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山田涼介の”本気の涙”にもらい泣き…『ビリオン×スクール』が学園ドラマの名作と呼べるワケ。最終話考察レビュー

  • 2024.9.17
『ビリオン×スクール』最終話 ©フジテレビ

山田涼介主演のドラマ『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)は、日本一の財閥系企業のトップである億万長者が、身分を隠して高校教師となり、生徒と様々な問題を通して成長する痛快・学園エンターテインメント。今回は、最終話のレビューをお届けする。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

『ビリオン×スクール』第11話 ©フジテレビ
『ビリオン×スクール』最終話 ©フジテレビ

9月13日(金)に最終回を迎えた山田涼介主演のドラマ『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)。これまで様々な名作学園ドラマのパロディが散りばめられていたが、本作もその仲間入りを果たしたことが実感される最終回だった。

転落事故に遭った際、生命維持のために脳の一部をAI化されていた加賀美零(山田涼介)。ティーチ(安達祐実)から衝撃の事実を明かされた加賀美は大きなショックを受ける。

さらにティーチは再びゼロ組に出現。そのことがきっかけで加賀美の実験が学校にバレ、理事長の辰巳寅二(正名僕蔵)が加賀美と芹沢一花(木南晴夏)、そして校長の東堂真紀子(水野美紀)に処分を命じる。

生徒の間でも動揺が広がり、まとまりかけたゼロ組はバラバラに。だが、紺野直斗(松田元太)の就職先が決まったことで、変化が起きる。実験台にされていたことはショックだったが、加賀美が真剣に自分たちと向き合ってくれていたことは事実。そのことに気づいた生徒たちは臨時集会で理事長に加賀美たちの処分取りやめを訴えかける。

『ビリオン×スクール』第11話 ©フジテレビ
『ビリオン×スクール』第11話 ©フジテレビ

加賀美から、西谷翔(水沢林太郎)は後悔しないように今を生きる大切さを、城島佑(奥野壮)は力の使い方や好きな人の守り方を教わった。梅野ひめ香(上坂樹里)は加賀美のおかげで自分で自分を守れるようになったし、紺野は自分らしくいられる場所を選び取れるようになった。東堂雪美(大原梓)はたった一つの過ちでその人の全てやその人を好きだった自分の感情まで否定する必要はないと加賀美に言ってもらった。

そんな一人ひとりの熱い思いにこれまで加賀美を厄介払いしようとしていた土橋淳平(永野宗典)や溝口信雄(坂口涼太郎)ら教師陣も胸を打たれ、真剣に生徒と向き合ってこなかったことを反省する。

その光景を見て改めて思うのは、学園ドラマは世相を映す鏡だということ。教師が生徒の悩みに向き合うというフォーマット自体は変わらないが、悩みの種類や教師のあり方は時代とともに変化していく。

本作でもパパ活やスクールカーストなどが題材として扱われたが、生徒が抱える問題はより多様で複雑化している。教師はそれに対応していく必要があるものの、生徒を叱ってはダメだの、踏み込み過ぎてはダメだのと色々と制限があり過ぎて八方塞がりの状態だ。かつ残業が多すぎる教師の働き方改革も問われている。

『ビリオン×スクール』第11話 ©フジテレビ
『ビリオン×スクール』最終話 ©フジテレビ

そんな状況下で生まれた教師・加賀美零は「すべてAIに任せてしまえばいい」という考えのもと、完璧なAI教師を作ろうとしていた。だけど、ティーチのアドバイスに従ったからといって上手くいくことばかりではなかった。問題解決のきっかけにはなったかもしれないが、最終的に生徒の心を動かしたのは加賀美の言葉や行動だ。

子どもは目の前にいる大人が上辺だけではなく、本当に自分と向き合おうとしているかをちゃんと見ている。それが、ゼロ組の生徒たちから加賀美が教わったことだ。そして、生徒たちと向き合う中で加賀美自身も人として成長していった。

赴任してきたばかりの頃、加賀美が「年齢も知識も能力も社会的立場も納税額も何もかも圧倒的に下だ」と生徒に自分から挨拶しようとしなかったことを覚えているだろうか。しかし、最後の授業で加賀美は「教え合うことに下も上もない。年齢も知識も能力も社会的立場も納税額も関係ない」と訂正する。

加賀美がAI教師開発のためにこの学園に潜入した結果、得たのは「完璧な教師などいない」という結論だった。誰もが教師であり、生徒であって、答えはみんなで導き出せばいい。何かと完璧であることが求められがちな現代で、加賀美が導き出した答えはシンプルなようで胸にグッと響く。

それは加賀美を演じる山田の演技に説得力があるからだろう。天才的な頭脳で革命的な開発をしてきたカリスマCEOとしての威厳と、自信家で子どもっぽい一面を同時に表現できたのは山田だからこそ。

かつ、加賀美が生徒と向き合う中でより人情味を帯びていく過程をグラデーションの演技で見せてくれた。最後の授業も愛に溢れており、生徒たちからは嗚咽まじりの泣き声が聞こえてくる。山田も涙を堪えきれない様子で、いずれも演技ではなくリアルな反応に見えた。

『ビリオン×スクール』第11話 ©フジテレビ
『ビリオン×スクール』第11話 ©フジテレビ

毎回、職員室のシーンで行われるアドリブ合戦でも山田が思わず吹き出す場面があったように、出演者たちが心から楽しんでいる様子が伺えた本作。わちゃわちゃとしたキャスト同士のやりとりは視聴者の心を和ませてくれた。

なお、最後の職員室では理事長となった真紀子が「文化祭に臨む教師の心構えとかけまして3ヶ月続いた連続ドラマの最終回と解きます。その心は?これにてクールは終わり」と締め括った。

また本作で抜群のコンビネーションを見せたのが山田と木南だ。ティーチが「加賀美くん、どんどん失敗しなさい」という言葉を残して消えた後、自身もまた加賀美から離れる決意をした芹沢。そんな芹沢を加賀美は迎えに行き、「君はずっと俺のそばで俺を支えろ。それが君のとるべき責任だ」と伝える。

まるでプロポーズのような言葉に感動したのもつかの間、「ずっとは嫌です。定年制にしてください」という芹沢の言葉で2人はいつも通りに。これで共演は3回目とあって息ぴったりの山田と木南はいがみ合っているようで、確かな絆を感じさせるやりとりを見せてくれた。

文化祭でゼロ組の生徒たちが加賀美たちの前でソーラン節を披露する場面も大きな見どころ。バラバラだった生徒たちが一致団結し、ソーラン節を踊るのが定番だった『3年B組金八先生』(TBS系)。

松田元太や上坂樹里をはじめ、生徒役の演技も光った本作もぜひシリーズ化し、新たな「若手俳優の登竜門」となってほしい。そしていつの日かまた、加賀美と芹沢が面白おかしく、時には熱く、生徒の問題と向き合う姿が見れることを願っている。

(文・苫とり子)

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