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ダイアナ元妃から見たロンドンのファッションシーン──おしゃれを愛した国民のプリンセスのモードスタイル

  • 2024.9.15
1985年3月、ランカスターハウスで開催されたロンドン・ファッションウィークのローンチイベントにて。
PRINCESS DIANA ATTENDING A PARTY TO LAUNCH BRITISH FASHION WEEK IN LONDON, BRITAIN 19941985年3月、ランカスターハウスで開催されたロンドン・ファッションウィークのローンチイベントにて。

作品を通して社会に貢献した新進デザイナーたちに贈られる「英国デザイン クイーン エリザベスII アワード」が設立されるずっと前から、ダイアナ元妃の姿はロンドン・ファッションウィークのフロントローにあった。王室入りをし、世間の注目を浴びるようになると着用する服のスタイルも羊柄のセーターからヴェルサーチェVERSACE)のスリーブレスドレスへとアップグレードしていったが、内気なことで有名な元保育士の彼女は、ショーでは決して周囲の関心を自分に向けさせようとはしなかった。席は特別仕様ではなく、ほかの来場者たちと同じ。会場に駆けつけたパパラッチにスナップ写真を撮ってもらうという発想も彼女にはなかった。売名行為などではなく、純粋に興味があるからショーに赴いている。控えめな佇まいのダイアナ元妃からはそう伝わってきた。

ロンドン・ファッションウィークが発足された1年後の1985年3月、ランカスターハウスでは同ファッションウィークのローンチイベントが行われ、ダイアナ元妃も足を運んだ。このように彼女が招待に応じ、興味を示した(ファッション)イベントは彼女自身の人柄を物語っている。

反骨精神を持ち合わせていたダイアナ元妃は、1984年、核ミサイルに抗議するメッセージがプリントされたTシャツを着て首相官邸パーティーに参加したキャサリン・ハムネット(KATHERINE HAMNETT)のことを耳にしていただろうし、設立間もない英国ファッション協会が後押しし、急速にシーンでの存在感を増していた反抗心あふれるファッションデザイナーたちに興味をそそられていたことだろう。ロンドンのブティック「ブラウンズ」の創設者ジョアン・バースタインによって見出された若き天才、ジョン・ガリアーノJOHN GALLIANO)が生み出す作品も、自由な感性でファッションを楽しんだダイアナ元妃の琴線におそらく触れただろう。そしてダンス好きの彼女は、あらゆる年齢、サイズ、性別を讃えるオルタナティブ系ファッションブランド、ボディマップ(BODYMAP)のデザインもさぞ気に入ったに違いない。

1985年、ベルヴィル・サスーンのガウンを纏ってロンドン・ファッションウィークのレセプションパーティーに参加したダイアナ元妃。
1985年、ベルヴィル・サスーンのガウンを纏ってロンドン・ファッションウィークのレセプションパーティーに参加したダイアナ元妃。

初めてのロンドン・ファッションウィークにダイアナ元妃が纏ったのは、ベルヴィル・サスーン(BELLVILLE SASSOON)によるシルクのドレッシングガウン風ドレスだった。彼女のスタイリストを務めていたアンナ・ハーヴィ曰く「服に目を輝かせていたダイアナ妃」は90年代になるとファッションの突破口を開き、シャネルCHANEL)のタイムレスなスカートスーツや友人のジャンニ・ヴェルサーチェが手がけるスポーティなドレスをベースにした自身のスタイルに磨きをかけていった。

愛用するものはお気に入りにのデザイナー、ブルース・オールドフィールド(BRUCE OLDFIELD)のピースからよりすっきりとしたフォルムのアイテムになり、ローラ アシュレイLAURA ASHLEY)のブラウスを着用していた嫁ぎたての頃の彼女の面影はなくなった。伝統的なイギリスのドレスコードを覆すデザイナーたちに興味を持ち始めていたこの頃のダイアナ元妃は、気鋭のデザイナーたちに王室の伝統を破ることを臆しない自分を重ね合わせていたのかもしれない。そんな彼女は1995年にジョー ケイスリー ヘイフォード(JOE CASELY-HAYFORD)のショーに出席し、ファッションショーを初めてライブで鑑賞した。サヴィル・ロウのテーラリングにひねりを効かせたケイスリー・ヘイフォードの先鋭的なデザインに身を包むダイアナ元妃をぜひ見たかったものだ。

エルヴィス・プレスリーの衣装に似ていることから“エルヴィス”ドレスと名付けられた1着。
Diana British Fashion Awardsエルヴィス・プレスリーの衣装に似ていることから“エルヴィス”ドレスと名付けられた1着。

1989年のブリティッシュ・ファッション・アワードにキャサリン・ウォーカーCATHERINE WALKER)のドラマティックな“エルヴィス”ドレスで出席したダイアナ元妃は、服は自分を効果的に演出する方法だと知っていた。式典やプレゼンテーションでテープカットを行うときはマノロ・ブラニクMANOLO BLAHNIK)のシューズディオールDIOR)の「レディ ディオール」バッグ、丁寧にブローされたヘアと決まって清楚な出立ちだったが、メットガラMET GALA)にはガリアーノによるランジェリードレスを着て参加した。悲劇的な運命を辿ることがなければ、彼女自身もファッションシーンにおける次世代の才能を育てる取り組みを発足していたことだろう。

Text: Alice Newbold Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.CO.UK

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