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手間、かかり過ぎじゃない……?主婦歴15年で初めて知った“サンドイッチ弁当”の罠

  • 2024.9.12

コノビー編集部の選りすぐり!何度でも読みたい、名作体験談。

今回はコノビーで連載中の、「ハネサエ.さん」の名作をご紹介いたします!作ってみないと分からない、サンドイッチの罠です。

主婦になって15年が経った。

自炊をするようになってからは20年が経った。

それだけの時間を重ねていれば、だいたいのものは作ってきたし、だいたいのものはそこそこ上手に作れるようにもなる。

だって、20年というと産まれたお子さんが成人するまでより長い時間で、猫や犬なら天寿を全うしていてもおかしくない時間だ。

それだけの大きな時間のほとんど毎日をお料理して生きているのだ。

大抵のものは作ることができてなんら不思議はない。

と思っていたのだけれど、この年になって、まだなお、こんな身近な食べ物を作るのに難儀するとは思いもしなかった。

去年の秋、遠足のお弁当を作るときのこと、末っ子が「サンドイッチのお弁当がいいの」と言った。

私は米どころの出身なので強めのお米びいきで、パン食を少し避けてきたところがある。

パンは美味しいがやはり日本人は米だろう、という気持ちがどうしても抜けない。

そんなわけでこれまで我が家ではお弁当と言えば、私も子どもたちもごく自然におにぎりしか考えてこなかったのだ。

ところが、大きくなっていろんなお弁当があることを知った末っ子がサンドイッチをリクエストした。

我が家にサンドイッチ弁当の風が吹き込まれた瞬間だった。

なあに、サンドイッチって言ったってサンドイッチ用のパンに?具を?挟めばいいだけでしょ?そのくらいどんとこいだ。

ふたつ返事で快諾してサンドイッチ弁当を作る約束をしたのだけど、いざ前日の夜にスーパーへ足を運んだら無いのだ。

サンドイッチ用のパンが軒並み売り切れている。

なんてこと。

どうやら私はスタートダッシュが遅かったらしい。

サンドイッチ用のパンは校区内の保護者によって早々に買い切られていたようだった。

知らなかった。

サンドイッチは出だしが肝心だなんて知らなかった。

仕方なく、売り場に残っている中で一番薄い、8枚切の食パンを購入した。

翌朝、「耳を落とせばサンドイッチ用の食パンとなにも変わらないわ」と怯むことなく食パンの耳をサクサクと切り落とした。

なんせ、主婦歴15年ですし。

お料理歴は20年ほどですし。

ところが、ところが、耳を切り落とされた食パンはどこかいびつで不格好だ。

パン耳というのは上下左右不均衡に張り付いているのだと、この時初めて気が付いた。

耳だけを見て、単純にスパンと切り落とすと、残ったパンは正方形とは言い難い形をしていた。

しかし、時間は迫る。

私は7時15分までに、お弁当箱の中身を充実させないといけない。

パンのいびつさごときに揺さぶられている場合ではないのだ。

いびつなパンにハムやチーズやキュウリを挟んで挟んだ。

お楽しみのジャムサンドも忘れてはいけない。

ちょっとしたおかずだってもちろん必要だ。

時間が迫る中、「サンドイッチ、思った以上にやることあるのでは」とこの時私はうっすら気づき始めた。

どうにかサンドイッチが出来上がり、出来上がったそれを4等分に切る。

なんてことだ。

お弁当箱の高さとサンドイッチの高さが合わない。

合わないではないか。

4等分にカットされたサンドイッチは末っ子の小さなお弁当箱からにょきっと顔を出していた。

そそそそそうか。

お弁当箱の高さに合わせてサンドイッチをカットする必要があったらしい。

ちょっと誰か教えといてよ。

それでもどうにかどうにか、時間までにサンドイッチ弁当は出来上がり、台所はもちろん大惨事で、安堵とともにはっきりと疲弊した。

私はおにぎりのお弁当を全力で支持していきたい。

そう思っていたのにそうは問屋が卸さない。

それが子育て。

今年の春の遠足、末っ子がリクエストしたのはやっぱり「サンドイッチ」だった。

お母さんもうサンドイッチはこりごりなんですよ。

と思えど、

「この前のサンドイッチのお弁当とーーーっても美味しかったから、またサンドイッチのお弁当がいいなぁ」

とかわいい笑顔で言われると、ぴしゃっと断ることなんてできない。

あふれる母性は時に厄介だ。

「私もサンドイッチがいいなぁ」

ともうひとつかわいい声が。

長女であるよ。

春の遠足は秋の遠足と違って、全校生徒同じ日に実施される。

つまり、7時15分までにお弁当を3つ。

なるべく安穏に、なんのダメージもなく、滞りなく終わりたい。

なのに、3分の2がサンドイッチを所望している。

くるりと息子を向いて「長男はおにぎり派だよね!」と声をかけると、

「うん!でもサンドイッチもちょっと食べたいから、サンドイッチも入れてほしい!」

と、ご機嫌ボイスで返ってきた。

私は母性の奴隷のイエスマンなので、こうなるともうはっきりとサンドイッチを作るしかなく、なんなら長男のリクエストのおにぎりも追加で加わった。

当然、おかずだって要る。

不安が募る。

募る想い。

遠足前日からはっきりと緊張していた私は、家から少し離れたスーパーでサンドイッチ用の食パンをふた箱買って、サンドイッチの具になりうる材料と、おかずの材料をたくさん買った。

夜が更けるほどに緊張は高まって、そうだレシピをあらかじめ検索しようと思いついた。

勘に任せて漫然と作ると直前に慌てることがあるかもしれない。

「子ども お弁当 サンドイッチ」

で検索!度肝を抜かれた。

「サンドイッチは具を挟んだら、1時間ほど冷蔵庫で休ませてから切る」と書かれてある。

さらに、「キュウリはあらかじめスライスして、水分が出ないようにキッチンペーパーなどで挟み1時間ほど置いておく」とも書かれてある。

トマトに関してはキュウリの工程をさらに上回る、「種を取り除く」が含まれていた。

ツナも水分をよく切っておくものらしい。

レタスもしっかりと水分を取るように書かれていた。水分への全方位的なガードがすごい。

サンドイッチ、手がかかりすぎでは。

1時間も寝かせてから切るって、それ、何時から挟めばいいわけ。

そして、キュウリを切り始めるのはそれ一体全体、何時なわけ。

なんなの、ほんとにみんなこんなことやってるの???

お料理をして20年ほど経つけれど、マジでこの世界知らなかった。

サンドイッチが鬼門過ぎてただ気が遠くなる。

おにぎりを握りたい気持ちが、むくむくと膨らんでいく。

けれど、せっかくの遠足でがっかりさせるわけにもいかないし。

ああ。

緊張が高まった私は、22時から仮眠をとって深夜0時に起きてお風呂や家事を済ませた後、キュウリを切ったり、ツナの水気を切ったり、おかずをたくさん作ったりした。

深夜マジックでいろいろとはかどることが災いして、気が付くと早朝5時を迎えており、ところが瞼がいよいよ落ちてきて、目が覚めたら6時15分ごろだった。

1時間冷蔵庫で休むはずだったサンドイッチがひとつも挟まれていない。

大慌てでサンドイッチを次から次へと挟んで、セオリー通り冷蔵庫で休ませて、その間におにぎりを握ったり、おかずを詰めたり、フルーツを切ったりした。

ああ、迫る時間。

結局その日は、集団登校をあきらめて、学校まで車で送っていった。

そうするよりほかなかった。

サンドイッチは冷蔵庫で1時間休む必要があるのだから。

無事に遠足から帰ってきた彼らは口々に「お弁当おいしかった!」と言ってくれて、とても嬉しかったけれど、サンドイッチ疲労でその日は1日を棒に振ってしまった。

もう二度と作りたくないし、だけど頼まれたら作ると思うので、負担にならないちょうどいいサンドイッチの作り方を身に着けておきたいと思う。

まだまだ知らないことがある。

 

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