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好きなら好きなままでいい。映画が教えてくれたわたしだけのカワイイ

  • 2024.9.9

家を出るぎりぎりまで、鏡を見て考え込んでしまう。ファンデーションが肌から浮いていないかとか、粉っぽくなっていないかとか。右を見て左を見て、繰り返し確認をする。

リップの色は大丈夫かなとか……そんな、数えだしたらキリがないことをデートに遅刻しないギリギリの時間まで考えた。

◎ ◎

自宅のクローゼットに収まりきらないくらいの服を着ては脱いでを繰り返す。アレでもないコレでもないを繰り返して、最後に残ったのはピンクベージュのワンピースだった。普段は嫌厭する女の子らしいかわいい服装だ。膝より少し上くらいの丈で、足首と手首が見えるような服装だから、私の背丈でもすっきりしているように感じた。

そうして、これなら……これならばと意気込んで着てみる。調子にのってないかだけが、気がかりだった。

本当は、好きな色の服を着て、気に入ったデザインのパンツを履いて、スタイルが良く見える厚底のブーツで出かけたい。中途半端な控えめなデザインよりも、やり過ぎなくらいのオーバーな格好が好きなのに。

その小さな一歩が、当時の自分には難しくて仕方がなかった。

振り返ってみると、中学校に上がった頃から、人目が気になって仕方がなかった。周りの友達は背が伸びて、男の子は声が変わる。わたしだけが小学生から変わらない。

わたしだけが、みんなを見上げるようになってしまった。

◎ ◎

そのうち「かわいい」は、あまりにも言われすぎて、当たり前の言葉になってしまったけれど、小柄な背格好に対して言われることが多くて、雰囲気すらも「かわいい」に支配されるようで……次第に自分が分からなくなってしまった。

派手な化粧よりも、ナチュラルな「かわいい」メイクをした。本当は好きなロリィタ服も、より「かわいい」を強調してしまいそうで着れなかった。

ショーウィンドウに飾られる、フリルとレースとリボンに包まれたドレスのようなロリィタ服の前を幾度となく通っては、ため息をついた。

わたしの夢みる「かわいい」と周囲の想像する「かわいい」とのギャップに悩み続けて、こんなに苦しいなら、もういっそ諦めてしまおうか。そう思った時、わたしは『下妻物語』という映画を見つけた。

◎ ◎

ちょうど、Netflixで見られる時期だったと思う。大好きな服をなんで諦めなければいけないのか、好きなら好きなままで良いじゃないかと、背中を押してくれる作品だった。

そのままの気持ちで、一番最初はヘッドドレスを買いに行った。シンプルで何にでも似合いそうなネイビーのものだ。

立った少しの、でも確かに大きな一歩。

見た目通りかもしれないし、よりぶりっ子に見えてしまうかもしれない。それでも、私はこの洋服が大好きで、ロリィタが大好きだ。

わたしは、かわいいロリィタ服を着る時に少しだけいい匂いがするお気に入りの香り「CRYSTAL ROYAL」マリナ・ド・ブルボンの中でもピンク色の小瓶に入ったバラの香りがする、プリンセスになれるわたしだけの相棒だ。

いかにもな香水の匂いがするのに、どこか甘くて爽やかで、想像するならマリーアントワネットのよう。だから、フランスのお姫様になれているかのような感覚になれた。

次は憧れのロッキンホースを買って、憧れの原宿を散歩するんだ。

■ましこのプロフィール
日本大学芸術学部文芸学科卒業。
同大学芸術学研究科文学専攻進学予定。(進学が決定したので付け足しておきます)
この曖昧で残酷な世界で生きている。
青色が好き。

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