丸善ジュンク堂書店がスタートした、新たな挑戦を未来につなげるプロジェクト“Adding My Colorフェス”を取材。宝塚歌劇団のOGさんたちは俳優、アーティスト、経営者など色とりどりのキャリアを歩んでいますが、そんな彼女たちをメインキャストに迎え「人生に一滴の彩りをプラスする」をコンセプトとして、変化と新しい挑戦を続ける女性にフォーカスしたイベントです。
第四回目のリアルイベントに参加したのは、紅ゆずるさん、紫藤りゅう(安藤瑠璃子)さん、天華えまさん。今回は「挑戦」「生きる」がテーマ。真面目な話も交えながら、抱腹絶倒のトークや、会場のお客さんを巻き込んだ楽しいゲームコンテンツに大盛り上がり! またこの日は、紅ゆずるさんの42歳の誕生日当日でもあり、会場のお客さんも一緒にお祝いするという特別な一日になりました。
早速イベントを終えたばかりの3人を楽屋でキャッチ! イベントの感想に加えて、在団中の思い出、最近ハマっていることなどをインタビュー。紅さんのおなじみの爆裂トークに引っ張られながら、同じ星組で過ごした3人の仲のいい一面が垣間見える、賑やかで笑いの絶えない取材となりました。記事の最後には未公開カットもたくさん掲載いたしますので、最後までご覧ください。
“節度のある女性のうるさい感じ”です(笑)
VOCE
大盛り上がりのイベントでしたね! いかがでしたか?
紅ゆずるさん(以下、紅さん)
すごい楽しかったです。皆さんに楽しんでいただかなくてはいけないのですが、皆さんに楽しんでもらうためには、出演する側が楽しまないと、と思って。楽屋からウォーミングアップして挑みました!
VOCE
楽屋のウォーミングアップはかなりされたんですか?
紅さん
楽屋でもそうですし、なんなら入場するドアの寸前までしゃべってました!
紫藤りゅう(安藤瑠璃子)さん(以下、紫藤さん)
私は卒業してから初めてお客さまの前に立ったんですけれど、ウォーミングアップしていただいたおかげもあって楽しく過ごせました(笑) 緊張するかな、と思ってたんですが、さゆみさん(編集部注:紅ゆずるさんの愛称)がサポートしてくださったんで、昔を思い出しながら楽しめました。
VOCE
紫藤さんは退団後、まったくメディアなどにお出になってなかったですよね?
紫藤さん
そうなんです、今日初めてです!
紅さん
だって本名「安藤さん」も出てたもんね!
紫藤さん
今日は一応紫藤で出演させていただきましたけど……今は安藤です(笑)
VOCE
天華さんはいかがでしたか?
天華えまさん(以下、天華さん)
本当に星組時代にタイムスリップしたかのようで。楽しすぎて、お客さんよりも楽しんでしまって申し訳ないくらいです。楽屋のウォーミングアップがすごすぎて……ずっと頬の筋肉が痛いんです(笑)
VOCE
星組時代もこんな感じでした?
天華さん
もうちょっとうるさかったかな(笑)
紅さん
全然もっとうるさかったですよ。今日は節度をもった女性になろうと頑張ったんですけど、“節度のある女性のうるさい感じ”ですね。節度はギリギリあるんですよ(笑)
星組時代、みんなでたくさん遊んだ日々
VOCE
今日は紅さんのお誕生日ということで、会場のお客さんも一緒になってお祝いしましたよね。記念すべき日になったと思いますが、現役中も一緒にお祝いされていたんですよね?
紅さん
現役中も「みんな祝ってや~」って言ってましたね(笑)
天華さん
私、めっちゃ覚えているのが、みんなでチコちゃん(編集部注:NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる!』に登場する少女)のお面つけたとき!
紅さん
私、現役中やってることがめちゃめちゃで(笑) 当時はお祭りにあるような出店に行ったことがなくて、みんなもお稽古で忙しくて行けないから、この際作ってしまおうと思い、宝塚ホテルにお祭り会場を作っちゃったんです。OGの皆も手伝ってくれたし、ファンクラブの皆様も手伝ってくださって。
天華さん
本当に、愛されてるからですよね~。
紅さん
その日は星組のみんなを呼んで楽しんだんです。で、そのとき全員が、私が大好きなチコちゃんのお面をかぶってくれたんです。
天華さん
チコちゃんのお面が、入場券みたいなものですね。
紅さん
そういえばその後、そのまま宝塚ホテルで、あーちゃん(編集部注;元宝塚歌劇団トップ娘役で、紅ゆずるさんのパートナーだった綺咲愛里さん)と2人で次の日の稽古の思い出し(編集部注:過去の舞台を思い出しながら稽古すること)したのよ。で、鏡のある廊下でやってたら、通りかかったホテルの人に「宝塚の人ですか?」って聞かれて。「あ、そうです」って。通り過ぎてしばらく経ってから、先輩っぽい方が「今の紅ゆずるやんか~!」って後輩を怒ってました(笑)
VOCE
ちなみになんの出店が一番楽しかったですか?
紅さん
わたあめ! 何回もやったり、好きな大きさにできることってないじゃないですか。あっという間になくなってしまいましたね。コロナ前だからできたことではありましたが、いろいろ遊んでました。大休憩(編集部注:一日2回公演する日の公演と公演の合間の時間)にピクニックごっこもやりました!
VOCE
ピクニックごっこ?
紅さん
私、遊ぶことしか考えてないんですけど(笑) 大休憩にピクニックがしたいと言って。でも2回目の18時半公演まで2時間ちょっとしかないんで、出かけられないじゃないですか。でも「みんな~、明日大休憩の間にピクニックするから、レジャシート持ってきてよ~」って言って。化粧前の椅子の下にレジャーシート敷いて、ピクニックしたんです。あと、突然「ピーターパンのカッコしてきて~」ってコスプレごっこもしたり。そんなことして遊んでおりました(笑)
天華さん
みなさん、本気でしたからね。私が好きだったのは、セーラームーンのコスプレをしたときで。
紅さん
ワンピースとかもやった!
VOCE
それは予め担当する役柄が決まっているってことなんですか?
紅さん
そうそう。終演後にそのために化粧を練習するんですよ。
VOCE
忙しい中すごすぎる!(笑) 皆さま、退団してからお会いになることは?
紅さん
会ってないな、お互いの舞台を観に行ったりはしたけれど。
紫藤さん
一度だけ宝塚ホテル前で、さゆみさんを見かけて、「絶対紅さんだ~」って。
紅さん
私、普通に大劇場前をすっぴん&ジャージで歩いてるんで(笑) 堂々としすぎて意外と気づかれないんですよ。
VOCE
やっぱりその日もジャージだったんですか?
紫藤さん
ジャージでした!(笑)
紅さん
私の正装なんで。
3人それぞれ、退団後の「挑戦」
VOCE
今回のイベントでは、「挑戦」がテーマでしたね。紅さんの一番最初の挑戦は、スカートを穿くことだったとおっしゃっていましたが。
紅さん
男役がスカート穿くのは、バンジージャンプの方がマシ!ってくらいですよ。男役と違って、女優としての自分の姿をお見せするのも挑戦ですね。
紫藤さん
分かります。私も退団して1年くらいですが、やっぱりスカートを穿くのは風を感じて。
紅さん
地球ってこんなに風吹くんだね~!(笑)
天華さん
退団4カ月くらいで、お衣装でスカートを用意されたときは驚きました。まさに、地球の風を感じました(笑) 本当に地球の風通しっていいんですね。あと、ズボンって暑いから、汗かき民としてはスカートは涼しいのがうれしいです。
VOCE
紫藤さんは退団後に会社員になられたということで、まさに異業種への挑戦ですね!
紫藤さん
オンライン広告やウェブマーケティング関連の会社です。最初はパソコンも使えなくて、一本指で打ってました(笑) 音楽学校でピアノに初めて挑戦したあの頃を思い出しましたね。家でも自主練をして、今はブラインドタッチができるようになりました! でも今も知らないことがたくさんあって勉強の日々です。
VOCE
さまざまなキャリアを歩む元タカラジェンヌにフォーカスした今回のイベントの中でも、会社員の道を進まれた紫藤さんは際立って見えたのですが。そもそもなぜ会社員になろうと思われたんですか?
紫藤さん
いろいろな道を考えたのですが、一度芸能のお仕事はお休みして、新しい世界を経験して知見を広げたいと思いました。退団するタイミングは次の世界に進むのにちょうどいいなと思ったんです。
紅さん
でもそれってすごくない? 絶対無理やん、って思っちゃう。
紫藤さん
卒業生の皆さんは本当に多種多様で、学校に入る方もいらしたり……そんな先輩方の背中を見ていろいろ考えました。
VOCE
パソコン以外も勉強されているんですか?
紫藤さん
基本的なMicrosoft Officeとか。
紅さん
マイクロ……?? 聞いたことないな(笑) あ、ちなみに宝塚出身で会社で困ったってことある?
紫藤さん
いやー、ないですよ!
紅さん
宝塚の人、その中でも特に星組って上級生のそばを通るときに「前失礼します、後ろ失礼します」ってやたら言うんですよね。で、退団してからもそれを言いすぎて、しつこいって怒られた同期がいました(笑)
VOCE
きちんとしているからこそ、目立っちゃうってこともあるんですね~。天華さんは、8月末のディナーショーが挑戦だとおっしゃっていましたね。(編集部注:イベントは8月中旬開催)
天華さん
退団後、初めてのディナーショーで。宝塚のときは衣装も曲も決まっていたので、何から何まで自分でやるのはかなりの挑戦です! 初めて照明についても考えました。今までどれだけ先生方に助けてもらってきたのか……と改めて感謝の気持ちでいっぱいです。
いつ何が起こるか分からない……紅ゆずるの防災意識
VOCE
今回「生きる」というテーマでもトークがありましたが、今回のイベントで紅さんが防災セットをプロデュースされたのはとても驚きました。しかもその防災リュックに「生きろ!」って書いてあるんですよね! 防災意識が高まる昨今ではありますが、紅さんはもともと意識が高くていらっしゃるんですか?
紅さん
私の中ではいつだって“南海トラフ警報”です。いつ起きたっておかしくない。いつか地震が来るかも、看板とか落ちてくるかも、とか思って暮らしているんです。元々はポジティブシンキングなのですが、何か起きたときに「やっててよかった」って逆転の勝利を得たいんです。だから皆さまにも伝えたくて。
天華さん
私もさゆみさんの防災トーク、めちゃくちゃ勉強になりました。私も、昨日台風が来るってニュースで言ってたので、いろいろ調べたりしましたよ。でも私の家、水がすごいたくさんあるんです! 2リットルペットボトルが9本も!
紅さん
それ、全然多くないよ(笑) 『The Lost Glory―美しき幻影―』の舞台くらいあるかと思ったんだけど(笑)(編集部注:2014年に星組で上演された演目。1920年代のアメリカを舞台とし、ビル街をイメージしたオブジェは大量のペットボトルの再利用で作られた)ちなみに、防災セットはちゃんと開けて中身を確認しないとダメですからね!
VOCE
買って、満足して。そのまましまいっぱなしってありますよね。
紅さん
笛なんて、リュックの奥底にあっても意味ないからね。ちゃんとショルダーとかに結んでおかないと。あと、寝る部屋にはベッドの横に靴を置いてますよ。それも一回履いてちゃんと履きやすくして。逃げたいってときに、素足だったらどこにも行けないから、まず靴やろ。そして上着もおいてあります。あと懐中電灯も。
天華さん
私、さゆみさんの防災グッズ、マジで買って帰ろう! 課金させてください!
VOCE
VOCEでも防災記事は作っているんです。もちろん一番大切なのは命なんですが、やはり美容メディアということで、美容にまつわる防災グッズのご紹介もしていて。紅さんはそういったものも用意されてますか?
紅さん
顔を洗うものは入れてますね。あとはシュッシュッってするミスト、リップ、汗拭きシート……冬に使うかもしれないから、スース―しすぎない、お尻拭きくらいの優しいやつね。ドライシャンプーも入れていますよ。
VOCE
完璧すぎ! いつか防災セミナーを開催してほしいです!
3人のトークは、取材しながら腹筋と頬筋が痛くなるほどの笑いが絶えないトーク。でも根底にすごく真面目な3人かいるからこそ、遊びも新しいキャリアへの挑戦も本気で挑んでいるのだと感じました。後編では、美容にまつわるトークもたくさん伺ってまいります!
【紅ゆずるさん・プロフィール】
紅ゆずる(Yuzuru Kurenai)
8月17日生まれ、大阪府大阪市出身。2000年に宝塚音楽学校に入学、2002年に88期生として宝塚歌劇団に入団。星組公演『プラハの春/LUCKY STAR!』で初舞台、その後、星組に配属。2016年11月21日付で星組トップスターに就任、『THE SCARLET PIMPERNEL』が大劇場トップコンビお披露目公演となった。2019年10月13日に『GOD OF STARS-食聖-』 『Éclair Brillant(エクレール ブリアン)』で宝塚歌劇団を退団。退団後はバラエティや舞台、ドラマなど活躍の舞台を広げている。10月にはアガサ・クリスティー原作の舞台『ゼロ時間へ』への出演が控えている。
【紫藤りゅう(安藤瑠璃子)さん・プロフィール】
紫藤りゅう(安藤瑠璃子)(Ruriko Ando/Ryu Shido)
5月5日生まれ、東京都文京区出身。2008年に宝塚音楽学校に入学、2010年に96期生として宝塚歌劇団に入団。月組公演『THE SCARLET PIMPERNEL』で初舞台、その後、星組に配属。2016年の「こうもり」で新人公演初主演。2018年の「New Wave!-星-」で、瀬央ゆりあとバウホール公演ダブル主演。2019年12月23日付で宙組へ組替え。柔らかな笑顔が光るノーブルな男役として人気を博したが、2023年6月11日、真風涼帆・潤花トップコンビ退団公演となる「カジノ・ロワイヤル」東京公演千秋楽をもって、宝塚歌劇団を退団。退団後はIT業界へと進み、株式会社グラッドキューブに会社員として勤務している。
【天華えまさん・プロフィール】
天華えま(Ema Amahana)
滋賀県出身。2012年宝塚歌劇団入団。宙組公演『華やかなりし日々/クライマックス』で初舞台、その後組まわりを経て星組に配属。16年『桜華に舞え』新人公演初主演、その後三度にわたって新人公演主演を務める。23年バウ・ワークショップ『Stella Voice』はメインキャストとして出演。在団中の主な出演作は、『ロミオとジュリエット』(死/マーキューシオ役)、『1789』(ジョルジュ・ジャック・ダントン役)、『ME AND MY GIRL』(ジェラルド役)など。24年『RRR×TAKA”R”AZUKA〜√Bheem〜/VIOLETOPIA』で宝塚歌劇団を退団。退団後1ヵ月にして、舞台『サイボーグ009』に声の出演を果たし、退団後初のディナーショーも開催された。
撮影/榊󠄀原裕一