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閑散とした食堂の救世主は謎の少女!? 小江戸・川越を舞台にした美味しい人情物語『作ってあげたい小江戸ごはん たぬき食堂、はじめました!』

  • 2024.9.10

飲食店を選ぶ時、食べたい料理や値段も大事だが、雰囲気の良さも重要だ。いい雰囲気の店でする食事は、何とも言えない満足感があるのだ。

それはグルメ漫画を選ぶ時も同じかもしれない。作家・高橋由太先生の同タイトルの小説をコミカライズした『作ってあげたい小江戸ごはん たぬき食堂、はじめました!』(あるた梨沙:漫画、高橋由太:原作/KADOKAWA)は、「小江戸」と呼ばれる江戸の面影を残す観光地、埼玉県・川越の定食屋を舞台にした物語で、登場する料理も人物も温かみがあり心地良い読後感を与えてくれる作品である。

元洋食屋の料理人だった主人公の大地は父の定食屋を継ぐも、父が作ってきた日替わり定食から洋食メインのメニューに変更したことで今までの経験が活かされるどころか父の代からの常連客から反感を買ってしまう。客足も悪く困り果てていた所に「自分を雇って欲しい」と申し出る謎の少女・たまきの登場により流れが変わってくる。

たまきは江戸料理を得意としており、店の客に杉板焼きと呼ばれる江戸料理を披露した後に「自分は前座に過ぎず、真打ちの大地が江戸料理ならぬ川越の“小江戸”料理をご馳走する」と宣言し、大地はたまきの言動に半ば振り回される様な形で小江戸料理を作ることになるのだが、彼女によって料理のアイディアが浮かび店の信頼回復に成功し、来店する人々と料理を通じて交流を深めていく。

作中に登場する料理は、玉子の天ぷらを載せたかき揚げ丼や豆腐料理といったどれも良い意味で素朴で飾り気のないものが多い。また、各エピソードで何かと揉め事が起きるもののいずれも大団円で終わりを迎える。それがまさに「定食」の様な普遍さと安心感をもたらしているのだ。たまきの美味しそうに食事するシーンも食欲をそそるスパイスの様な存在になっているのでぜひそこにも注目してもらいたい。

空腹と疲労感を覚えた時、笑いあり、涙ありな本作を読みながら温かい料理を口にすれば、きっと心身共に癒されるはずだ。

文=ネゴト / 花

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