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ADHDは使わない物を積み上げる「買いだめ障害」を発症しやすいと判明!

  • 2024.9.14
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

AHDHと溜め込み癖は関係しているようです。

英国アングリア・ラスキン大学(ARU)で2022年に行われた研究によれば、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の人は、普通の人と比べて所有物を蓄積する傾向が大幅に高いことが判明した、とのこと。

どうやら自分の使用限度を超えて物品を溜め込む背景にはADHDなどの脳機能障害が潜んでいるようです。

研究内容の詳細は2022年1月の『Journal of Psychiatric Research』にて掲載されています。

目次

  • 使わない物を積み上げる「買いだめ障害」
  • 買いだめ障害とADHDの関連

使わない物を積み上げる「買いだめ障害」

物がなかなか捨てられずに片付けが進まないという経験は、多くの人々が共有するものとなっています。

遊園地の半券や苦労して手に入れた商品の箱など、他人にとっては価値がないものでも、思い入れや当時の記憶を懐かしんで「自分にとっては大切なモノ」と保管しておく人は珍しくありません。

また、お気に入りの本や漫画を2冊以上購入し1冊は「保管用」として読まずに保管する人もいるでしょう。

あるいは、プレイするアテのないゲームでもとりあえず「所有」したいとの思いから、何作品も積みゲーにしている人も多いはずです。

しかし一部の人々は、それら保管や所有を自らの限界を超えて続けてしまうことが知られており、医学的に「買いだめ障害」と認識されることがあります。

買いだめ障害が深刻化すると多くの場合、家がゴミ屋敷のように物品で覆われてしまいます。

また買いだめ障害の対象が本やゲームではなく猫などの生き物になってしまうと「多頭飼育崩壊」を引き起こし、最終的に殺処分などの悲劇を招いたケースも報告されています。

そこで、アングリア・ラスキン大学の研究者たちは「買いだめ障害」の背後に潜む精神病理を解明することにしました。

買いだめ障害とADHDの関連

特に研究者たちが着目したのはADHD(注意欠陥・多動性障害)との関係です。

買いだめ障害は以前、強迫観念が原因で発生すると考えられていましたが、研究者たちが患者たちのデータを分析すると、不思議なほどADHDを併発しているケースが多くみられたからです。

そのため研究者たちは新たに「買いだめ障害」とADHDの関係を調べるための調査を行うことにしました。

調査にあたってはADHDの患者と一般の参加者とをつのり「買いだめ」の傾向がどれだけ強いかを測定しました。

結果、普通の人々のなかで「買いだめ障害」を発症している割合が2%に過ぎないのに対して、ADHDの患者では発症率が20%に及ぶことが発見されます。

またADHDの主な症状である不注意レベルが「買いだめ障害」の重症度と一致していることも明らかになりました。

この結果は、ADHDの人々は通常の人々に比べて「買いだめ障害」を発生させやすいことを示します。

研究者たちはADHD患者にみられる報酬系の異常が、物品の異常な所有に連動している可能性があると推測しています。

ADHDの世界的な有病率は3.4%と報告されており、決して珍しい症状ではありません。

もし本やゲームなどを、使用する目途がたたなほど大量に所有しているのならば一度、ADHDの診察を受けてみるのもいいでしょう。

※この記事は2022年3月公開のものを再掲載しています。

参考文献

ADHD Linked to ‘Significantly Higher’ Risk of Hoarding, New Study Finds
https://www.sciencealert.com/adhd-is-linked-to-significantly-higher-risk-of-hoarding-new-study-finds

元論文

Elevated levels of hoarding in ADHD: A special link with inattention
https://doi.org/10.1016/j.jpsychires.2021.12.024

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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