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アニメ『ソードアート・オンライン』監督・伊藤智彦の初原作コミック! 宇宙人(?)と出会った少年少女のひと夏の冒険『ワンダーX』

  • 2024.9.13
ダ・ヴィンチWeb
『ワンダーX』(伊藤智彦:原作、黒山メッキ:作画/KADOKAWA)

「ひと夏の冒険」という言葉があるように、夏という季節はなぜか、人をアドベンチャーへ誘う魔力を秘めている。それは新たなチャレンジだったり、思い切った決断だったり、苦しみを内包する諦めだったりと、それぞれに異なるだろう。でも、いずれにせよ、人は夏に開放的、かつ大胆な冒険に出てしまいがちだ。

そんな「ひと夏の冒険」を真正面から捉えたマンガが登場した。『ワンダーX』(伊藤智彦:原作、黒山メッキ:作画/KADOKAWA)だ。原作は、『ソードアート・オンライン』『僕だけがいない街』などのテレビアニメ版の監督・伊藤智彦氏。マンガ原作を手掛けるのは初めてというから、期待しないわけにはいかないだろう。

物語の舞台は1990年代前半の神奈川県にある「エリアX」と呼ばれる場所。米軍が接収したエリアのなかに残された飛び地のなかの飛び地、という非常にややこしいところだ。米軍に勤める父と日本人の母を持つモミジは、祖母とふたり暮らしをする中学生であり、その出自も相まって周囲から浮いてしまっている。

ある夜、モミジは散歩に出かける。行き先は彼女の秘密基地だ。すると近場で火事に遭遇する。消火器片手に駆けつけたモミジは、そこで、トム、ノア、ホンダという3人の少年と出会う。どうやら件の火事はトムたちの花火によるものだったらしい。こうして知り合った4人の少年少女が、本作の“冒険”の主人公たちだ。

そんな4人のもとに、空から謎の生物が落下してくる。姿形こそ人間だが、真っ裸で毛も生えておらず、どことなく異様な雰囲気が漂う。変質者と思い込んだモミジは、その謎の生物に攻撃を仕掛けるが返り討ちに。しかも、トムたちの手足は千切れてしまった。……かのように見えたのだが。気がつくと、みんなは無事で、しかも謎の生物と交流をしているのだった。

この謎の生物――のちに「マッパ」と名乗る者とともに4人は、エリアXで起こっている不可解な事件に挑んでいく。それこそが本作で描かれる「ひと夏の冒険」だ。

記憶喪失になっているマッパの正体はなんなのか、エリアXで見つかった干からびた片腕の持ち主は誰なのか――。それらを解明するためにモミジたちは奔走するのだが、その過程には大人たちが立ちはだかる。子どもであるモミジたちの言い分は軽んじられたり、あるいは疑義をかけられたりするのだ。子どもというのは社会的に見れば弱い存在だ。謎解きにおいてはその立場がネックになってしまうこともある。だからこそ物語が大いに盛り上がるのだが、本作でもそんな子どもという立場がスパイスになっている。

とはいえ、モミジたちは決して無力ではない。大人であれば萎縮したり遠慮したりするような場面でも、持ち前の好奇心をフルに発揮し、ときに大胆な行動に出ることもある。また、モミジたちに力を貸すのがマッパだ。彼(?)には不思議な能力があり、モミジたちに一時的に「犬並みの嗅覚」や「風を操る力」などを授けることができる。モミジたちはそれを使って邪魔な大人を出し抜くのだが、そのさまは見ていて非常に痛快で気持ちがいい。

また、モミジたちの物語の背景では、米国政府が不穏な動きをしていることも匂わされる。少年少女たちの冒険がいつしか国家レベルの機密事項に接近していく流れは、ジュブナイル冒険譚としては魅力的な展開のひとつであり、本作にもそれが期待できるといえるだろう。

伊藤氏のインタビューによると、本作は海外ドラマの『ストレンジャー・シングス 未知の世界』や『IT/イット』からインスピレーションを得つつ、ノスタルジーの要素を加えたとのこと。これは面白くならないわけがないだろう……!

単行本は第1巻と2巻が同時発売され、モミジたちの冒険はまだはじまったばかり。今後、大きな話題を集めるであろう本作を手に取るのは、今が絶好のタイミングだ。

文=イガラシダイ

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