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世にも恐ろしい…実在する未解決事件をモデルにした邦画(2)頭部は未だ行方不明…謎多きバラバラ殺人を映画化

  • 2024.9.6
原田美枝子【Getty Images】

「未解決事件」。人を惹きつける言葉だ。一口に未解決と言っても、犯人が特定されていながらも不透明な部分を残すものや、犯人逮捕の糸口さえも掴めていないものまで、多種多様であり、その謎めいた性質からフィクションの題材になることも多い。今回は実在する「未解決事件」をテーマにした映画を5本紹介する。第二回。(文・編集部)
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●『OUT』(2002)

上映時間:119分
監督:平山秀幸
脚本:鄭義信
出演:原田美枝子、倍賞美津子、室井滋、西田尚美、千石規子、香川照之、大森南朋、間寛平

●【作品内容】

深夜の弁当工場で黙々とパート仕事をこなす主婦・雅子(原田美枝子)は、ある日、同僚の弥生(西田尚美)から相談を受ける。日常的にDVを受けていた弥生は、ある日、衝動的に夫を殺害。遺体をどう処理すればいいのか、信頼を寄せていた雅子に相談を持ち掛けたというわけだ。

事件をきっかけに雅子と工場の同僚である4人の平凡な主婦たちが自分を取り巻く日常・社会から脱しよう(OUTしよう)とする様が描かれていく。

●【注目ポイント】

住みたい街ランキングでは常に上位に位置する武蔵野市・吉祥寺。華やかな歓楽街と緑豊かな自然が同居するこの街の負の記憶とでもいうべき「井の頭公園バラバラ殺人事件」は、平成以降の未解決事件の中でも異質さと陰惨さにおいて抜きん出ている。

1994年、吉祥寺駅から徒歩10分ほどの距離にある井の頭公園のゴミ箱から人体の一部が発見される。その後の捜査で、バラバラに切断された計27個もの遺体の一部が発見される。ただし、これは全体の1/3ほどで、頭部を含む大部分は現在に至るまで発見されていない。

当初、突発的な事件とする声もあったが、捜査が進むにつれて、人体をほぼ同サイズに切り分けるという遺体処理の異常なほどの律儀さ、指紋等々を削り取ることで、遺体の身元を特定させないような工夫が凝らされていることが判明し、世間をゾッとさせた。

犯人の手のひらに転がされるように捜査は難航。2009年には公訴時効が成立してしまった。

原作者の桐野夏生は、同事件にインスパイアを受けて映画『OUT』の基となった同名小説を執筆したと公言している。執筆にあたり桐野は、事件を追った記者らに取材をしたと自著で明らかにしている。

平凡な主婦がひょんなことから犯罪に加担し、日常から乖離していく姿を描く映画『OUT』は、実際の「井の頭公園バラバラ殺人事件」とは異なる内容が描かれている。

しかしながら、公園という穏やかな日常を象徴する場所に、バラバラになった遺体が放置されるというアンバランスが生み出す「不安」。加えて、黒幕が捕まっていないどころか、犯人像さえも明らかになっていないという事実が突きつける「謎」が、作家の想像力を大いに刺激したのは紛れもない事実。その結果生まれたのが、「幸せとは何か」「生きるとは何か」といった根源的な問いを突き詰める、珠玉のヒューマンサスペンスだった。

原作はベストセラーとなり、海外でも高い評価を受けドラマ化、舞台化もされている。映画版ではメインの主婦4人を原田美枝子、倍賞美津子、室井滋、西田尚美が演じているが、ドラマ版である『OUT〜妻たちの犯罪〜』(1999、フジテレビ系)では、田中美佐子、渡辺えり子、高田聖子、原沙知絵らがメインを演じており、こちらも良作となっている。

映画版にハマった方は、見比べてみるのも一興だろう。

(文:編集部)

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