言った。確かに、アンダーソンは型にはまった可愛らしさとは無縁なデザイナーであり、コレクションはいつも破壊に満ち、文脈という枠を超える。従って彼が考える「ガーリー」は当然のことながら矛盾だらけだ。

「私がレーベルでやっていることの多くは、私が妹(とスタジオで一緒に制作している周りの人たち)に投影していることなのです」とアンダーソンは説明する。「可愛らしさの中にあるタフさ。妹と女友達が揃って夜の街へ繰り出す姿は、可憐さと強さを体得しています」

そう語る彼は、スパンコールがあしらわれた甘いピンクのミニドレス、立体的なヘムラインのネグリジェ風ドレス、一部のファッショニスタの心を掴んでいるバルーンシルエットを彷彿とさせるミニ丈のスカートなどで可憐さをほのめかした一方で、チュチュをインスピレーションにした硬いレザー製の円盤型スカートで強さを表現。対極的な要素が共存する世界観を作り上げた。

レザースカートは、ブランドのカルト的な人気を誇るハンドバッグの主材からヒントを得たデザインでもある。素材や製作法そのものを中心に据えた今シーズンのコレクションで、アンダーソンはレザーを主なインスピレーションにし、ほかにもシルクとカシミアに着目。いかにして3つの主材からひとつのコレクションを生み出せるかを探求した。

「この仕事の面白いところのひとつは、原材料を扱えることです」とアンダーソン。「1つの素材をとって、全く違うものに仕立て上げたかったのです」。シルクのミニドレスにはトロンプルイユの3Dプリントを施し、ファインゲージのニットやフローラルのクロシェ編みワンピースに見立て、逆にヘビーゲージのニットドレスはウールの断片を格子やループ状など、ウールらしからぬ形に編んだ。そしてチュチュから着想されたスカートは、硬いレザーで作った。

「私はあまり小細工をせず、いろいろなものを削ぎ落として、核となる要素に焦点を当てることが好きなんです」とアンダーソンはコレクションを振り返った。「素材」というコンセプトのもと生み出した服ひとつとっても、「ガーリー」という形容詞ひとつとっても、彼は今回すべてをシンプルに表現したように思える。

ラストのミニドレスなど、いくつかのルックにはイギリスの美術批評家クライヴ・ベル著の論文の抜粋がシルクスクリーンプリントされていた。アートとデザインの本質を主題にする論文は、おそらくアンダーソンが思う、今のファッション業界が必要としているものを言い得ている。「白紙に戻して、やり直すという感じですね」。ジェイ ダブリュー アンダーソンのコレクションは、ファッションの再スタートを告げているようだった。

※ジェイ ダブリュー アンダーソン 2025年春夏コレクションをすべて見る。

Text: Laura Hawkins Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.CO.UK

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