コントロール不能に陥った飲酒量。「依存症」の親と暮らす子どもの不安定すぎる日々

厚生労働省が発行する広報誌『厚生労働』の2019年5月号によれば、ギャンブル依存症が疑われる人は約70万人、アルコール依存症の潜在的な患者数は約57万人と、非常の多くの患者が存在します。しかし依存症による言動や周囲に及ぼす影響といった実情を、当事者以外が知ることはあまり多くないかもしれません。

今回は、家族の視点から見た「依存症」の母親によって、家庭が崩壊の危機に陥ってしまうケースをご紹介します。

父と母、ミユキさんとヒロトくんの4人家族で暮らす金本家。母はお酒に酔うと性格が一変し、家事や育児を放棄。子どもの宿題にまで落書きをするなどの異常行動を起こしていました。そんな母に父はきちんと向き合うことをせず、夫婦喧嘩は日常茶飯事。ヒロトくんはそんな両親の姿に怯え、ミユキさんがなだめるという日々が続いていました。「お酒を飲んでいない母は優しいのに、どうして？」まだ子どもながら必死に両親との関係を保とうともがくミユキさんでしたが…。

※『手袋を買いに』新美南吉（『新美南吉童話集』岩波文庫）より引用

※『手袋を買いに』新美南吉（『新美南吉童話集』岩波文庫）より引用

子どもたちの心に深刻なダメージを与える親の依存症。子どもらしく暮らす日常を脅かされ、生活に希望を見出せず、将来を悲観してしまう場合も少なくありません。

本人の意思だけでは回復できない「依存症」という困難。

当事者とその家族の日常に及ぼす影響がいかに深刻なものか、改めて考えさせられるエピソードです。

※本記事は三森 みさ著、今成 知美、松本 俊彦監修の書籍『母のお酒をやめさせたい』から一部抜粋・編集しました。

著＝三森 みさ、監修＝今成 知美、松本 俊彦／『母のお酒をやめさせたい』