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吉沢亮の中にある「美しくない何かを自分の目で見たくて…」 呉美保監督が明かす主演起用の理由

  • 2024.9.13
吉沢亮の中にある「美しくない何かを自分の目で見たくて…」 呉美保監督が明かす主演起用の理由
(C)2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会

『ぼくが生きてる、ふたつの世界』完成披露上映会が開催

コーダ(Children of Deaf Adults/きこえない、またはきこえにくい親を持つ聴者の子どもという意味)という生い立ちを踏まえて、社会的マイノリティに焦点を当てた執筆活動をする作家・五十嵐大の自伝的エッセイを映画化した『ぼくが生きてる、ふたつの世界』。本作の完成披露上映会実施され、主人公・五十嵐大を演じた吉沢亮、母・明子を演じた忍足亜希子、そして呉美保監督が登壇した。

満員御礼の会場を前に、主演の吉沢は「ようやく公開日も近づいてきて、今日こうして皆さんに見ていただく日が来たという事で、この作品を通してどんなことを感じていただけるのか、ドキドキしています」と胸の内を明かした。

本作は、10月9日から開催される第68回ロンドン映画祭のコンペティション部門への正式出品も決定している。6月の上海国際映画祭に続き、ヨーロッパでのプレミア上映に吉沢は「光栄な限りです」としみじみしながら、「国や文化を問わず、見ていただいた方に伝わる普遍的テーマだと改めて思いました。これからもより多くの方々にこの作品が広がってくれると嬉しいです」と期待を込めた。

ろう者の俳優である忍足も「日本だけではなく海外の方にも見ていただけて、とても嬉しいです」と笑顔で語り、呉監督は「日本の劇場公開を待たずしてこのような朗報を頂けて、ただただ嬉しいです」と喜んだ。

本作で吉沢はろう者の両親を持つ耳がきこえる息子、忍足は聴者の息子を持つ母親を演じた。ストーリーについて吉沢は、「コーダという特殊な環境に生きてはいるけれど、描かれているのは普遍的なテーマで、家族の関係性や親子の愛情の変化も共感が出来た。純粋に素晴らしいお話だと思った」と語った。

忍足は「脚本に書かれているすべてが私の中に入って来ました。様々な葛藤や思いが細かに書かれていて、涙を我慢して共感しながら読み進めました」と振り返った。

一方、9年ぶりの長編映画となる呉監督は吉沢の起用について、「彼は美しい人だけれど、その中にある美しくない何かを自分の目で見たくて、この企画をいただいた時に彼とフィットすると感じた」と説明。忍足については、「初めてお会いした時に、劇中のワンシーンを演じてもらいました。それを見た時に『この方にお母さんをやっていただきたい』と思った」とそれぞれのキャスティング秘話を明かした。

コーダを演じた吉沢だが、演じるにあたっては「どの家庭にもどの思春期にも似たような悩みはある。自分の失敗を親のせいにするけれど、それがたまたまコーダという環境で生まれただけで、コーダだから辛いと思い込んでいる。本人にとっては重大な出来事だけど、周りから見たら『親とのあるあるだよね』みたいな距離感を意識していました」と普遍的な人物像を念頭に置いたという。

実際に1児の母である忍足は、「私には中学1年生の娘がいます。吉沢さん演じる息子が娘と重なるときもありました。娘とは違い、息子は母親に対して反抗したり色々な思いがあったりするだろうとイメージして、母としての気持ちを作りました」と役作りを回想した。

そんな母・忍足との共演について吉沢は、「とても温かい方で、忍足さんと(父親役の)今井さんの手話だけは現場ですんなりと入って来て、何を言っているのかがわかる。そこに僕は勝手に愛情を感じて、温かい両親だと思った。一緒にお芝居をしていてもチャーミングで素敵なお母さんだと思いながら演じていました」と親子の絆を実感。

それを受けて忍足は「息子を持つのは、ドキドキワクワクで複雑な気持ちでした」と笑わせつつ、「吉沢さんは素晴らしい息子。手話も徐々に自然に習得されて、そんな息子の手話表現に感動しました」と互いに褒め合い、笑顔になる場面も。

最後に呉監督は「耳のきこえない両親に育てられたコーダの物語ではありますが、どこにでもある普遍的な親子の感情として描いています。手話に出会い、果たして私たちはどれだけ目と目を合わせたコミュニケーションを取っているのだろうか?ということも考えました。そんな映画になっています」とアピール。

忍足は「この作品は新しい感覚の映画になっています。手話の世界、男の世界、女の世界、この世界には色々な世界があります。皆さんがどのように感じていただけるのか私も気になります」と反響に興味津々。

そして吉沢は「僕は本作への参加を通して、言葉で伝えることの重要性を感じました。生きている中で言葉を吐き捨てたり、自分の中に壁を作って自分の想いを伝える作業を怠ったりするような事もあると思います。今回手話と出会って、気持ちは伝えなければ伝わらないと実感しました。抱いた感情の全てを伝えてくれる手話という言語は愛に溢れた素晴らしい世界だと思いました。この映画を見ていただき、伝えることの大事さを感じていただけたら僕は幸せです」と呼び掛けていた。

『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は9月20日より全国順次公開。

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