1. トップ
  2. 恋愛
  3. 【ADHDになりにくい条件】子供のとき近所に樹木があることだった

【ADHDになりにくい条件】子供のとき近所に樹木があることだった

  • 2024.9.17
Credit:canva

木々の中で遊ばせると、子供がADHDになりにくくなるかもしれません。

ポーランド・ヤギェウォ大学(UJ)は新たな研究で、樹木の多い地域に住んでいる子供は、樹木の少ない地域の子供に比べて、ADHDの有病率が低くなっていることを発見しました。

研究者によると、樹木の豊かな地域では子供がより身体的に活発になっていたという。

そうした運動量の多さが子供の正常な神経発達を促進して、ADHDの発症予防につながっていた可能性が高いとのことです。

研究の詳細は2024年5月4日付で学術誌『Journal of Environmental Psychology』に掲載されています。

目次

  • 緑地がADHDの発症を防ぐ?
  • 草地じゃなくて「樹木」がADHDの発症を防いでいた⁈

緑地がADHDの発症を防ぐ?

ADHD(注意欠如・多動症)は「不注意」「多動性」「衝動性」の3つを特徴とする発達障害です。

ADHDと診断されるケースの多くは12歳以前の子供であり、世界中の5〜7%の小児がADHDに罹患しているとされています。

ADHDを持つ子供たちは注意散漫になったり、落ち着きがなくなったり、思い立つとすぐに行動してしまったりと、周囲との協調性がなくなり、円滑な社会生活を営むことが困難になります。

Credit:canva

研究チームはこれまで、ADHDに関連する遺伝的要因や環境因子を調査し、ADHDの発症を予防する方法を模索してきました。

その中で過去の多くの研究から、緑地(自然環境)との接触がストレスを軽減し、認知機能を高めることで、神経発達に有益な作用をもたらす可能性があることを見出しています。

その一方で、緑地との接触が実際に子供のADHDの発症予防に寄与するのかどうかは依然として不明でした。

そこでチームは今回、自宅周辺の緑地の多さが子供のADHDとどのような関係性を持っているかを調べることにしました。

草地じゃなくて「樹木」がADHDの発症を防いでいた⁈

本調査は2020年10月〜2022年9月の間に南ポーランド在住の10歳〜13歳の子供689名を対象に行われました。

これらの子供は70.5%が心身ともに健康なグループ、29.5%がADHDを持っているグループに分けられています。

健康な子供は地域の学校から無作為に選ばれ、ADHDの子供は心理学者、医師、親を通して集められました。

調査では経験豊富な臨床心理士によって、子供のたちのメンタルヘルス、記憶力、注意力、実行機能などが徹底的に評価されています。

また保護者の協力のもと、子供の生活習慣や身体活動レベル、近隣の緑地環境について回答してもらいました。

緑地環境に関しては、自宅から半径500メートル以内に樹木や草地などがどれくらいあるかを評価しています。

Credit:canva

これらのデータを総合的に分析した結果、近隣の緑地環境とADHDの有病率との間に直接的な関連性は見出されませんでした。

自宅近くに緑地がたくさんあるからといって、必ずしも子供のADHDの発症リスク低下にはつながっていなかったのです。

ところがチームはある重要な傾向を発見しました。

それは自宅近くの「樹木」面積が多いと、子供の身体活動レベルが有意に上昇しており、それがADHDの発症リスクの低下につながっている証拠を見出したのです。

興味深いことに、草地面積の多さはADHD有病率の低下と関係しておらず、子供のADHDを防ぐ効果はないことが示されました。

これについて研究者らは、平面的で背も低い草地は子供のたちの身体活動を促進しづらいことが関係していると指摘。

対照的に木々に覆われた場所は、例えば木登りであったり、ぶら下がりであったり、虫捕りやかくれんぼ、障害物の回避など、草地よりも遥かに強度の高い身体活動を促します。

これが子供たちの身体活動レベルを高めて、脳の有益な神経発達を促し、ADHDの発症予防につながった可能性があると説明しました。

都市設計に「樹木」を取り入れるべき

この結果を受けて、研究者は次のようにまとめています。

「私たちの発見は緑地、それも特に樹木環境への暴露ADHD発症率の低下との関連性を示しており、その2つは身体活動の上昇によって媒介されています。

要するに、身体活動を高める自然環境へのアクセスは子供たちの正常な神経発達を手助けする可能性があるのです。

したがって都市設計者は、特に運動不足になりやすい都市部の子供たちの精神衛生を守るためにも、街づくりにおける樹木環境の導入を積極的に推し進めるべきでしょう」

Credit:canva

その一方でチームは次のステップとして、樹木環境へのアクセスが神経発達に与える長期的な影響を明らかにしたいと考えています。

今回の調査は、ある時点での子供たちの健康をスナップショット的に捉えた横断的なものであり、それぞれの子供たちを長期的に追跡した縦断的なものではありません。

そのため、樹木環境との触れ合いとADHD予防との関連性をより明確にするには、子供たちを経時的に追跡して、樹木環境の近くでの生活が認知や行動の発達にどのように作用するかを調べる必要があるといいます。

これと別に、近年では成人後にADHDと診断されるケースが増えており、大人もADHDとまったく無縁ではありません。

そこで樹木環境での活動が大人のADHD予防に効果があるのかも明らかにする必要があるでしょう。

参考文献

Tree-covered neighborhoods linked to lower ADHD risk in children
https://www.psypost.org/tree-covered-neighborhoods-linked-to-lower-adhd-risk-in-children/

元論文

Lifelong greenspace exposure and ADHD in Polish children: Role of physical activity and perceived neighbourhood characteristics
https://doi.org/10.1016/j.jenvp.2024.102313

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる