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「夫公認の不倫」でも罪悪感に苛まれる…婚外恋愛に翻弄された主婦の行く末は?

  • 2024.9.9

平穏な生活をおくる主婦が足を踏み入れた、パート先の店長との不倫沼。「この恋が心の隙間を埋めてくれる」そう思っていたのに、罪悪感で息ができなくなる。どこで間違えてしまったんだろう、と後悔しても時間はもう巻き戻らなくて…。『夫の公認なら不倫してもいいですか?』(グラハム子/KADOKAWA)は、「夫公認の不倫」がテーマだ。

「公認不倫」と聞くと、ポジティブで割り切った恋愛をなんとなく想像しないだろうか。しかし本作ではそのイメージとはまったく真逆の、不倫によって心身ともに追い詰められていく女性の姿が描かれていく。

主人公のかなは、夫と娘の3人家族で暮らす主婦だ。ある日、かなのパート先に若い店長が赴任してくる。かなは店長を「心の癒し」として好ましく思っていたが、泊りがけの出張へ同行できないかと誘われ、混乱してしまう。

結局ふたりはその出張中に「そういう関係」になってしまい、その火遊びはかなの夫の知るところとなる。しかし夫は「悟られないようにうまくやってくれればいいから」と言ってかなの不倫を許すのだった。

さぁいよいよ夫にバレてしまったぞ、となってから、わたしはこの物語を「強者に搾取され続けた女性の物語」として読んでいた。かなは自分に自信がなく、他者の役に立つことで自尊心を保っている女性だ。そんな「誰かに認められたい」というメンタリティが、あらゆる場面でいいように利用されてしまっていた。

かなの夫は病気がちな自分の世話に専念させるため、かなを退職させた過去がある。彼女が頼られたら断れない性格だと知っていたからだ。君は時間に融通が利くからと、自身の母親の介護もかなに負担させている。娘の育児も同様だ。

夫は家族にまつわるあらゆるケアを通して、かなの時間と精神を搾取し続けてきた。

さらに、とうに限界を迎えているかなに対して「君の予定より僕の母親を優先してほしい」という言葉をかけて追い詰めてしまう。結局それが引き金となり、かなは店長との出張を決意してしまったのだ。

店長もかなを搾取し続けた強者である。かなに対して「俺の前では無理しないで」と理解を示した言葉をかけつつも、自信が持てないかなの性格へ付け入り体の関係へ持ち込んだに過ぎない。

かなの「誰かに認められたい」という強い思いは不倫という形で結実し、結局自分を1番傷つけてしまった。「被害者ヅラするなよ 私」とかなは自分を責めるが、搾取され続けたかなこそ1番の被害者だとわたしは考える。

読み終わった後に振り返れば、『夫の公認なら不倫してもいいですか?』というタイトルはかなが自分自身に問いかけている言葉のように思えてくる。店長と寝たことで高揚感よりも罪悪感を感じたかなにとって、夫の公認があろうがなかろうが不倫は「非」であったはずだ。かなに必要だったのは不倫ではなく自分自身を労わるケアだった、とわたしは思う。

存在を求められて自尊心がいっとき満たされたとしても、自分を好きになれなければ心を病んでしまう。もしも時間が戻るなら、介護を押し付けられようが仕事ぶりを認められようがいますぐそこから逃げ出して! そこはあなたの居場所じゃないよ! と、わたしは彼女に伝えたい。

あなたなら、かなにどんな言葉をかけるだろうか。

文=ネゴト/ あまみん

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