プラダ リネア・ロッサコレクションの原点「ルナ・ロッサ」。セーリングから生まれた、革新を続けるスポーツライン

ファッション界の関心がニューヨークのランウェイに向けられていた今月初め。プラダ（PRADA）の意識の半分は、バルセロナ沖の地中海に向けられていた。というのも、ミラノに拠点を置くメゾンは今年、世界最古の国際スポーツ大会「アメリカズカップ」の優勝を目指し、チームとして6回目となる挑戦艇決定シリーズ「ルイ・ヴィトンカップ」で熱戦を繰り広げている最中だったのだ。

一般的にファッションとセーリングは接点がない。デッキシューズといったプレッピーなアイテムの人気が復活を遂げているときか、華やかな装いが求められる船上パーティーでしか交わることはない。しかし1997年以来、パトリッツィオ・ベルテッリ取締役会長の情熱に後押しされ、プラダは最高峰のヨットレースで優勝すべく、四つに組んで戦い続けている。今年初めの進水式にてミウッチャ・プラダによって命名の儀式が行われたチームの最新艇、AC75ルナ・ロッサ第3号船はここ数週間の開幕戦だけでも雷に打たれるのを辛うじて回避するという危機に見舞われ、今大会も例外なく白熱していることが受け取れる。

最終的な目的は、現在のディフェンダーであるニュージーランドから初のカップ奪還を狙うイタリアチームの勝利に貢献することだが、プラダのセーリングへの関わりはメゾンがファッションという荒波を乗り越えるのにも間接的に役立っている。1997年、アメリカズカップへの初挑戦に向けて準備を進めていたプラダはルナ・ロッサ チームを創設。以後船員たちに着用されるライン「リネア・ロッサ」も同時に発表した。

「プラダはルナ・ロッサ チームのために開発したテクニカル・スポーツウェアで得た知識とメゾンの美学を融合させ、リネア・ロッサコレクションを完成させました」とプラダ・グループのCMO兼CSR担当責任者であるロレンツォ・ベルテッリはメールで述べている。そして次のように続けた。「通常はスポーツウェアに使用されるテクニカルファブリックやこらされる工夫を日常使いのフォーマルワードローブに取り入れる姿勢は、プラダの型破りな精神を表しています」

特にメンズウェアにおいて、「テクニカル 」という言葉はしばしば、高度な技術によって製作された機能性の高いウェアを示す形容詞として使われる。リネア・ロッサの服、フットウェア、アイウェアはすべてパフォーマンスを重視したセーリングウェアを原点としている。つまり、製品の機能性と耐久性はほかと比べると確実にハイスペックであり、ファッションピースというよりは工業デザインに近いのだ。

機能性重視のリネア・ロッサではあるが、ランウェイというメゾン最高峰のステージから遠ざけられているわけではなく、その証拠にラインは時折ショーに現れる。1999年、リネア・ロッサはメンズとウィメンズ双方のメインラインのランウェイでフィーチャーされ、2000年に再登場。そして2018年の再ローンチを機に、再び両方のコレクションで日の目を見た。次にランウェイに登場したのは、上海で開催された2020年春夏のメンズショー。そして直近ではコロナ禍中に発表された2021年春夏メンズコレクション「The Show That Never Happened」で披露されている。

挑戦艇決定戦でのこれまでの成績を見る限り、今年のルナ・ロッサ プラダ ピレリは、防衛者ニュージーランドが待ち構えるアメリカズカップ決勝戦に進む有力候補のように思える。挑戦者として勝ち上がり勝利を収めることができれば、ルナ・ロッサ プラダ ピレリだけでなく、リネア・ロッサにとっても新たな時代の幕開けとなることだろう。

Text: Luke Leitch Adaptation: Anzu Kawano

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