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映画史上最も救いのないラストは? 最悪の結末を迎える洋画(5)主人公の自殺にグサり…心が痛いバッドエンド

  • 2024.9.7
クリント・イーストウッド【Getty Images】

残酷、理不尽、悲劇…。後味の悪いエンディングを迎える映画が、我々に与えてくれるものはなんだろうか? 刺激や教訓はあれど、できることなら救われてほしいと願ってしまう。しかし一方で、バッドエンドの映画に魅了されてしまうのも人の性。そこで今回は、史上最も残酷な結末を迎える海外映画を、5本セレクトして紹介する。(文・市川ノン)
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●『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)

監督:クリント・イーストウッド
脚本:ポール・ハギス
出演:クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン

●【作品内容】
うらぶれたボクシングジムの老トレーナー、フランキー・ダン(クリント・イーストウッド)は、20年来の親友のエディ・“スクラップ・アイアン”・デュプリス(モーガン・フリーマン)と共にジムを切り盛りし、数多くの優秀なボクサーを育て上げた。一方、不器用なフランキーは安全面を考慮するあまり慎重な試合しか組まず、成功を掴みたいボクサーは別のジムに引き抜かれていくばかりだった。

そんなフランキーの前に、アメリカ中西部の田舎町からやって来たというマーガレット・“マギー”・フィッツジェラルド(ヒラリー・スワンク)という31歳の女性が入門を申し込んでくる…。

●【注目ポイント】
本作の前半は、ボクシングトレーナーのフランキーと貧しい家庭出身でボクシングで一旗揚げようと夢見るマギーが二人三脚でチャンピオンへの階段を登っていく、ある種のシンデレラストーリーである。

序盤、フランキーはマギーが女性でかつ30歳というボクシングを始めるのには遅い年齢ゆえに、相手にしない。イーストウッド得意のしがみ顔であしらうのだが、徐々に彼はひたむきな彼女を認めていく。彼は彼女に、会えなくなった娘の姿を重ねているようだ。

フランキーはゲール語で「モ・クシュラ」と書かれたガウンをマギーに贈るのだが、これは「汝は私の血」という最大の親愛の言葉だ。フランキーはマギーに意味を訊かれても答えを濁す。

フランキーの指導とマギーの努力で才能は完全に開花し、連戦連勝でチャンピオン戦を迎える。相手は“青い熊”ビリーという試合巧者で、時に汚い手を使うダーティーな選手だ。試合はマギーの優勢で進んでいく。

しかし、ラウンド終了後にビリーはコーナーに戻ろうとするマギーの後頭部を殴打。そのまま倒れるマギーは、フランキーがコーナーに置いた椅子に首を強打し、全身不随になってしまうのだ。

完治の見込みのないマギーは最初こそ明るく振る舞っていたが、家族の無理解にも苦しみ、ついにフランキーに自殺の幇助を頼む。

娘の生き写しであるマギーへの思いと宗教上のタブーで悩むフランキー。車椅子生活に関する情報を調べるなど、彼女の今後の人生を真剣に手助けしようとしていた彼にとって、これほど酷な選択があるだろうか。

悩みに悩んだ末、フランキーはマギーの呼吸器を外し、アドレナリンを過剰に投与して最期を迎えさせる。呼吸器を外す瞬間、フランキーは「モ・クシュラ」の意味を伝えるとマギーは満足げに涙を浮かべ、眠るように死ぬ。

この賛否を呼ぶラストは、あらゆる意味で残酷な結末だろう。しかし、彼女は、家族にも見放され、唯一の生きがいであったボクシングを再開することはおそらく一生叶わない。生物上は生きているが、彼女の人生は終わったも同然なのである。

彼女にとっての死は救いだったのではないだろうか。フランキーの行いは諸手を挙げて肯定することはできないが、否定することも難しい。

残酷でありながらも、どこか救済を感じる本作のラストは映画史に残る名シーンとして映画ファンの記憶に刻まれることとなった。

(文・市川ノン)

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