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目黒蓮”夏”が”全てを抱え込もうとする姿がもどかしい…海”に選択を委ねた深いワケ。 『海のはじまり』第10話考察レビュー

  • 2024.9.11
『海のはじまり』第10話より ©フジテレビ

目黒蓮主演の月9ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)は、名作『silent』の制作チームが再集結し、“親子の愛”をテーマにした完全オリジナル作品だ。人と人との間に生まれる愛と、そして家族の物語を丁寧に描く本作の第10話の考察レビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:菜本かな】
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。

『海のはじまり』第10話より ©フジテレビ
『海のはじまり』第10話より ©フジテレビ

何かを選ぶためには、何かを捨てなければならない。海(泉谷星奈)を産むために、夏(目黒蓮)と別れた水季(古川琴音)のように。海のお母さんになることよりも、自分が幸せだと思える道を選んだ弥生(有村架純)のように。時に、人生は究極の二択を迫られるものだ。

『海のはじまり』(フジテレビ系)第10話、夏は海を選ぶために、たくさんのものを捨てようとしていた。3年間付き合った恋人・弥生と別れただけじゃない。海が転校しなくてすむように、仕事を変えて引越しまでしようとしている。

「親がストレスでボロボロになったら、子どもに二次災害だよ。自覚とか責任とか、そんなんで子ども育たないよ」という先輩(中島歩)からのアドバイスがなければ、夏はあのまま転職していたのではないだろうか。

弥生も言っていたけれど、仕事は生活につながる。これまで、自由気ままなひとり暮らしをしてきた夏が、6歳の女の子の父親になるだけでも、生活は大きく変わる。

その上、仕事まで変えてしまったら、生活がままならなくなるのは一目瞭然だ。理想ではいくらでも美しいことを語れるけれど、現実は優しさだけでは生きていけない。

ただ、夏は母親の再婚がきっかけで、転校や苗字の変更を余儀なくされた経験がある。だからこそ、選択肢が与えられないまま、人生が大きく変わることに戸惑う気持ちが分かるのだろう。

夏が「どっちかを選んで。転校して、一緒に暮らすか。転校しないで、このまま別々に暮らすか」と海に選択を委ねたときは、「6歳の子に、そんな重大な決断をさせるなんて酷すぎないか?」と思ったが、よくよく考えてみたら、“あのときの自分”が親にしてもらいたかったことを、海にしてあげたのかもしれない。

母・ゆき子(西田尚美)に漏らした「子どもが全部、親の都合に合わせて変えなきゃいけないのはちがうんじゃないかって」という言葉は、小学生だった夏が思っていた本音だったのだろう。

『海のはじまり』第10話より ©フジテレビ
『海のはじまり』第10話より ©フジテレビ

「パパとかママじゃない大人にも、ちゃんと味方っているの。親に縋らなくても生きていけるし、もちろん縋ってもいい」

弥生が海に伝えたメッセージを聞いて、じんわりと温かい涙が溢れた。これは、現在放送中のドラマ『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)に込められたメッセージにも、通ずる部分があると思う。

近年、核家族が増加し、祖父母や親戚と離れて暮らすのがスタンダードになっている。そのため、“頼れる大人”は親しかいないと思っている子どもはたくさんいるはずだ。昔のように、よその家の子どもを、自分の子どもと同じように真剣に怒ってくれる大人も、最近は見かけない気がする。

だけど、頼るのは家族じゃなくたっていいし、視野を広げてみたら、手を差し伸べようとしてくれる大人はたくさんいる。

しかし、弥生が海の“友だち”に立候補したのには、驚いた。「家族に話しづらいことあったら、友だちに話せばいいよ。友だちだから、会えなくなるわけじゃない」と、支えてくれる“大人”ポジションではなく、同じ目線で語り合える“友だち”をチョイスする弥生のセンス。

海も、“友だち”と言われたから、「夏くんと2人暮らし、楽しみ?」と聞かれて「うん。でもちょっと不安」と本音を吐露することができるし、「ほんとは、転校したくない。新しい学校で友だちできなかったら、どうしよう」と家族には言えない悩みを吐き出すこともできる。

大好きなママとは離ればなれになってしまったかもしれないが、海にはたくさん“味方”になってくれる大人たちがいる。祖父母に、弥生に、津野(池松壮亮)に、大和(木戸大聖)。そして、これからは夏がそばにいてくれる。

『海のはじまり』第10話より ©フジテレビ
『海のはじまり』第10話より ©フジテレビ

夏と暮らすために、大事な友だち、大好きな祖父母、水季との思い出の場所からも離れて、引っ越すことを決めた海。きっと、戸惑うこともたくさんあるだろう。

夏も、シングルで子どもを育てていくとなれば、手が回らない部分も出てくるかもしれない。いや、きっと出てくるはずだ。

大人だって、まわりの人に頼っていい。夏はしきりに「2人で頑張る」と言っているが、『西園寺さんは家事をしない』の楠見くん(松村北斗)のように、“人に頼るべきではない”という呪縛を解いてみたら、もっと子育てが楽しくできるようになるかもしれない。

何でもかんでもひとりで抱えてパンクしそうになっている親を見て育つより、適度にまわりに頼って、手を抜くところは抜きつつ、いつでも幸せそうな親を見て育った子どもの方が、幸福度が高いような気がする。

残すところ、2話となってしまった『海のはじまり』。だんだんと、“パパ”の顔になってきた夏だが、自分を後回しにすることばかり考えるのではなく、ちょっとくらいズルをしてでも自分が幸せになれる道を進んでほしい。それがきっと、海の幸せにもつながっていくはずだから。

(文:菜本かな)

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