1. トップ
  2. レシピ
  3. 「ウサギ一羽に1千万円!?」明治時代に起きた謎のウサギバブルについて

「ウサギ一羽に1千万円!?」明治時代に起きた謎のウサギバブルについて

  • 2024.9.15
Credit:canva

ウサギは日本でも人気のペットであり、犬や猫ほどとまではいかなくても多くの人が飼っています。

そんなウサギですが、明治時代の初頭にはものすごい人気を博しており、投資目的で飼育している人さえいました。

果たして明治初頭のウサギバブルではどのようなことが起こったのでしょうか?

またウサギバブルの後のウサギはどのような扱いを受けたのでしょうか?

本記事では明治初頭のウサギバブルの狂騒について紹介しつつ、そのバブルの末路について取り上げていきます。

なおこの研究は、東京大学大学院教育学研究科紀要51巻p.363-375に詳細が書かれています。

目次

  • ウサギ一羽に1千万円以上の価値がついた明治時代
  • ブームが終わるとゴミのように扱われたウサギ

ウサギ一羽に1千万円以上の価値がついた明治時代

カイウサギ、なお画像のネザーランド・ドワーフは20世紀初頭にオランダで生みだされており明治時代にはいなかった
カイウサギ、なお画像のネザーランド・ドワーフは20世紀初頭にオランダで生みだされており明治時代にはいなかった / credit:wikipedia

日本におけるウサギの飼育は、戦国時代に貿易にきたオランダ人がペットとして飼育するようになったのが由来であるとされています。

やがて江戸時代に入ると、ウサギの飼育はある程度広まっていきました。

しかしウサギは高価だったこともあり、飼育していたのはもっぱら裕福な商人だったのです。

なおその時飼育されていたのはアナウサギを改良したウサギであり、現在世界中で広く飼われているカイウサギの先祖です。

日本の里山には当時からノウサギが生息していたものの、ノウサギがペットとして飼われることはありませんでした。

やがて明治時代に入り文明開化の流れが進むと、外国文化が流行したこともあり、ウサギブームが巻き起こりました。

特にまだら模様のウサギが人気を博したとのことであり、オスは15両(現在の価値で30万円、1両2万円で換算)、メスは60両(現在の価値で120万円)、妊娠したウサギは80両(現在の価値で160万円)の価格で取引されていました。

なお現在のペットショップでのウサギの価格は雑種が5000〜1万円、純血種が3万~10万円ほどであり、いかに当時ウサギが高価なものであったのかが窺えます。

また中には600円(現在の価値で1200万円)の価値がついたウサギもあり、この件は新聞で大々的に取り上げられました。

※同時代でありながら両と円の2つの単位が混在しているのは1871年(明治4年)に両から円の切り替えが行われたためであり、その時の切り替え相場は1両=1円でした。

このようなウサギブームの中では悪徳業者も増えていき、白いウサギに塗料を塗ってオレンジ色にして売るものなどが現れたりしました。

また中にはウサギの売買によるトラブルによって、命を落としてしまう人も出てきたのです。

当時の新聞には、「自分が飼っていたウサギを売ろうと思ったが父親に「ウサギの値段が安すぎる」と反対され、その直後にウサギが突然死したため親子喧嘩になり、父親を庭に突飛ばしたら当たり所が悪くてそのまま死んでしまった」という事件が紹介されています。

さらには「イギリス人が輸入した耳の長さ一尺二寸(36センチメートル)浅黄さらさ毛にして目方二貫七百匁(10キログラム)のウサギを、自分の娘を身売りして種銭を作ってまで買おうとしたものがいた」という記事もあり、ウサギの売買で一儲けするために人倫に反する行いをしたものが決して少なくはなかったことが窺えます。

そのような風潮に対して世間はかなり批判的であり、新聞にて「ウサギの値段の高騰は悪い商人が好事家を騙して暴利を貪っているものだ」という声が挙がりさえしました。

政府もそれを受けてウサギ売買の取り締まりを行おうとしたものの、華族から一般庶民まで揃いも揃ってウサギの飼育と売買に熱中していたこともあり、取り締まりにあまり効果は見られなかったのです。

ブームが終わるとゴミのように扱われたウサギ

ウサギバブルが弾けたことにより、商人たちは大きな損害を被った
ウサギバブルが弾けたことにより、商人たちは大きな損害を被った / credit:いらすとや

しかしこの空前のウサギブームは思わぬ形で終わりを迎えます。

1873年(明治6年)12月東京府は、ウサギの売買をするものは役所に届け出をすること、ウサギを飼育する者は1羽あたり毎月1円(現在の価値で2万円)の税金を払うこと、届け出なしでウサギの売買を行ったものは1羽あたり2円(現在の価値で4万円)の罰金を徴収すること、という通達を出しました。

これによりウサギの価格は大暴落し、子ウサギは2銭(現在の価値で400円、なお100銭=1円である),妊娠したウサギは5銭(現在の価値で1000円)という超安値で叩き売られることとなったのです。

それを受けウサギの売買を行っていたものは大打撃を受け、ウサギ税のない地方へと逃げるものウサギを床下に隠して税金を逃れようとするものなどが相次ぎました。

もちろんそれにより没落する人も数多く、年末の東京は大混乱に陥ったのです。

大量に飼われていたウサギは超安価にて売り払われましたが、中には処分に困った商人により殺されたり川に流されたりするウサギも少なくありませんでした。

なおウサギ税の話は事前に一部の華族や士族には流れており、彼らは布告の前にウサギを売りぬくことによって暴落を免れました。

もちろんこれはれっきとしたインサイダー取引であり、現代では厳しく禁じられていますが、当時はまだ法律が整備されていなかったこともあり、特に問題にはならなかったのです。

このような投機ブームは歴史上何度も起こっており、そのほとんどが破滅的な結末を迎えていますが、明治初頭のウサギブームは投機対象が動物であったということもあり、他の投機ブームと比べて悲惨な末路になったと感じる次第です。

参考文献

明治初期の兎投機 : 「開化物」とメディアから見えてくるもの
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/31144

ライター

華盛頓: 華盛頓(はなもりとみ)です。大学では経済史や経済地理学、政治経済学などについて学んできました。本サイトでは歴史系を中心に執筆していきます。趣味は旅行全般で、神社仏閣から景勝地、博物館などを中心に観光するのが好きです。

編集者

華盛頓: 華盛頓(はなもりとみ)です。大学では経済史や経済地理学、政治経済学などについて学んできました。本サイトでは歴史系を中心に執筆していきます。趣味は旅行全般で、神社仏閣から景勝地、博物館などを中心に観光するのが好きです。

元記事で読む
の記事をもっとみる