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娘と一緒にいられない哀しさを癒すのは… バツイチ・アラサー女性の唯一の贅沢『ランチ酒』

  • 2024.9.17

『ランチ酒』(高田サンコ:作画/KADOKAWA)は、バツイチのアラサー女性・犬森祥子の日常を描いた作品である。原作は原田ひ香さんの同名小説(祥伝社刊)だ。彼女の職業は「見守り屋」で、朝の5時までさまざまな依頼人から頼まれた人やペットなどを寝ずの番で見守るのが仕事だ。

さまざまな依頼人の見守りをする彼女にとって、唯一の贅沢は仕事上がりの「ランチ酒」。別れた夫のもとで暮らす愛娘の幸せを願いながら、最高の料理と酒に癒されるひとときが、祥子の心を満たしてくれる。

本作の見どころは、主人公・祥子の等身大の姿だ。娘と一緒にいられない哀しい夜を、依頼人から頼まれた目の前の人やペットに一生懸命尽くすことで、紛らわせている姿はとにかく切ない。一緒に過ごす依頼人の見守り相手もまた、さまざまな事情で家族と一緒に暮らせない心細い一夜を祥子と過ごすのだ。

そんな仕事終わりの「ランチ酒」は、祥子にとって特別な時間。ランチタイムという健全な時間帯に、お酒を飲む贅沢感はなんとも羨ましい。とにかく美味しそうなものを、その食事に合うお酒でモリモリ食べて飲む祥子の姿は気持ちがいいくらいだ。しかし、素晴らしい食べっぷりの裏に、仕事の疲れを癒すとともに、ちょっと切ない夜を忘れて、明日への活力を得る儀式のようなものを感じてしまう。

祥子の周りを取り巻く個性豊かな依頼人たちとの交流も、物語に奥行きを与えている。一人ひとりが何らかの事情を抱えながらも、祥子の仕事ぶりに助けられ、癒されていく。そんな彼らとの温かな関係が、読む者の心を和ませてくれる。

『ランチ酒』は、現代社会で懸命に生きるひとりの女性の姿を丁寧に描いた、心温まる物語だ。夜勤明けの「ランチ酒」という一風変わった設定を通して、日々の仕事に励む者を癒し、さまざまな形で家族を思う愛情の尊さを教えてくれる。

文=ネゴト / ニャム

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