1. トップ
  2. 恋愛
  3. まひろの物語が宮中でトレンド入り。周囲の関心はモデル探しに。「光源氏はオレのこと?」自意識過剰な公卿も登場

まひろの物語が宮中でトレンド入り。周囲の関心はモデル探しに。「光源氏はオレのこと?」自意識過剰な公卿も登場

  • 2024.9.10

「光る君へ」言いたい放題レヴュー

「光る君へ」言いたい放題レヴュー
「光る君へ」言いたい放題レヴュー

光る君へ 第34回「目覚め」あらすじ&今週も言いたい放題

まひろの物語が宮中でトレンド入り。周囲の関心はモデル探しに。「光源氏はオレのこと?」自意識過剰な公卿も登場

 

今週のお当番のM男です。宮中のトレンドとなっていく、まひろの物語。そして、道長から贈られた扇にも描かれていた、逃がしてしまった小鳥シーンからの「若菜」執筆への導入……。「源氏物語」てんこ盛りの第34回でした。おもしろかった!!

 

今回の大河は、歴史の流れを改めて教えてくれます

興福寺から押し寄せてきた僧侶たちが何をしでかすかと、ハラハラしていましたが、何事もなくなんだか肩透かしに終わりました。

 

実はM男、前回の最後の方を見ながら、「へぇーあの仏師の定朝って、こんな荒っぽいこともしてたのか」と思っていたら、乗り込んできたのは「定朝」ではなく「定澄」だったんですね。「じょうちょう」違い。

 

録画していたものを、最初のテーマ音楽部分を早送りし、登場人物名をチェックしないで本編だけ観ると、こういうアホな思い込みとなります。(最初に登場人物を見てしまうと、その回の流れがおぼろげにわかってしまうこともままあるので、じつはテーマ音楽のところは飛ばすことがことが多いのです)

 

でも、ふと思いだしたのは、確か平清盛は逆に興福寺とかを焼いたなぁ、ということ。清盛が奈良を焼いたのは道長の時代から180年くらい後のこと。今から180年前といったらまだ江戸時代。遥か昔です。藤原氏全盛から平家の時代へと移っていくのに、それほど時間がかかっていないと、なんとなく思っていましたが、その間に180年もの時が流れていたとは。そんなことに改めて気づかせてくれるのも、今回のドラマのおかげです。

「もしかしてオレのこと?」「うちのダンナのことに違いない」多くの人がそう思ったからこそトレンド入りに

さて、「源氏物語」オンパレードです。嬉しいなぁ。公任が妻に読み聞かせていたのは、「空蝉」の一場面でしたね。そして妻に「あなたも同じようなことおありなのでは」と言われ、ちょっと慌てています。心当たりがあるのでしょう。妻も、夫がほかの女性のもとに忍びこんでいることなど、重々承知の当時のことですから。

 

女性の膝枕で読んでいた斉信などは、ぬけぬけと「光る君はオレのことか」なんて言っています。当時の公卿連中は、多かれ少なかれ、オレも似たようなことをしてるわい、と密かに思ったことでしょう。そして女房たちは、これはあの人のことよ、と噂をしていたに違いありません。だからこそ宮中での一大トレンドになっていったのです。つまりは、ある種の暴露本ですね。

 

暴露本を大学受験の際に、ひーひー泣きながら読んでいた(読まされていた?)かと思うと、なんだか感慨深いものがあります。助動詞の活用表なんて、見たくもないって感じでした。あれから幾星霜……。

 

 

 

光源氏のモデルとされてきた源髙明の息子の発言だけに、なかなか意味深い

なかなか意味深く面白かったのは、源俊賢(明子の兄です)が、「なぜ光る君を源氏にしたのか」とまひろに尋ねたシーンです。「親王様では好き勝手なことをさせられませんから」と答えたまひろに対し、「父、高明のことを思い出していた」と俊賢。

 

源髙明は、長らく光源氏のモデルといわれてきた人物で、番組最後の「ゆかりの地を巡る」でも、源髙明の屋敷跡が紹介されていました。俊賢が父のことを思い出すのはさもありなんで、しかも、聡明といわれていたこの高明を、大宰府流罪に陥れたのが道長の祖父という因縁。なんとも濃い~場面です。

 

ふと思ったのは、公任たちが読んでいた現代語訳は、誰の訳だったのでしょうか? 与謝野晶子? 谷崎潤一郎? 円地文子? 田辺聖子? その場面の訳本と、テレビのセリフを突き合わせればわかるかもしれませんが、そこまでの気力はなく……。すみません。もしかして、大石さんがこの部分だけ新たに訳した「大石源氏」かも?

「殿はみんな可愛いものです」おいおい、言ってくれるじゃないのまひろさんよ

曲水の宴が雨で中断した際に、公卿たちが御簾の内の彰子の前で繰り広げた「男子トーク」の場面もめちゃくちゃ面白い!!

 

最初のころの放映で、ポロみたいなスポーツ(名前を忘れたので調べたら「打毬」でした)の後に、若き道長たちがやはり男子トークを繰り広げ、それをまひろが盗み聴きしていたシーンを思い出します。そして、公卿たちの男子トークを聴いていた彰子に、まひろが「殿はみんな可愛いものです」と伝え、しかも帝もあの公卿たちと変わらないと、笑みを浮かべながら言い放ちます。

 

おいおいまひろさんよ、和泉式部の前では純情ぶっていたくせに、「殿とはあんなもの」と達観したようなことをよく言うよ、と突っ込みをいれたくなります。でも、考えてみれば亡き夫の宜孝も道長も、子どもっぽいところ満載のキャラなので、まあ、彼女がそう達観しても致し方なしかと、許してあげましょう。

 

そういえば、かつてお酒の「松竹梅」のテレビコマーシャルで、石原裕次郎の「ならば問う。和尚、男とは」に対し、宇野重吉扮する和尚は、「子どもよ」なんて言ってましたね。しょうもない昭和の昔話ですみません。

 

「光る君へ」へ戻ります。話の展開的には、このまひろのサジェッションはとても重要で、深窓の令嬢ゆえに男性心理のことがよくわからず、「源氏物語」のどこが面白いのか、「男たちの言っていることが分からぬ」とまで言っていた彰子が、外に向かって心を開き、「うつけ」と言われていた引っ込み思案から脱していく、ひとつのきっかけとなっていきます。相変わらず、うまい展開だなと感心することしきり。

まひろは、「紫の上」に自己投影? でもそれでいいの?

「雀の子を犬君が逃がしつる。伏籠のうちにこめたりつるものを」

 

ついに出ました! N子さんの予想通り。第五帖「若菜」のメチャ有名な一節です。こうなるかと、ボンクラなM男はようやく気付いた次第ですが、N子さんは、なんと初回の放映で見抜いていました。

 

うーむ。ということは、「光源氏─紫の上」に「道長─まひろ」が重なってくるわけですね。そういうことだったのかと、深く深く感動するM男です。でもちょっと待って。紫の上って、光源氏に深く愛されはするものの、結局は正妻にはなることができず、光源氏がほかの女性との間にもうけた子供を育て、やがて光源氏より先に死んでいくという、「源氏物語」中の最重要ヒロインでありながら、幸福とは言い難い一生を送った女性。それがまひろに重なってくるとすれば、ちょっと可哀想だなぁ、と心配する次第です。

「左大臣様に頼まれて書きました」何もそこまで正直に言わんでも

「そなたの物語は朕にまっすぐに語りかけてくる」とまひろの物語を絶賛する一条天皇。

 

何故書いたのかと、一条帝に問われると、まひろは道長に頼まれたと正直に答えます。何もそこまで正直に言わんでも、とハラハラしましたが、その正直なところが良いのでしょう。まひろのアドバイスで、少し心を開きかけた彰子と一条帝との間に愛が芽生える日も近そうな予感。

 

よかったね道長と思いきや、子どもができないことにいてもたってもいられない道長は、なんと次回では、金峯山詣に出掛けるみたい。次回予告では、「クライマーズハイ」かと思うような、登山シーンも。そして、不穏な動きをする伊周。「源氏物語」が出てきたといって、われわれも呑気に喜んでばかりいられないようです。宮中のドロドロ権力争いは、目下進行中です。道長と一条帝との関係にも溝が生じるに違いありません。

 

ここでちょっとネタバレというか、本筋とはまったく関係ない小ネタを披露。道長邸に乗り込んできた興福寺の「定澄」は、調べてみると、なんと道長の金峯山詣に随行していたようです。道長が強制的に随行させたのか、道長には敵わないと、関係性を修復するためにちゃっかりお供したのか。おそらく前者でしょう。歴史的には道長のパワーがますます強大になっている頃です。だから伊周さん、もうあきらめた方がいいですよ、悪あがきは止めたほうが、と言ってあげたい気もします。

 

「お慕い続けていました」と涙涙で、秘めていた思い吐露する彰子。来週が待ち遠しいっす。

「光る君へ」言いたい放題レヴューとは……

Premium Japan編集部内に文学を愛する者が結成した「Premium Japan文学部」(大げさ)。文学好きにとっては、2024年度の大河ドラマ「光る君へ」はああだこうだ言い合う、恰好の機会となりました。今後も編集部有志が自由にレヴューいたします。編集S氏と編集Nが、史実とドラマの違い、伏線の深読みなどをレビューいたしました!

元記事で読む
の記事をもっとみる