1. トップ
  2. 「イシナガキクエ」大森時生が『悪魔と夜ふかし』試写会に登壇!「新しいファウンド・フッテージ作品になっています」

「イシナガキクエ」大森時生が『悪魔と夜ふかし』試写会に登壇!「新しいファウンド・フッテージ作品になっています」

  • 2024.9.15

テレビ番組の生放送中に起きた奇怪な現象を“ファウンド・フッテージ”のスタイルで描きだした、オーストラリア発のホラー映画『悪魔と夜ふかし』(10月4日公開)。本作のPRESS HORROR試写会が9月13日に都内で行なわれ、上映後のトークショーにこの夏大きな話題を集めた展覧会「行方不明展」をはじめ、「テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?」や「TXQ FICTION イシナガキクエを探しています」などを手掛けたテレビ東京の大森時生プロデューサーが登壇した。

【写真を見る】1977年のハロウィン、深夜の生放送番組でなにが起きたのか…

【写真を見る】1977年のハロウィン、深夜の生放送番組でなにが起きたのか… [c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
【写真を見る】1977年のハロウィン、深夜の生放送番組でなにが起きたのか… [c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

本作で映し出されるのは、深夜のテレビ番組「ナイト・オウルズ」の封印されたマスターテープ。1977年のハロウィンの夜、司会者のジャック・デルロイ(デヴィッド・ダストマルチャン)は生放送でのオカルトライブショーで人気低迷を挽回しようとしていた。番組内では霊聴やポルターガイスト、悪魔祓いなど、怪しげな超常現象が次々と披露され、視聴率は過去最高を記録。ところが番組がクライマックスを迎えた時、思いも寄らない惨劇が巻き起こることに…。

今年3月に北米で公開されると、初週末の興行収入ランキングでトップテン入りを果たし、累計興収1000万ドルを突破するスマッシュヒットを果たした本作。『エクソシスト』(73)をはじめとした1970年代から1980年代にかけての名作へのオマージュを織り交ぜたレトロかつリアルな映像表現が大きな話題を呼び、批評集積サイト「ロッテン・トマト」では批評家からの好意的評価の割合は97%と高評価を獲得。ホラー界の巨匠であるスティーヴン・キングも絶賛のコメントを寄せた。

「従来のファウンド・フッテージとは逆転している」

大森が語る、ファウンド・フッテージの魅力と弱点とは?聞き役を務めたのは、PRESS HORROR編集長の西川亮
大森が語る、ファウンド・フッテージの魅力と弱点とは?聞き役を務めたのは、PRESS HORROR編集長の西川亮

これまで数々の“ファウンド・フッテージ”やフェイクドキュメンタリー作品を手掛けてきた大森は、まさにいまブームとなっているこのジャンルの第一人者の一人。「ホラー映画は観終わったら、終結したという感覚になるけれど、フェイクドキュメンタリーの場合はそれがない。現実世界と地続きに感じられ、観終わった後も終わっていない感覚が残り、フィクションとして現実と虚構の境の薄靄のなかに居続けることで、観終わった時にふと不安な気持ちになるのが好きなところです」と、このジャンルの魅力を熱っぽく語る。

司会を務めたPRESS HORRORの西川亮編集長から、本作について感想を求められると、「率直にめちゃくちゃおもしろい。ちゃんと観客を隙間なく楽しませようとする感覚のある映画だと思いました」と絶賛。さらに「ホラー映画では、ファウンド・フッテージの手法を取り入れたとしても、それはフェイクドキュメンタリーじゃなく、完成された一本の劇映画として作られます」と、近年大きな話題をさらった台湾の『呪詛』(Netflixにて配信中)を例に挙げて、一つの大きなフィクションの物語のなかにファウンド・フッテージが差し込まれることで、没入感を高める役割を果たすことが多いと説明。

本編の大部分が“発掘されたマスターテープ”…テレビ局の強みが活かされたファウンド・フッテージに [c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
本編の大部分が“発掘されたマスターテープ”…テレビ局の強みが活かされたファウンド・フッテージに [c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

「ですが、『悪魔と夜ふかし』はその点が逆なのが特徴的」と、これまでにないファウンド・フッテージ作品であることを強調し、「ファウンド・フッテージが映画の8割から9割を占めていて、それ以外のCMの時間やラストの物語が、従来のファウンド・フッテージのような立ち位置で差し込まれた構成になっている。このように逆転している構図は意外と観たことがなく、とても新しいです」と唸る。

「監視カメラやスマホなどでたまたま撮られていた映像は、点としての迫力があるけど、さすがに30分は見られない。それがファウンド・フッテージの弱点です。でもテレビ局にある素材は、誰かを楽しませるために作られ編集された状況で保存されているということがあり得る。それを倉庫で見つけた、という手法でファウンド・フッテージとして作ることができるのはテレビ局ならではあり、『このテープもってないですか?』はまさにその手法で作りました。それをさらに極めたものが、この『悪魔と夜ふかし』だといえるでしょう」。

「本当におもしろいと感じたものを届けようとしている」

実際にテレビの制作現場で働くテレビマンとして、“テレビ番組のスタジオ”で起こる怪異をどのように見たのだろうか。大森は「やっぱり視聴率は気になるし、テレビのおもしろさは“なにがなんでも放送することを止めないこと”だと思っています。だからなにか事件が起こっても撮りつづけるし、ショーは止まらないんだという要素がこの映画のなかにはよく出ていました」と、現場の描写のリアリティに太鼓判。

主人公である司会者ジャック・デルロイを演じたのは『ブギーマン』のデヴィッド・ダストマルチャン [c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
主人公である司会者ジャック・デルロイを演じたのは『ブギーマン』のデヴィッド・ダストマルチャン [c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

「司会者のジャックの、危険をおかしてでも視聴率をとるんだという迫力はとてもおもしろかったです。主人公だけど“信頼できない語り手”になっていて、ジャックが不都合な真実を隠して進行したり、悪魔を利用したり、テレビがムーブメントを起こすために暴力的になっている。そうしたテレビ自体への皮肉が込められている点にも興味をそそられました」とテレビマンならではの視点で本作の魅力を語っていく。

さらにジャックをはじめ、劇中には様々な強烈な個性を放つ登場人物が登場するが、そのなかでも大森が魅了されたのは悪魔憑きの少女リリーだという。「彼女が出てきた時の迫力に心を掴まれたし、悪魔に取り憑かれてパニックを引き起こすことに納得感のある、なかなかいないタイプの女の子だと思いました。CM中にメイクを直してもらっている時に『私可愛い?』と確認するところも子どもらしい怖さがあって、不穏で不気味でおもしろい。あんな完璧な子どもがいるフェイクドキュメンタリーをやってみたい」と自身の作品にも出演してほしいと熱望した。

悪魔に取り憑かれた少女の登場が、惨劇の引き金に… [c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
悪魔に取り憑かれた少女の登場が、惨劇の引き金に… [c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

最後に大森は「エンタテインメントとしてちゃんと楽しんでもらいたいという気持ちが全面に出ているホラー映画で、絶え間なくおもしろいことが起こるし、アメリカのホラーの影響を受けずに既存の文脈から解き放たれ、監督が本当におもしろいと感じたものを届けようとしている作品。ホラーが苦手な人も観られるのではないかと思います」とアピール。

「自分もテレビならではの迫力をフィクションに昇華できたらと思いました」と、同ジャンルの作り手としてもテレビマンとしても、ファウンド・フッテージの新たな可能性を見出した本作から大きな刺激を受けたことを明かしていた。

文/久保田 和馬

元記事で読む
の記事をもっとみる