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犬、LGBTQ、人工授精…散らばって見えるテーマに唸らされたワケ。ドラマ『GO HOME』第7話考察レビュー

  • 2024.9.10
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第7話 ©日本テレビ

ドラマ『GO HOME〜警視庁身元不明人相談室〜』(日本テレビ系)が土曜日夜9時より放送中だ。本作は、“名もなき遺体”の身元を特定し、家族の元に返すために小芝風花&大島優子のバディが奔走する、ミステリー×ヒューマンドラマ。今回は第7話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
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【著者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。

『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第7話 ©日本テレビ
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第7話 ©日本テレビ

『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(日本テレビ系)第7話では、様々な要素が登場した。遺留品ならぬ“遺留犬”、婚活アプリ、LGBTQ、人工授精など…。情報だけ聞くと、内容が散らかった回になったかと想像してしまうが、『GO HOME』らしい、ひとつのテーマに突き進む強さを感じる1時間となっていた。

今回の主軸に置かれたのは、犬の散歩中に亡くなった川崎千明(大後寿々花)とトリミングサロンの代表・浜野真由美(宮本茉由)の関係性だ。三田桜(小芝風花)は身辺捜査から2人が恋人関係であったと予想する。しかし、亡くなった千明の父は同性恋愛に複雑な思いを抱いており、「受け取らないと、駄目なんですかね」と遺骨の引き取りを渋っていたのだった。

今どき、愛する娘が同性愛者だからだといって、遺骨の引き取りさえ渋るのだろうかという疑問は生まれる。だが、これまでの『GO HOME』で描かれてきたように、人には人の数だけ事情がある。

今回で言えば、普通に男性と結婚して、旅館の跡取りを産んでほしいという思いが父にはあった。たとえ100%理解することはできなくとも、桜の言うように「他人には分からない、受け入れられないことだってある」ということを頭に入れておく必要があるのだ。

『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第7話 ©日本テレビ
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第7話 ©日本テレビ

千明の遺骨が宙ぶらりんの状態となってしまったことで、物語が一瞬停滞状態になったと感じたが、それを動かすのが愛犬という設計も鮮やかだった。

桜は千明の愛犬マコトを連れて真由美の元を訪ねると、マコトの“通訳”をしてほしいというお願いで真由美の心の奥底の思いを聞いていく。すると、覚悟を決めた真由美は「千明との時間は、本当に幸せで、かけがえのないものでした」と明かす。

正直、この時点までは“遺留犬”を出す必然性をそこまで感じていなかった。しかし、飼い主だけではなく、その恋人との結びつきの強さを表すような演出にはあっと言わされた。

さらに、身元不明人相談室の懸命な捜査から、千明は子供を作るために婚活アプリで出会った男性に人工授精を持ちかけていたこと、その子供と真由美の3人で旅館を継ぎたいと考えていたことが明らかになる。愛する人の願いを知った真由美は千明の両親の元へ向かう。

すでに千明は亡くなっているわけだから、真由美は今更2人の関係を認めてもらう必要はない。そんな中で、真由美が求めたのはある種“普通”のこと。「彼女がずっと帰りたかった場所は、ここなんです。だからどうか、お帰りって言ってやってください…どうか…」と千明を迎えることを求めるのだった。

『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第7話 ©日本テレビ
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第7話 ©日本テレビ

人工授精という多少強引な方法を用いてでも、千明が両親の理解を得ようとしていたことを真由美は伝えている。それは、同性愛がまだまだ普通のこととして受け入れられるのは難しいということを暗喩する。少なくとも、千明の両親にとってはそうだった。

それでも、真由美の行動は少なからず届いた。親からして見れば、“他人”が、亡くなった娘のために、親である自分たちにここまで礼を尽くし、頭を下げているのだ。勿論、そこまで彼女を駆り立てたのは千明への強い想いだが、突き詰めれば、他者を思いやることは普遍的なものだ。

第三者からすると特殊にも見える関係の中でも、誰しもが持ちうる普遍的な感情が生まれていたということを、『GO HOME』は改めて教えてくれる。

「頭ではわかっていても、心が追いつかない」父も世間的にはもしかすると多数派かもしれないし、現実世界では最後まで納得いかない人だっているだろう。それでも、自分の子がこれほど誰かに愛されていると知って喜ばない親はいないのではないだろうか。そんな「当たり前」のテーマの最後に、真由美がつぶやいた「千明のことを好きなままでいられる」という言葉が優しく響く。

そして第8話では、これまでも存在感を度々示してきた手嶋淳之介(阿部亮平)中心の回となりそうな予感。クールながら、このドラマでは愛らしさも感じることができる阿部のどんな魅力が見られるか注目したい。

(文・まっつ)

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