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ポンコツでツンデレ。だから推す! アイドルとオタクとの尊くもちょっと変な関係を描いたコミック『ダメドルと世界に1人だけのファン』

  • 2024.9.13
ダ・ヴィンチWeb
『ダメドルと世界に1人だけのファン』(キシリモ/COMICSMART INC./発行:一迅社)

容姿や個性、そしてパフォーマンスで私たちを夢中にさせるアイドルたち。あなたが推している、または推したくなるアイドルはどんなキャラクターだろうか。

アイドルとそのオタク(ファン)の特別な関係を描くマンガが『ダメドルと世界に1人だけのファン』(キシリモ/COMICSMART INC./発行:一迅社)である。

アイドルの「うるみん」は歌も踊りもポンコツで愛想も良くない。いわゆるダメドルであった。そんな残念なアイドルを推しているのが大学生・キミヤ。ライブ後、彼女と話そうと並ぶのは彼だけである。キミヤは世界で1人だけの、うるみんのファンなのだ。

いろいろ残念なダメドル…でもそこがいい!

デビューして半年のアイドルグループ「めりー☆ゆにばーす」の会場で、ライブが終わり特典会(物販でグッズを購入すると参加できる)が始まっていた。ただ、グループのメンバー・うるみんの前は閑散としている。彼女は、顔はかわいいが歌もダンスも下手で、おまけにファンへの愛想もよくないポンコツアイドルだからだ。

それでも、うるみんには必ず一人のファンが並ぶ。それがキミヤだ。彼はライブのパフォーマンスについて一通り指摘する。それは微に入り細に入り情報量が多い。なぜならキミヤはうるみんしか見ていないからだ。そんな、愛しかないダメ出しが終わると彼はこう言うのだ。

踊れなくても歌えてなくても 必死に頑張ってるあなたの姿はめちゃめちゃカワイイダ・ヴィンチWeb

うるみんは隠しきれない喜びを溢れさせながら、たった一人のファンであるキミヤに憎まれ口をたたく。これもいつもの光景だ。彼女は適切な距離感での対応もできないポンコツで、ツンデレなのである。ドジでのんびり屋さんのアイドルならば、そういうキャラクターとして人気が出るかもしれないが、うるみんはただただ残念なダメドルなのであった……。

キミヤは、そんな素直じゃないところも含めて彼女を愛し、推していた。彼はパフォーマンス中も「今日もいいポンコツだ」と満足し「オタクにとって推しは世界一尊く、眩しい、まさに神のごとく」と本気で思っている。

本作は、そんなふたりの尊い(?)関係が描かれつつ、何もできなかったアイドルが、世界で1人だけのファンに支えられて成長していく物語が展開していく。アイドルの成り上がりストーリーとしても注目だ。

ただ、うるみんの仲間もまた、みなクセが強い。自由奔放のギャル・むーちゃん、趣味が最優先の腐女子・レイ、やる気があるのかないのか謎の人物・ぽぽち、そして不動のセンター・あいるはライブパフォーマンスのレベルが高くファンサービスも上手いがたまにヒートアップすると手が付けられない。「アイドルなら常に自分を魅せろ、アイドルならファンをトキメキで殺せ」と叫ぶ。このアツさがどこから来るのかは、ここでの紹介は避けておく。

群雄割拠のアイドル業界で、うるみんと「めりー☆ゆにばーす」は果たして売れるのだろうか……。

ダメダメであっても推し続ける理由は?

実は私も、キミヤと同じでダメドルが好きなタイプのオタクだ。最初から完成度が高く完璧なアイドルではなく、ポンコツでも頑張っている子を推しがちである。ライブのたび、楽曲がリリースされるたびに、成長がみられるのが嬉しくて応援しようと思えるのだ。これは嘘のような本当の話だが、ダンスや歌のスキルが高まり、ついた自信やパフォーマンスの達成感から、ルックスもより可愛くなることがあるのだ(個人の見解です)。だからといって、能力が高まってアイドルとしてレベルアップしたら推す相手を変えるわけではない。もちろん、青田買いをして将来に古参ぶろうというのもオタクの特性のひとつだが、基本的には私やキミヤのようなダメドル好きは、万が一いわゆる恋愛スキャンダルがあろうと推し続ける(繰り返しますが個人の見解です)。

何が言いたいかというと、基本的に推しアイドルへのオタクの気持ちは何があっても変わらないものだ。そしてキミヤはオタクの猛者だ。きっとブレないし今後も変わらないだろう。だが、ダメドルと世界に1人だけのファンの関係は微妙に変化していく。本作のキャッチコピーは「尊い系ラブコメ」である。

「まさか禁断の?」と思うかもしれないが、そこは手に取って確かめてほしい。

そして、ぜひ読み進めて第25話のカタルシスを体感してもらいたい。私は本作を一気に読み、見事にハートをキャッチされた。今や本作の推しの一人として、そしてアイドル好きライターとして、個人の見解ですが決して後悔はさせません。

文=古林恭

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