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「ただバカなんです」中島健人”保田”ならではの”落としどころ”に唸ったワケ。『しょせん他人事ですから』第7話レビュー

  • 2024.9.13
©「しょせん他人事ですから」製作委員会

中島健人主演のドラマ8『しょせん他人事ですから 〜とある弁護士の本音の仕事〜』(テレビ東京系)が放送中。本作は、原作・左藤真通、作画・富士屋カツヒトによる同名コミックを原作とした新時代のリーガルドラマ。今回は、第7話のレビューをお届けする。(文・柚月裕実)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:柚月裕実】
エンタメ分野の編集/ライター。音楽メディア、エンタメ誌等で執筆中。コラムやレビュー、インタビュー取材をメインにライターと編集を行ったり来たり。SMAPをきっかけにアイドルを応援すること四半世紀超。コンサートをはじめ舞台、ドラマ、映画、バラエティ、ラジオ、YouTube…365日ウォッチしています。

『しょせん他人事ですから』第7話©「しょせん他人事ですから」製作委員会
『しょせん他人事ですから』第7話©「しょせん他人事ですから」製作委員会

「どぅおも~、クソ弁護士の保田で~す」。ダブルピースで笑顔を浮かべる保田。この笑顔が愛らしいやら怖いやら。

前回、「絶対に親バレしま~す!!」とハイテンションで現実を突きつけていた保田。それが予言のように、ネットでゲームの実況配信をしているあじぇる(瀧七海)のコメント欄を荒らした優希(斎藤汰鷹)の悪事が両親にバレ、挙句に弁護士のドラゴン星川(袴田吉彦)を頼ったものの開示請求は通ってしまう…。

結局、和徳(勝村政信)と倫子(西尾まり)は親子揃って保田の事務所を訪れ、再び頼ることにした。

保田はドラゴンの仕事を手短に説明しつつ、優希が嘘をついたことに触れた。「その場しのぎの嘘は必ずバレるから~」と、ここまでは笑顔だったが、表情をキリっとさせて「覚えておくといい」と指摘した。優しい印象の人が見せる厳しい表情ほど怖いものはない。

あじぇる側の要求は、解決金150万円、今後の書きこみ禁止、直接での対面謝罪の3つ。金銭的負担だけでもかなり痛いが、対面での謝罪となると心的ダメージも伴うはず。軽い気持ち、ゲーム感覚だったとはいえ全て自分が招いたこと。そして親としてもまさか家の子が…とやるせない思いだろう。

『しょせん他人事ですから』第7話©「しょせん他人事ですから」製作委員会
『しょせん他人事ですから』第7話©「しょせん他人事ですから」製作委員会

ところ変わって、山梨県北杜市。優希と父、そして保田と灯の4人であじぇるに謝罪のために代理人弁護士の事務所がある山梨を訪問した。優希は対面したことで事の重大さを突きつけられた。

「そうやって、子供だから逃げられると思ってる!?」。どんどん語気を荒げるあじぇる。配信とは別人みたいだ。積み上げてきたものを、赤の他人に壊されたことへの恨み、憎しみは相当なものだった。

なぜこんなことをした?と机越しに詰め寄るあじぇる。怒りはどんどんエスカレートし、収集がつかなくなっていた。和徳はイスから立ち上がり、床に膝をついて、精一杯の謝罪の気持ちを伝えるために土下座をした。

見かねた様子の保田が割って入る。「理由もなにも、ただバカなんです」。一瞬、間があいた。「身も蓋もないんですが、なんにも考えてないんです」と拍子抜けするような言葉だが、誹謗中傷した側を何人も見てきた保田ならではの導き方だ。口調はどことなく古畑任三郎を彷彿とさせた。

たいした理由もない、特に恨みを募らせていたわけでもない、それに被害者側に落ち度がないことがほとんどだと諭す。「悲しいことに、納得できる理由のあるケースは少ない」と保田。被害者が納得する理由なんてないというのが、悲しい現実だ。しかし、すんなりとはいかないが、この場にひとつの落としどころを作ったのだ。

『しょせん他人事ですから』第7話©「しょせん他人事ですから」製作委員会
『しょせん他人事ですから』第7話©「しょせん他人事ですから」製作委員会

そしてもう一つ。家庭に対してどこか無関心だった父と思春期の息子、すれ違う2人の間にさりげなくアシストをしていた。対面謝罪が終わり、ラムネを持って優希の前に現れた保田。

「君のためにいっちばんカッコ悪い姿を見せたんだ、お父さんカッコよかったよ」

保田が親子の仲をとりもつように、さりげなくトスをあげていたのだ。保田が「他人事」と掲げてはいるものの、弁護士になった理由が垣間見えた気がした。

そして、「落としどころを見つける」というのも人との関わりの中で大事なことだと、今回の一件を通して保田から教わった。突拍子のない発言のようでいて、核心をついた「バカ」。

辛口ではあるが、振り上げた拳から力が抜けるような感じで場の空気を一変させ、全方位にとって腑に落ちる言葉を放ったのはお見事だった。

さて、次回予告では保田法律事務所に最大のピンチが訪れるようだ…。保田には心置きなくスイーツを食べていて欲しいのだけど、一体なにが起こるのだろうか。

(文・柚月裕実)

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