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川谷絵音率いる「indigo la End」と、作家・カツセマサヒコがコラボ!アルバム全14曲を元に描かれる恋愛小説『夜行秘密』

  • 2024.9.13
ダ・ヴィンチWeb
『夜行秘密』(カツセマサヒコ/双葉社)

あなたは、たった一度の選択で、起こしたアクションで、放った言葉で、人生が思わぬ方向に狂ってしまったことはあるだろうか。昨今はSNSやメディアの普及に伴い、それを扱うすべての人の言動一つひとつがより可視化されるようになった。そのため、炎上や批判の種が生まれやすくなり、ときには理不尽にまで発展、一生ものの後悔が生み出されることは少なくない。

もちろん、後悔するような言動を世に放つべきではない。しかしときどき思うのだ。彼・彼女の言動は、他者から人生を狂わされるほど批判されなければいけない内容だったのかと。言動の裏には、私たちがメディアを通して知った事実よりもっと深い何かが隠れているのではないか。それを知る術はないが、もしその背景を知ることができたとしたら、当事者が後悔することはあっても、理不尽な目にあうことは少なくなるのではないだろうか。

『夜行秘密』(カツセマサヒコ/双葉社)では、まさに「理不尽」と「後悔」を描いた作品。カテゴリとしては恋愛小説に分類され、映像作家として名を馳せた宮部、宮部の熱狂的なファンである富永、親との確執から居場所を失った高校生の松田、脚本家を夢見る岩崎、SNSをきっかけにブレイクしたバンドマンの音色など、さまざまな男女の恋愛模様が描かれる。もともとまったく別の人生を歩んでいた彼らだが、とある事件をきっかけに深く交わり始める。交わりの中で描かれるのはもちろん「理不尽」と「後悔」であり、彼らはそれらを払拭するためのさまざまな選択を強いられる。

特に宮部と富永の話は「後悔」という言葉がよく似合う。映像作家としてエリート街道を歩いてきた彼だが、恋愛においては一夜を楽しめる存在がその時にいればいいという考えの持ち主だった。そんな彼のもとに突如現れたのが、宮部の熱狂的なファンの富永だ。彼女の宮部の映像作品に対するリスペクトは、彼の心の琴線に触れ、いつしか2人の恋へとつながっていく。

しかし、大人になってからの恋愛観はそう簡単に変わるものではない。彼は富永に、リアルな世界では炎上・批判の種になる愚行をおかし、後悔することになる。富永もまた、宮部の恋愛観に違和感を抱き、「このままでは後悔するかもしれない」と不安を募らせるが距離をとることができない。きっと読み進めるほどに、なぜ2人は後悔するとわかっているのに途中で手を引くことができなかったのかと思うだろう。本作は、そんな恋愛におけるドロドロを如実に描いている点が見どころだ。他の登場人物の恋愛における「理不尽」や「後悔」にも注目してほしい。

ちなみに本作は、川谷絵音氏率いるバンド「indigo la End」のアルバム『夜行秘密』の曲をもとに書き下ろされている。一度曲を聴いてから作品を読み進めると、より深くストーリーに入り込めるだろう。また、文庫版では著者のカツセマサヒコ氏と川谷絵音氏の対談「夜行秘密の答え合わせ」が収録されている。企画に対するそれぞれの想いや、小説と音楽それぞれの『夜行秘密』について語られているので、気になる人はぜひ文庫版を手に取ってほしい。

文=トヤカン

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