「すだち」の由来は?
夏から秋に出回る柑橘(かんきつ)の代表格が、すだち。果実に含まれる酸っぱい果汁を食酢として使用されていたことから「酢橘(すだちばな)」と呼ばれ、やがて省略されて「酢橘(すだち)」の名になったとか。爽やかな酸味には、疲労回復に効果的なクエン酸やビタミンCが豊富に含まれています。
すだちに含まれるビタミンCはレモン並みに多い
すだちは、ゆずの近縁種とされ、上品で風味の良い香りと酸味が特徴です。未熟な青い果実を食用に使うことが多く、焼き魚や松茸の風味づけとして絞り汁をかけたり、果皮が薬味として添えられたりしています。すだち100gの果汁には、レモンと肩を並べるくらいのビタミンCが含まれ、摂り過ぎた塩分の排出を促すカリウムや、骨や歯の健康を支えるにカルシウムなどのミネラルはレモンよりも多く含まれています。
すだちとレモンの栄養比較
●すだちとレモンの栄養比較
焼き魚にすだちが添えられている理由
飲食店などで出てくる焼き魚には、すだちやレモンなどの柑橘(かんきつ)類が添えられていることが多いですよね。実は、理由がいくつかあります。
●魚の脂っこさや魚臭さをやわらげ、さっぱりと食べられる。●魚に含まれる鉄や亜鉛は、ビタミンCと一緒に摂ると吸収効率が高まる。●たんぱく(魚)×ビタミンC(すだち)の組み合わせがコラーゲン合成を促す。●醤油の代わりに果汁を絞って魚に回しかけることで、塩分を抑えられる。
魚の臭みの原因物質トリメチルアミンはアルカリ性のため、柑橘類のクエン酸によって中和され、臭みがやわらぎます。また、ビタミンC豊富な柑橘類と一緒にいただくことで、魚に含まれるたんぱく質やミネラルを効率よく吸収できる相乗効果も。さらに、酸っぱさと香りのアクセントで減塩効果も期待できるというわけです。昔ながらの和食の組み合わせですが、本当に奥深いですね。
すだちの果皮にはカロテンやポリフェノールのスダチチンが!
また、レモンにはない特徴が濃い緑色の果皮に含まれる栄養成分。とりわけ、体内でビタミンAに変換されるβ(ベータ)-カロテンが果皮100gあたり520μg(マイクログラム)と豊富に含まれています(※1)。さらに、果皮にはスダチチンと呼ばれるポリフェノールの一種が含まれ、脂質の代謝を改善して中性脂肪の蓄積を抑える働きについて研究が進んでいます。
すだちの果皮は比較的やわらかく、見た目も涼しげな「すだちそば」のように、皮ごとスライスして生のまま食べられる特徴がありますので、活用したいもの。次回は「すだち」の活用レシピをいくつかご紹介ますので、参考にしていただけたら幸いです。
※参考文献:杉田浩一ほか監修『新版 日本食品大事典』医歯薬出版株式会社,2017、池上文雄ほか監修『からだのための食材大全』NHK出版,2019、三輪正幸監修『からだにおいしい フルーツの便利帳』高橋書店,2015
(野村ゆき)