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絵本から飛び出たようなファンタジー空間へ。|アーティストの別荘訪問(2)

  • 2024.9.8

フランスの暮らしに根付く"暮らしの美学"、アール・ドゥ・ヴィーヴル。その精神を体現するアーティストの別荘を訪問。イラストレーター、デザイナーのマラン・モンタギュが週末を過ごす田舎の家は、まるで絵本から飛び出たようなファンタジーにあふれている。

おとぎ話の世界を描く、自ら作り上げた"幸せの家"。

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寝室を改装したアトリエで、窓の低木や草花を眺めながら絵を描く。

今年4月に日本初上陸を果たしたライフスタイルブランド、マラン・モンタギュ。食器や文房具、キャンドル、クッション、スカーフなどを繊細なイラストで彩り、そのモチーフはバラ、レモン、四つ葉のクローバー、エッフェル塔、リュクサンブール庭園の椅子、メトロの入口、市内の標識などなど。それらを描き、クリエイトするマラン・モンタギュが週末を過ごすのは、ノルマンディ地方ウール県にある田舎の家だ。まるで絵本から飛び出たように、緑の中にひっそりと立っている。

パリにいる時の彼はベスパを愛用し、12区にある自宅と6区のマダム通り48番地にある店舗、10名ほどのチームが働く20区の小さな製作所の間を行き来している。パリ愛が高じて『Bonjour Paris(ボンジュール・パリ)』というガイド本を自費出版したのをきっかけに、世に知られるようになった。

「週末はなるべくここで過ごすようにしています。大きなプロジェクトを抱えている時は2週間ぐらいこもってじっくりアイデアを練ることもあります。庭の門を閉めればもう完全に自分の世界です。この家でまず着手したのは、1階の大きな窓がある古い寝室をアトリエに改造することでした。壁も天井もまるごと緑に塗りました。真っ白なアトリエが好きなアーティストもいますが、私には落ち着かなくて」

Atelier

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天気のいい日は、庭がもうひとつの部屋になる。庭に置いたテーブルには、リスボンで見つけた布をカットしただけのクロスを掛けて。布とマラン・モンタギュの食器が見事にマッチ。

自分のもので囲まれていないと安心できないからと、仮面にフィギュア、水彩画、花瓶、ガラスドームを被せたオブジェ、旅の思い出、ちょっとしたお宝グッズなどがきちんと配置されている。机の上も同様に整理されている。新作のマルセイユ・タロットの絵もここで描いた。タロットカードには子どもの頃から思い入れがあるそうだ。

「芸術家だった祖母は、よくタロット占いをしてくれました。絵を満載した車でやってきて荷物を下ろすと、まず占うのがいつものパターン。母も占いができました。やがて家族以外の人にも占ってもらうようになり、タロットカードを作りたいと思うようになりました。占い自体はさておき、タロットの世界は日常から離れられるのがいいのです。作りたかったのは、たとえ遊び方を知らなくてもただ美しいというだけで買う気を起こさせるカード。ここで2年かけて完成させました。少しでも時間があるとカードを描いていましたね。どのイラストも自分で描き、それをスタッフがスキャンしてさまざまな製品に展開しています」

Guest Room

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ゲストルームは繭の中で寛ぐイメージ。ベッドを小さな巣に見立て、ピンクの壁には奉納画やデッサン、植物標本、石膏模型などが飾られている。

Garden

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天気のいい日は、庭がもうひとつの部屋になる。庭に置いたテーブルには、リスボンで見つけた布をカットしただけのクロスを掛けて。布とマラン・モンタギュの食器が見事にマッチ。

Living Room

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色とりどりのキャンドルホルダー、天井にはガーランドにミラーボール......まるでパーティが始まるかのよう。好きなものを美しく演出し、家を生きる喜びで満たす。
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マランがクッションに描いたのは、煙突とたくさんの窓、入口にはハートがついた、まさに"幸せの家"。

良い波動に満ちていたこの家でタロットを制作したことは、彼にさらなる良い波動をもたらしたに違いない。

「15年以上前、イネス・ドゥ・ラ・フレサンジュと知り合いました。一緒にインドを旅行中、この家の写真を見せられ、ひと目でこれが私の"幸せの家"だと感じました。イネスがここを譲ってくれたんです。彼女は趣味の良い人ですから、そのままでもすでに完成された居心地の良い空間でした」

それでも自分なりに手を加えた。家具やオブジェは古道具屋やアンティークショップで見つけてきた。母が古道具屋を営み、父や祖父母がアンティーク商という家庭環境から自然と古いものに目が向く。どの部屋にも画家のパレットや奉納画、キルト、キリムが飾られている。いまは階段スペースをストライプにしようか考え中と、少しずつ手を入れているけれど、大規模な改装はもうしない。それよりも、ここで過ごす時間を大切にしたいからだ。夏には友人を招き、大人数でも集まれる庭でバーベキューやパーティをする。天気が悪ければ居心地の良いリビングやキッチンで寛ぐのもいい。どんな時でもマランはこの家でハッピーだ。

「ここに閉じこもる理由ができればこれ幸いと、ストーブに火をつけ、布団にくるまって映画を見たりしています」

柔らかい草の上を素足で歩いたり、生垣に咲くボタンやチューリップを眺めたりするのも楽しい。そう、幸せの家はここにある。

Kitchen

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大きな花で階段を飾り、色の調和がとれたキッチン。
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マランがデザインした食器や布巾が、キッチン用品やアンティーク品としっくりなじむ。
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Marin Montagut
マラン・モンタギュ
世界中を旅しながらイラストレーターとして活躍。2020年、ライフスタイルブランド「マラン・モンタギュ」をスタートし、パリの6区に路面店をオープン。今春、待望の日本上陸。
https://www.marinmontagut.com/

*「フィガロジャポン」2024年9月号より抜粋

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