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古き良き日本家屋、ゴミ屋敷、要塞のような邸宅…そこに住む人々と“家オタク”少年の交流を描いた『お家、見せてもらっていいですか?』

  • 2024.9.12

町中に立ち並ぶ家、家、家…。

考えてみれば当たり前のことだが、すべての家に誰かしらが住んでおり、すべての家の人々に、それぞれ違う生活やドラマがある。そんなさまざまな家に住まう人々と、彼らの元を訪れる“家オタク”な少年・家村道生が織りなす物語。それが『お家、見せてもらっていいですか?』(佐久間薫/KADOKAWA)だ。

小学3年生の少年、家村道生は“家”が大好き。

大きな家、オシャレな家、変わった家…。彼が住む町にはいろんな家があり、それぞれの家の中はどうなっているのか、そこにはどんな人が住んでいるのか、考えるだけでワクワクしてしまうという、やや変わった趣味を持つ少年である。

そんな道生が「家」を自由研究のテーマとし、いろんな家に住む人々の元に突撃しながら、住人の生活を調査しつつ、彼らをはじめとした町の人々との交流を深めていく。

本作の魅力は、やはり道生の自由研究を通して登場する、さまざまな家に住むバラエティ豊かな住人たちだろう。

古き良き日本家屋に住む小説家。いわゆる“ゴミ屋敷”と呼ばれる、物にあふれた家に住むおばあさん。要塞のような邸宅に一人で住む、旬を過ぎたアイドルの女性…。

最初はみな突然家を訪れた少年・道生に戸惑ったり、彼を邪険に扱ったりする。しかし次第に彼のまとうユルい空気に影響され、気づけば知らぬうちに心を開いてしまうのである。

母とのささやかな二人暮らしの中で、自分がいつか住みたい理想の一軒家を見つける。それが家好き少年、道生の目的でもあり、さまざまな家に興味を持つ動機でもある。

道生がいろんな家といろんな人に出会うように、当たり前だが今現実を生きる私たちの目に映る景色にも、マンガの物語と同じように千差万別の家と、自分とは違う人生を生きる人たちがいる。それにふと気づくと、今まで当たり前だと思っていた日常の何気ない景色の見え方が、ほんの少しだけ変わってくるのかもしれない。

想像してみて欲しい。このマンガを手に取るあなたの家にもし道生が訪ねてきたら、あなたは彼とどんな会話を交わすのだろう。そしてあなたの住む家の隣に住む人は、通勤や通学でいつも見かける家々に住む人は、一体どんな暮らしをしているのだろう。

いつもと変わりない平凡な日常。その景色の見え方を、ほんのわずかにワクワクするものに変えてくれる。家好き少年・道生の自由研究と一緒に、ぜひあなたも目の前に広がる家々に住む人々や、その生活にちょっぴり思いを馳せてみてはいかが。

文=ネゴト / 曽我美なつめ

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