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伊藤健太郎、俳優デビュー10周年で見据える未来「実力や芝居力とともに、人間力をつけていかなければ」

  • 2024.9.11
伊藤健太郎 クランクイン! 写真:松林満美 width=
伊藤健太郎 クランクイン! 写真:松林満美

今年、俳優デビュー10周年を迎えた伊藤健太郎。累計発行部数4600万部を超えるヤクザ漫画を伊藤主演で実写化した続編『静かなるドン2』では、昼と夜でまったく違う顔を持つ男の奮闘劇を躍動感たっぷりに体現。観客を大いに楽しませてくれる。伊藤が本作で果たした新たなチャレンジとともに、役者業の転機として挙げた『今日から俺は!!』との出会いがもたらしたもの、「いつまでも現場に立っていられることが夢です」と生涯現役を願う、27歳の胸の内を明かした。

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◆続編の実現に感激!「気を引き締めて臨みました」

昼は堅気としてデザイン会社で働き、夜になると関東最大規模の暴力団「新鮮組」の総長という2つの顔を持つ近藤静也(伊藤)を主人公とした本作。静也のお世話役・猪首を演じ、総合プロデュースも務めるのは、人気任侠シリーズ「日本統一」の主演と総合プロデュースも担う本宮泰風。シリーズ続編として新たに監督に鳴瀬聖人、脚本・総合監修を前作の監督・山口健人が務めた。

「この作品の世界観が大好き」と笑顔を弾けさせた伊藤にとって、続編の実現は大きな喜びだった。「前作を撮っている時から、みんなで『続編をやりたいね』と話していました。映画が完成してからも『これで終わるのは寂しすぎる』と思っていたので、『2をやります』とお声がけいただいた時はものすごくうれしくて! またあの世界に飛び込むことができると思うと、ワクワクしました」とニッコリ。同時に「前作を面白いと思っていただけたことで、続編が叶った。その時点で観客の方々のハードルは上がるものだと思うので、それを超えていくためにはどうしたらいいのだろうかとたくさん考えました。コメディ、アクション、シリアスな面など、すべてにおいてブラッシュアップしたものをお届けしないと、続編をやった意味がなくなってしまう」とプレッシャーを感じつつも、「気を引き締めて臨みました」と力強く語る。

その覚悟もあって、オープニングの軽快なダンスシーン、「新鮮組」の面々とのコミカルなやり取り、新たな敵との激しいアクションなど、伊藤が緩急のある展開を躍動感たっぷりに魅せて、観ているこちらまで心弾むような映画が完成した。深水元基や本宮泰風など組員を演じる共演者が迫力満点のオーラを発する中、総長の静也は「お前ら、行くぞ!」と彼らの真ん中にドンと立つキャラクターだ。伊藤は「周囲のキャラクターや役者さんに迫力があればあるほど、『俺、総長!』といううれしさがあります」と楽しそう。

続けて「猪首を演じる本宮さんと、鳴戸を演じる深水さんがいると、静也と同じように僕もものすごく安心感があります」と敬愛を寄せながら、「現場では、いつもみんなで笑っています。特に幹部会のシーンでは、カメラが回っていてもいなくても、生倉役の三宅(弘城)さん、肘方役の坪倉(由幸)さんはずっとコントのような掛け合いをしています。最高ですよ! 温かい雰囲気の中で撮影させていただいて、だんだん親戚の集まりのような雰囲気になってきています」と家族のような絆を育みながら、ワクワク感あふれる世界を作り上げている。

◆本宮泰風&山口祥行に寄せる感謝 『静かなるドン』がもたらしたものとは?


ヤクザにもかかわらず、争いが嫌いな静也。本作では、「新鮮組」の総長として極道社会を変えていこうと決意した静也の、新たな戦いが描かれる。そんな彼にとって強敵となるのが、山口祥行が演じる謎の殺し屋Mr.J。静也は、ナイフと銃を手にしたMr.Jとバトルを繰り広げるなど、緊迫感に満ちたアクションシーンも大きな見どころだ。

「以前からいろいろな作品を観ていて、山口さんのアクションが大好きだったんです。ご一緒できて光栄でした」という伊藤は、対峙した山口の印象について「気を抜いたらやられるなという、ヒリヒリとした覇気が出ていました」と圧倒されたという。「アクションって、集中力やお互いへの信頼関係がとても大事になるもので。ちょっと恋人同士に似た感覚にならないと、ケガをしてしまう可能性もある。だからこそ山口さんとはたくさんお話をさせていただいて、信頼関係を築きながら呼吸を合わせていきました」と回顧し、「山口さんからアクションの動きや見せ方など、細かい部分の技術についてたくさん教えていただきました。ものすごく助けていただいた」と感謝しきりだ。

アクション力を磨いた秘訣について聞いてみると、「昔アクションスタジオに通っていた経験があって、あとは作品ごとに練習をしたり。それに僕、アクション映画を観るのが大好きなんです。映画を観ながら研究しています」と語った伊藤。「ジェイソン・ステイサムやトム・クルーズ、ウィル・スミスなど、それぞれに違ったアクションの魅力があるんですよね。僕はその都度、いろいろな人のカッコいいなと思ったものを参考にしています。静也のファイティングポーズは、ジェイソン・ステイサムの『トランスポーター』のアクションを参考にしています」と明かす。

昼と夜でまったく違う顔をみせる静也のギャップを含め、伊藤にとって本シリーズはあらゆる表情を披露する作品となった。「“昼静也”と“夜静也”では、全然違う作品の現場に入っているような感じ」と笑った伊藤だが、自身にとって本シリーズとの出会いはどのようなものになっただろうか。

伊藤は「極道の世界を描くジャンルの作品には、もともととても興味があって。以前から『やってみたいな』と思っていました。こういった役と巡り会えた喜びや、『静かなるドン』に挑戦させていただけたことで、少しやれることの引き出しが増えたのかなと感じる部分もあります」としみじみ。また本シリーズの総合プロデューサーである本宮と過ごす時間も特別なものとなり、「前作では僕自身、模索しながら静也を演じていました。僕が悩んでいることを察した本宮さんが、『まずは自由にやってみろ。それでいいんだ』と声をかけてくれて。本宮さんはプライベート含め、仕事においても、僕にものすごく寄り添ってくださる方。『静かなるドン』と本宮さんに出会えたことは、これからの役者人生にとっても大きなことです」と実感を込める。

◆10周年の感謝と誓いの言葉「自分の足だけでは、ここまでやってくることはできなかった」


伊藤が2014年のドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』で俳優デビューをしてから、今年でちょうど10年が経った。俳優業の転機になった作品として挙げたのは、「曲がったやつには絶対負けない」が信条の正義感の塊で、ツンツン頭のツッパリである伊藤役を演じた『今日から俺は!!』だ。

伊藤は「自分という存在を、たくさんの方に知っていただける機会となった作品。そこから仕事が増えたり、台本に載る番手が上がったりと、『今日から俺は!!』に出させていただいたことは、僕にとってものすごく大きな出来事でした」と切り出し、「“伊藤”という名前の役を演じたんですが、僕は本名も“伊藤”なんですね。街で子どもたちから『伊藤!』と声をかけてもらえることが増えて、すごく面白かったですね。子どもたちから観るとどうしたって作品の中の“伊藤”なので、僕も“伊藤”のスイッチを入れて子どもたちと接したりして」と笑顔。「子どもの頃に『今日から俺は!!』を観てファンになってくれた方が、中学生や高校生になって『静かなるドン』を観ましたと言ってくれることもあって。『この作品を楽しみに毎日頑張っています』という言葉をいただけたりすると、本当にいい仕事をさせてもらっているな、やっていてよかったなと改めて感じます」とファンからの言葉も、彼にとって大きな原動力になっている。

そして阪本順治監督が伊藤をイメージして当て書きしたという意欲作『冬薔薇(ふゆそうび)』(2022)も、「僕にとって大きな出会い」だと力を込める。彼が2年ぶりの映画出演にして主演を務めた映画で、「あのタイミングで『一緒に仕事をしよう』と言ってくださった阪本監督には、頭が上がりません。現場では、スーパー大御所の方々とご一緒させていただきました。石橋蓮司さんに『どれくらいこのお仕事をやられているんですか?』と聞いたら、『もう70年以上やっている』と。すごいですよね! そういった方々と一緒にお仕事できる環境を作ってくれた阪本監督に感謝ですし、皆さんが本当に温かく迎え入れてくださって、いろいろなお話をしてくださった。そこで得られたものは、たくさんあります。僕にとって大事な作品になりました」と心を込める。

10年の道のりを振り返ると、「自分の足だけでは、とてもここまでやってくることはできませんでした。周りの方々に助けてもらいながら、なんとか押し上げてもらったことで進んでこられた10年です」と周囲の支えを噛み締めた伊藤。「ここからは自分の力で進んでいかなければいけない部分も出てくるし、誤魔化しもきかない。実力や芝居力とともに、人間力をつけていかなければいけないなと思っています」とまっすぐな瞳を見せ、「とにかく現場が大好きなので。蓮司さんのように何十年経っても現場に立っていられることが、自分にとっての夢です」と告白。「『静かなるドン』もここで終わりたくない。個人的にはできる限りはやっていきたいなと思っています」と愛情を傾けていた。(取材・文:成田おり枝 写真:松林満美)

映画『静かなるドン2』は、9月13日より前編、9月27日より後編が全国順次公開。

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