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大人にこそ見てほしい「プリキュア映画」をランキングにしてみた。映画『わんぷり』と併せて見てほしい

  • 2024.9.30

2024年9月13日より『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー! ドキドキ・ゲームの世界で大冒険!』が劇場公開されます。

その公開を記念して、甥っ子、姪っ子と一緒に見ているうちに、この2年ほどですっかり『プリキュア』にハマってしまった筆者が、(昨年公開の『プリキュアオールスターズF』を殿堂入りとしつつ)独断と偏見によるプリキュア映画のベスト5を紹介しましょう。『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』は大人の映画ファンにとってもよく名作が語られますが、今回の『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!』も含めて33作にもおよぶ映画『プリキュア』シリーズにも、大人がうなる、いや涙がこぼれる感動的な作品があることを、ぜひ知ってほしいのです。なお、いずれもテレビシリーズを見ていなくても問題なく楽しめますよ。

5位:『ハピネスチャージプリキュア! 人形の国のバレリーナ』(2014年)

人形たちの王国でさらわれたバレリーナの少女を救うために戦う物語。かわいいキャラクターやアクションの作画などストレートにクオリティーの高さを感じられる作品ながら、明かされる「悲しい秘密」が子ども向けとしてもかなりヘビーなことに驚かされる内容です。

「戦っても解決できないことがある」「優しさが人を傷つけてしまうこともある」事実、さらに「不幸」に対する残酷なまでの本質を突きつけながら、「それでも」提示される希望に満ちたストレートなメッセージは、大人にこそ突き刺さるのではないでしょうか。

プリキュアシリーズは作品それぞれでテーマ(モチーフ)があり、「ハピネスチャージ」のタイトルが示すように「幸せ」を、さらには主人公の「キュアラブリー」の「愛」を、改めて問い直すように、欺瞞(ぎまん)を許さない形で映画で示したことに、作り手の誠実さをはっきりと感じることができました。

4位:『ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』(2010年)

舞台は、「満月の夜にオオカミ男が現れる」といううわさが流れるフランス・パリ。プリキュアたちが傷だらけの少年の助けになるために奮闘するも、その少年の「父親」のような敵との愛憎入り乱れる関係が描かれる内容です。

こちらもダイナミックなアクションのクオリティーがとんでもなく、冒頭から映し出される広大なパリの街並みから圧倒されるでしょう、故・藤原啓治と大谷育江というベテラン声優陣が史上最高の演技を見せており、クライマックスの「構図」にも鳥肌が立つほどの感動がありました。

ただ、本作は大人からの絶賛の声が多い一方、雰囲気がかなりダークかつシリアスだったこともあり、公開当時から小さなお子さんにはあまり受けが良くなかったそうです。筆者の3歳の姪っ子も楽しくなかったようで、途中で見るのをやめてしまいました。しかし、そうした作風を受け入れられる、作品の奥深さを感じ取ることができる人はたくさんいると信じています。

ちなみに、辻村深月の小説『ハケンアニメ!』(マガジンハウス)の主人公の1人である女性監督は、本作で監督を務めた松本理恵をモデルにしているのだとか。松本監督は、ゲーム『ポケットモンスター』とバンド「BUMP OF CHICKEN」によるスペシャルMV『GOTCHA!』を2020年に手掛けており、こちらも絶賛されているので、さらなる活躍に期待したいです。

3位:『ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス』(2013年)

いつかウェディングドレスを着るという未来にときめくも、過去の世界にとらわれてしまうという物語です。主人公の亡き祖母と愛犬の話を主軸にしつつ、それぞれのエピソードから「過去に起こったことは変えられない」「未来に向かうことを恐れない」ことを示すメッセージは、大人こそが希望を得られるのではないでしょうか。

過去と未来を交錯する作劇はかなり手が込んでいますし、ラストに明かされる秘密を知ってから物語を振り返れば、伏線が周到に込められていることもより分かりますし、もう一度見てみたくもなるでしょう。冒頭のガールズトークからもキャラクターそれぞれの特徴を示すのも巧みで、空間を意識したアクションシーンの躍動感と迫力も極まっており、『プリキュア』の魅力を存分に感じさせる内容にもなっています。

そして、子ども向けの『プリキュア』としては禁じ手ともいえる「流血」の場面があります。安易にショックを与えるものではなく、物理的にも精神的にも「痛み」を感じさせるための誠実な演出であり、子どもに見てほしいものだと思えました。ゲストキャラクターを演じる谷原章介の熱演にも聞き入ってほしいです。

2位:『スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』(2019年)

宇宙人と出会い冒険する、映画『E.T.』のような楽しさがいっぱいの作品です。登場人物たちが沖縄へ行き、たくさんの「思い出」ができていく前半部分はとても楽しいですし、その後にプリキュアが活躍する戦闘シーンもよくできているのですが、何より「ミュージカル映画」であることが重要です。

以前の映画『プリキュア』シリーズでもミュージカルの場面はありましたが、本作ではその試行錯誤の結果でもあるのでしょう……それまでの物語があってこその演出、そして名曲中の名曲『Twinkle Stars』が、感涙必至の感動を届けてくれます。ディズニーが挑戦し続けたミュージカルアニメ映画というジャンルにおいて、本作と『アイの歌声を聴かせて』が共に頂点にあると断言します。『スター☆トゥインクルプリキュア』はテレビシリーズから「異文化交流」「相互理解」の素晴らしさを分かりやすく伝えていて、宇宙に興味のある(それ以外の多様な)子どもの未来や可能性を作り手が考え抜いていることが分かる作品でした。今回の映画ではさらにそこを突き詰めて、宇宙へのワンダーを示す作品としても、幸福の寓話(ぐうわ)としても完成されています。そして、「歌いながら変身する」シリーズ初の試みを、映画では最上級のミュージカルに仕立てたことも、あまりに素晴らしいと思うのです。

1位:『HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』(2018年)

映画『プリキュア』には、各シリーズの単独の作品の他に、それまでのプリキュアが勢ぞろいする「オールスターズ」があり、『プリキュアオールスターズ NewStage みらいのともだち』や『プリキュアオールスターズ NewStage3 永遠のともだち』も素晴らしい作品でした。本作では、アニメとしてのクオリティーも、プリキュアを全員活躍させる手法も、いよいよ1つの到達点を迎えたと言っていいでしょう。

歴代のプリキュアが記憶を奪われて赤ちゃんになってしまうという大ピンチになり、序盤から主人公が赤ちゃんたちのお世話のために育児ノイローゼになる展開がリアルで驚かされます。そして、中盤からは『プリキュアドリームスターズ!』(2017年)でもかっこいいアクションが展開していた3DCGの表現へと移り変わり、歴代主題歌のBGMと共にプリキュアたちが次々に技を繰り出して戦う様は、シリーズを知らない人でも圧倒されるのではないでしょうか。さらに、映画『プリキュア』シリーズの多くでは、劇場公開時に子どもの入場者特典として「ミラクルライト」が配られ、映画館でその光をかざしてプリキュアたちを応援することができるのですが、今回はその「観客参加型」のアイデアと演出もシリーズ最高といえるでしょう。

本作で提示される「思い出」というテーマが、これまで『プリキュア』シリーズを見ている観客の思い出ともメタフィクション的にリンクする構造があまりに秀逸です。悲しみを背負っている悪役までをも救おうとするプリキュアたちの行動は、ファンであればあるほど感動するでしょうし、その優しさは彼女たちを知らない人にも伝わるはずです。

2023年に公開され世界中で絶賛を浴びたアニメ映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』より5年も前に、日本でも同じく「作品によって絵柄そのものが違うキャラクターが集まりダイナミックなアクションを見せる」大傑作が生まれていた事実は、もっともっと知られるべきです。

他にもプリキュアシリーズの良作はたくさん!

他にも「ループもの」としても秀逸な『プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』(2020年)、かなりギャグ寄りの作風の『キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!想い出のミルフィーユ!』 (2017年)、人気キャラの変身した姿がかわいい『魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身!キュアモフルン!』(2016年)もおすすめです。唯一注意が必要なのは『ふたりはプリキュア Max Heart 2 雪空のともだち』(2005年)の、とある描写。プリキュアが洗脳されて戦い合うという怖くて悲しいシーンがあり、特に「目が座った」表情があまりに「ガチ」だったため子どもたちが泣き出してしまうといった苦情が寄せられ、作り手は大いに反省し、それ以降はプリキュア同士の戦いは封印されることになったのだとか。筆者の3歳の姪っ子は大丈夫だったように見えましたし、友情を主軸にした作劇も、作画のレベルも高い作品ではあるのですが、ショッキングなシーンを見せたくないという親御さんは、本作は避けたほうがベターかもしれません。

総じて映画およびテレビシリーズの『プリキュア』に感じたのは、(作品としてのクオリティーは正直に言って出来不出来の差がかなりあることを認めつつも)、やはり作り手が視聴者である子どものことを真剣に考えているということ。特に映画では劇場で見る作品ならではの特別な体験を提供していることに感動するのです。

それでも本質的なターゲットが子どもであることはずっと変わっていないのですが、作り手の誠実さは大人にも届くはず。最近プリキュアを知ったばかり、まだ知らないという人にもいつか届いて欲しいと、ファンの1人として願っています。ぜひ、映画館で公開の最新作『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!』と併せて楽しんでほしいです。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。

文:ヒナタカ

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